2、雨宿り

 店の先の、この、テントみたいなやつ。ビニールなんだろうか? そういえばこういう材質のものはなんという名称なのだろう。多分ビーチパラソルとか祭りの屋台とかに使われてるものと一緒だろう。かなりの経年でところどころ塗装のひび割れができていて、そこからじわっと雨が滴りそうで滴らない。しぶとそうな素材感。


 ところですごい雨なんです。


 少し落ち着くのを待つか、歩いて8分の家までダッシュするか非常に悩ましいところ。2択を決めかねる様々な要素が頭に積み重なっていきまして。

 靴がなあ、スニーカーだからしみちゃうなあ。丁度帰ったらシャワー浴びようと思ってたんだよなあ。シャツは吸水速乾素材だから、濡れてもまあ平気だけど「あの人傘忘れたんだなあ」って思われるのちょっと恥ずかしい。荷物はスーパーで買った牛乳だけ。雨よけ辿っていけばそんなに濡れないで済むかな。こういう雨はあと数分で落ち着くものだ。でもその数分でおうちに着くんだよなあ。


 そうして考えてとりあえず雨よけをふるまってくれたスーパーの中に引き返す。跳ね返りでやや濡れたズボンの裾が、冷蔵品と共に冷やされて結構寒い。しょぼしょぼとした気分でさっき買うのを我慢した刺身コーナーを右往左往して、なんだかヤケクソ気味になって欲望のまま商品をカゴに突っ込みたくなる。

 けど、雨の帰路という現実がかろうじて暴走を踏みとどまらせてくれる。

 そうこうしているうちに大抵の雨は大人しくなって、すっかり冷やされ凍えたまま帰路につく。


 そういうパターンを、最近やっと気付きつつあります。




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