32、怪物
読み終わりたくない本が読み終わりそうな時、他の誰かならどうするのだろう。
私は一先ず読むのをやめて、終わりを先延ばしにする。
けれど、どうせ数日、もしくは数時間、もっとひどくて数秒も我慢できずに、結局続きに手を伸ばす。
そして数分で読み終えてしまう部分をなるべく、ほんとうになるべくゆっくりと読んで、終わってしまった、と寂しくなってしまう。
思えば、これは本ばかりではない気がする。例えば、大好物のおかずを食べているときもこんな感じだ。夢中になって貪って、最後の三口辺りで突然食べ終えてしまうのが惜しくなる。そしてなるべく、──ほんとうになるべく!──ゆっくりと咀嚼して、味わい尽くして、それでも食べ終えてしまうと寂しくなってしまう。
まるで悲しいモンスターだ。
消費しているのは自分のくせに、寂しいようと泣く。周囲の人間はドン引きし、あのモンスターのねぐらには近寄ってはいけないと子供達に言い聞かせる。
モンスターが子供を食べなくったって、そんなのちっとも関係ないのだ。
実は、この妄想を綴っているのも、気に入った本を読み終わりたくないがための時間稼ぎである。
もしかしたら次は、大好物のご馳走の一口を残して綴ることになるかもしれない。
その時は、お行儀悪いと叱られたら嫌なので、その旨は伏せて投稿させてもらいますね。
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