第7話 ゲーム
「龍ヶ崎さん、土日はご飯どうする?」
「ごはん!......でも毎日作ってもらってるから、土日は大丈夫」
たしかに火曜日に家の前で龍ヶ崎さんを見つけてから4日連続で夕飯を振舞っている。
それはいいのだけど、土日は夕飯だけでなくお昼も必要になるだろう。休みの日は家にいるみたいだしね。
「作る手間はそう変わらないからいいんだけど、買い物するのに量を考えないとって思ってさ」
「ほんとうに?迷惑じゃない?」
「もちろん。美味しそうに食べてくれるから俺も嬉しいよ」
そんな手の込んだものを作ってるわけじゃないしね。揚げ物とかはさすがにやらないし。
どこか寂しそうな、それでいて期待するような表情をされたら断れるわけないよね。
ま、嬉しいのも事実だし提案したのは俺だから全然いいんだけど。
「買い物、手伝う?」
「いや、大丈夫だよ。何か食べたい物あればリクエストも受け付けるよ」
「食べたいもの......ハンバーグ!すっごく美味しかった」
ハンバーグって最初に作ったやつか。具も味付けもシンプルだったんだけど、それなら今度はたくさん作って冷凍しておこうかな。
龍ヶ崎さんが帰って後片付けを済ませてからパソコンを起動する。1つのアイコンをクリックすると、アプリが立ち上がった。
それは俺が高校入学と同時に始めた、モンスターを倒したり素材を採取したりというクエストを協力してこなす、オンラインゲームだ。
レックス:こんばんは~
C.P.:お、れくちんこんぱわー!
ハリー:おーっす
サンドラ:こんちわ
☨ろりえる☨:こんちくわー
ログインして挨拶をすると、同じギルドに所属しているメンバーからそれぞれ挨拶が返って来る。
ちなみにレックスというのが俺のキャラネームだ。名前が司だから頭文字のT→恐竜のTレックス→レックスという連想でつけた名前だ。
ちょうど時間限定クエストが始まる時間だったので、それをこなしてから雑談タイムに突入した。
C.P.:ハリー、何か面白い話ないの~?
ハリー:急な無茶ぶりやめろw
☨ろりえる☨:アタイも聞きたいなー
SS:同じく
レックス:ハリーに振っても惚気話になるだけじゃない?
ハリーは俺と同じ男子高校生らしいが、なんとSSとリアルで知り合いらしい。しかもSSは女で2人は付き合っているんじゃないかという疑惑まである。
ハリーは否定しているものの、いつもログインしている時間も同じだし一緒に行動しているしで怪しさしかない。まったく、羨ましいものだ。
サンドラ:みんなに相談がある
C.P.:なになに~?
ハリー:サンドラが相談なんて珍しいな
☨ろりえる☨:相談ならこの聖天使ろりえるに任せなさーい!
レックス:どうしたの?
サンドラ:ご飯のお礼ってどうすればいい?
C.P.:うーん、相手によるけど~
☨ろりえる☨:奢られたなら次回奢ればいいんじゃない?
C.P.:友達なら奢りかえす、好きな相手なら甘えてみるとかかなぁ
SS:ハリーが詳しい
ハリー:おいw 無茶ぶりすんなって
サンドラ:友達、だけど難しい
☨ろりえる☨:サンドラにも春が来たか......ま、頑張りたまへ
C.P.:私、朝早いからもう落ちるけど、進展あったら報告よろ~
C.P.はアイドルという設定らしく、それらしく振舞ってはいるが皆あまり相手にしていない。
夏休みとかずっとログインしてた気がするし、働いているのかすらも怪しいところだ。
俺は学生であまり課金出来ないし、どちらかというとこうしてチャットを楽しむエンジョイ勢である。顔は見えないけれど、だからこそ相談なんかも気軽に出来るのだ。
まぁ俺は人生経験なんて言えるほど生きてないし、人付き合いも多くないから見ていることがほとんどだけど。
今だってご飯を奢るだの奢られるだの言ってはいるが、元太に学食を奢るくらいしかそんな経験はない。しかもそれもお礼としてだし。
そうして時折雑談に交じりつつ、スマホで龍ヶ崎さんとメッセージのやりとりをする。龍ヶ崎さんの返信はそう早くないので十分に対応できる。
また画面と睨めっこしながら一生懸命打っているのかなって思うと1人でニヤけてしまいそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます