第7話 雨と血のにおい 後編 その1

 その墓は、街外れの道の端に一基しかなかった。


 先祖代々……ではなく、生前に買った墓で一緒に殺された娘も埋葬されている。


 離婚した女性の墓は知らないが、世間体などを嫌っていた彼ららしい墓だと、目の前にして思う。



 それも、だいぶ前になる。


 小学生だった孫の正行は現在、留年などをしたが大学生になり、自分より大きくなった。


 街に出かけ、愛用している木刀を新調した。


 

 十歳の誕生日に正行は祖父に嘆願した。


--修行して強くなりたい


 驚き、少々困った。



 正行の性格は、自称『根性がひん曲がった』秋水とは違い、真っ直ぐだった。


 学業に関しては、多少寛大に見ていたが、通知表を見ると若干平均を下回る。


 ただし、理解は遅いが宿題の提出などは問題がない。


 ある程度の年齢までは、「じいちゃん、これ、合っている?」と宿題を見てアドバイスなどをした。


 家事を手伝うせいか、微妙に技術・家政科は他の教科よりはいい。


 何より教師からの人物評で沢山褒められていた。


--虐められている子の前に出て必死で庇った


--よく教材を運ぶ手伝いをしてくれる


--真面目に掃除などをこなす


 などなど。



 ただ、彼らより身近にいる春平からすれば危ういのだ。


 気持ちの切り替えが下手。


 相手の気持ちに引きずられる。


 手加減を知らないなどなど。



 だからこそ、こう答えた。


「じゃあ、明日から俺と一緒に修行をしよう」

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