第8話 雨と血のにおい 後編 その2

 結果から書けば、正行は修行に今でもついてきている。


 大の大人ですら投げ出しそうなことも、正行は少しづつ、丁寧に挑戦し続け克服していった。



 当初は『まあ、途中で投げ出すだろう』と思った。


 朝も早いし、勉学や友人との付き合い、木刀とはいえ生傷が絶えない……


 同時に、正行の性格からして大人の弟子たちの見よう見まねで喧嘩などに使ったら文字通り「生兵法、怪我の元」なので基礎だけでも教えるつもりだった。


 どちらにしても、途中で辞めると思ったが、正行は最初の数日は祖父と一緒に走ったり木刀を振るったり、型の練習を一生懸命にし、その後は一人で何も言わなくても自分でやるようになった。



 正行の父、秋水は『最強の男』にするべく半ば虐待じみた修行を強制したが、正行は『器のまま』育てようと思った。



 今、薄いジャケットの下にある生傷を見たら大抵の人間は震え上がる。



「じいちゃん、俺が蔦を取るから下の草を取ってくれる?」


 持ってきたバケツから鉈を取り出した正行が言った。


「あ……ああ、頼む」


 二人は雑草や蔦が生えた墓石を綺麗に取り除き、こびりついた汚れを持ってきた金たわしや近くのガソリンスタンドに断ってもらった水を掛ける。


 墓石に彫られた友人の名前を見て、春平は少し目を細めた。


--今、友人はどういう思いなのだろう?


 そんなことを考えて、空想する。


 身寄りのなかった親子である。


 その間に正行はお供え物の砂糖菓子などを供え、両手を合わせた。

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