31、散髪
髪を切られる、あのジョキっという感触がたまらなく好きだ。
じょき──っ
この擬音を最初に作った人は天才だと思う。
スキバサミだか何かで、毛を落としていく音も好きだ。
ぞくぞくぞく、と容赦なく削れていくあの音がいい。
切る方も楽しいかもしれないが、切られる方が私は好きだと思う。
頭皮から頭蓋骨に伝わっていく振動が、たまらなく心地よい。こればっかりは切られる側にしか味わえない感触だ。
ずっと味わいたくて、もっと、もっと切ってくださいと言いたくなる。
ガチャガチャの景品で、「無限プチプチ」や「無限枝豆」「無限キーボード」などがあるけれど、「無限髪切り」みたいなものはない。
当たり前といえば当たり前だ。何せ私の願望は自分の髪を無限に切りたいのだ。ただの髪切りではダメだ。「無限自分の髪切り」でないと。
とはいえ、そう。この感触は、たまに味わえるからこそありがたみがあるというものだ。いつでも何時でもできてしまったら、世にも悍ましい「飽き」がきてしまうのだ。
たまにだから、たまらなく好きでいられる。
その不変の事実に気づいて、少し物悲しさを感じなくはない。
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