24、夢

 日記をつける夢を見た。

 はるか昔、文具屋のセールで買った豪華な装丁のリングノートに、起きた時間と天気、その他出来事を走り書きするだけの、簡素な日記。

 その日はいい事があった。

 ウキウキとしながらボールペンを手に取って、いかに今日が幸せだったか綴ろうとした。

 けれど、一向に筆は進まない。何から書くべきか、どう書くべきか、悩んでいるうちにトースターが鳴って中断する。

 覚えているのはそこまでだった。

 起きてコーヒーを入れてトーストを焼く間、あの夢のいいことは何だったんだろうと想像する。

 多分、誰かとお茶したとか、腹を抱えて笑ったとか、そんな事だったと思う。

 起きた時にすぐメモでも取っておかないと、夢の内容はすぐぼやけてしまう。おでんに入っているたまごの黄身みたいじゃなかろうか。

 あんな感じで、夢が溶けたその日は濁って味わいのある日になる、気がする。

 気がするだけ、それぐらいで充分だ。



 

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