第3話 雨と血のにおい 前編 その3
「風呂に入ったり、飯を食っているときに襲おうとは考えなかったのかね?」
その言葉に、襲撃者たちは言葉を詰まらせた。
実際、寝込みや食事、風呂に入ったときの襲撃は考えていた。
ただ、この屋敷は間口が妙に狭い上に玉砂利が音を出す。
彼らは知らない。
この屋敷が元々は忍者屋敷で敵からの襲撃に対していくつもの仕掛けをしているのだ。
ただ、獲物であり、賞金首である春平が出てくれば話が別だ。
家の中で寝ている孫はゆっくり殺せばいい。
「もう一度だけ警告する……死にたくなければ、今すぐ、去れ」
だが、誰も去る気配がない。
時が硬直したように誰も動かない。
いや、動けない。
半身だけ前に出し、日本刀の柄に手を置いているだけなのに、その気迫に誰もが押しつぶされそうになる。
「死ねぇぇえええ‼」
一番近くにいた若者が耐え切れず金属バットを持って襲い掛かってきた。
その刹那。
闇夜に何かが飛んだ。
それは、金属バットを持った左右の腕であった。
これに若者は叫ぼうとしたが、瞬時に、今度は首を切断された。
「……悪いな。孫が今、寝ているのでね……大声を出せば容赦なく殺す」
その言葉に誰もが畏怖した。
脅しではない。
何人もの人間を何の感情もなく殺した男の声に誰もが、背筋が凍り、そして、その手柄に喉が鳴った。
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