38、犬


 自分の家の犬が可愛い、可愛すぎて困る。いや、可愛すぎて困ることなんてない。

 というか、こんなに可愛くある必要あるだろうか。

 もうちょっと手を抜いてもいいはずだ。もうちょっと可愛くなくっても十分すぎるくらい可愛いのに、どうしてこうも全力を出すのだろうか。

 いつも不思議に思い、時に犬に向かって問いかける。

「そんなに可愛くなくても良いのだよ」

「どうもです、恐れ入ります」

 愛犬の目はそう語る。少なくとも、そう語っているように感じ取らせる、“力”がある。

 これは犬に限った話ではないかもしれない。或いは家猫、家鳥、その他同居動物。彼らは受け取り手にどう感じさせるかをコントロールする力を、確かに持っている。

 その力に伴う努力、エネルギーたるや凄まじいものだろう。

 彼らは超能力者なのかもしれない。

「超能力者なのですか?」

「何をおっしゃるのやら」

 愛犬の目は語る。けれど、真意は分からない。


 

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