第17話回復

2日後


『化け物は現在逃走中。決して近づかないようにしてください。見かけたら通報よろしくお願いします。〇〇周辺の方は速やかに避難してください』

またニュースの音声が繰り返す。


薄いカーテンの裏に、四人の家族が団らんしている風景が映る。

「……………」

ガシャんっ!

窓ガラスが砕かれ、平井の体をした化け物が家に侵入してくる。

「うわっ」

「えっ…!」

家族は立ち上がり、化け物から距離を置く。

母親が震えた声で言う。

「ここって避難しろって言われてなくない!?」

化け物が口を開く。

「ちょ、っとまってくださィ。俺は人を探しているだけなんです」

父親が唾を飲み込む。

「人……?」

「はい。陽菜離上って人間です。知ってます?(ニッコリ」

家族は顔を見合わせる。

誰もわからないらしく、父親が深呼吸してから回答する。

「だ……し、知らない。。。」

「そうですかー…んー……」

化け物は割った窓から家を立ち去る。

すると父親の体が溶け出し、絨毯に染み込む。

「お父さんッ!」

子供の涙が頬をつたっていく。それと共に、頬も溶け出す。

家族みんなが溶けたあと、割れた窓から庭に父親が垂れる。

「んー、やっぱ人?探しってうまくいかんなー。」


化け物が少し歩くと、警察数人に囲まれる。

「止まれ」

「!……。!!」

化け物は立ち止まり、ため息をつく。

「撃っていいですよね」

警察達が手に持った銃で化け物めがけて乱射する。

「うおっオオッウ!!痛い!撃つな!ガヤアアアアギャ!」

「これだけ撃っても死なんのか……」

警察は唖然とした。

「陽菜離上って人知りません?」

警察は化け物の質問を無視し、退散していく。

「んー?おいおおい待て!!」

化け物は警察の小さくなっていく背中を見ながら地面に唾を吐く。

警察が見えなくなったところで、先程の家に戻り、家族の液体を飲んだ。

「回復!!!!」


(暗転)


EP17 回復


真っ暗な視界に、胴体のシルエットが浮かび上がる。

胴体はゆっくりと動き、誰かの声を脳内に流してくる。

『ねぇ』

………………?

『あのさ、お前誰?』

…………。………?

『人間ン?』

…………………はい

『じゃあさ、陽菜離上って人知ってる?』

いや。

『そっか』

はい

『………………………』

………………。。

『あ、君名前は?』

あ…、平井です

『…………ありがとう』

あの、私は死んだんですか?

『うん…あー……生き返りたい?』

はい……

『わかった。撃たれるの痛いし。でも一個約束して。陽菜って苗字の人とあったら死んで』

………………………。

『まじで』

…はい


全身が泡を通り抜ける感覚に襲われ、目が縦横無尽に暴れる。


平井は必死になって息継ぎをした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る