40、重量級

 とある夢にて。

 京極夏彦氏の本を三冊ほど並べたくらいの厚みの単行本が、平積みされている。

 タイトルは『税金』。

 ──この時点でまず、本を手に取ることを挫けるには十分すぎるけれど──夢の私はどうしてもその書籍を持ち上げてみたくて、本の背と腹に指をかける。

 勿論、私の手のひらでは覆い切ることなんて到底不可能な広い広い背表紙は、まるで背広を着たプロレスラーの背中のように逞しく洗練されている。

 本を落としてしまわないように腹筋に力を入れ、へその前に掲げタイトルを見下ろす。すると、先ほどまでなかったはずの副題がうっすらと浮かび上がってくる。


『雨が槍になった時の対処法』


 目の前のポップにはこう書かれている。


【この本を本棚に納めた時のことを想像してみてください】


 途端に、この『税金』なる本が欲しくてたまらなくなってしまう。けれど、夢の中の私にはその本をひっくり返し、裏表紙に書かれた値段を確認するだけの力がどうしても出ない。


 目が覚めた時、やはりいざという時の為に最低限の筋肉は必要だと思い、現在細やかながら筋トレを敢行している。

 何となく筋肉がついてきたような気もするし、気のせいな気もする。もう少し頑張ってみるつもりではある。この細やかすぎるシリーズのように。


 

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