番外編 大規模クラウン"ノア"入団試験 五
見えなかったのではない、"動けなかったのだ"。人には必ず予備動作がある。高くジャンプをしたいのなら助走はいるし、強く殴りたいのならタメを作らなければならない。レインはそれが全くなかった…にも関わらず…"速い"。だから、ワンテンポ遅れてしまった。戦いにとってその一手遅いというのが致命的なのは言わずもがな。
額に滲み出るこれは、冷や汗か脂汗か。
俺「そっ、それはスキルですか?」
レイン「ん?あぁ、僕のスキルだ」
サラッと言うな。
スキルというものは何もしてなくても手に入るものではない。スキルの名前は発見者がギルドで登録出来るが、取得する為の条件は人によって異なる。
俺の知り合いにも初心者スキルが使えない人がいるし…だが有るかも分からないスキルを取得するのは訳が違う。予備動作をなくすスキルというのは見たことも聴いたこともない。
俺「もう一戦しませんか?」
タネが分かったのなら対策だ。今回は虚を突かれたが、次回からはそうはいかない。ただ…
レイン「いいよ、もう1回しようか。ただ今回は今みたいにならなそうだね、剣を使おう」
位置につく、地に石が落ちる。
その途端トップスピードになるレイン、一気に距離が詰められた。これは…突きか!身をよじりかろうじて回避する。鞘がついているとはいえ、中身は鉄の塊だ…もろに当たればヤバい。剣でレインの攻撃を受ける。
俺「っつ…!」
重っつ…!攻撃の気配を感じたので後方へジャンプし下がる、すかさず追撃してくるレイン。近づかれる前に石を蹴り上げレインに向かって打ち出すと同時にレインとの距離を詰め、攻撃を行うがあっさりと受けられた。突き、受け、流し、打撃…くそっ!全部受け止められる。
そして、さっきからフェイクの攻撃や、狙って作った隙をちらつかせているが、全く騙されない。コイツ、人と戦い慣れてやがる!
避け、防御し、攻撃に転じようとしたが中々出来ない。時間経過と共に勝てないという絶望が大きくなる。もしかしたら、二次試験で戦う相手かもしれないからスキルは余り発動したくないだが、それ以上にこの天才に負けたくないという気持ちが競り上がる。
俺(スキル発動!幻影)
スキル発動と共にすぐに後方に下がるレイン、どんな反射神経してんだ。今ので反撃したかったが当てが外れた、くそっ。すぐさま近づいてくるレイン、これは蹴りか…いや違うっ!フェイクだ!
目の前に突き付けられた白銀に光る剣、俺の詰みだ。
レイン「君、強いね」
お褒めにあずかり光栄です。あなたは、凄く強いですね…
俺「ははっ、ありがとうございます…」
レインの「いい練習になったよ、じゃあまた試験で」
俺「また…」
去っていくレイン、立ち尽くす俺。
俺「…帰ろ」
今日俺は、天才に会った。
俺は…
…あっち側じゃない。
試験コソコソ話
冒険者にも騎士の様な決闘があり、衝突があった際には決闘によるチカラ is 正義な事をします。攻撃系のスキルは禁止、剣を使う際は鞘をつける。など基本的な事+ご当地ルールがあるらしいです。
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