第5話 クソガキは死ぬ

「さて、死ぬか?」

「イカれてんのかお前」


初めの一言がこれで良いのだろうか。現在はとりあえず死んでみようとする啓人を、悠太が全力で引き止めているところである。


「あれ、そう言う話じゃなかったっけ?」

「だからって躊躇無く死のうとする奴がいるか。てかどうやって死ぬ気だよ。」

「確かに、死ねなくね?この部屋なんも無いし。」


そう言って辺りを見回す啓人。


「とりあえずこの子の頭はイカれてるってことはわかった…まぁ現実的に考えたら、私達のどっちかが殺すのが手っ取り早いと思うけどな〜」

「いや…駄目でしょ。女神が殺人とか…エルノラみたいな雑用ならまだしも…」

「え、急にバカにするじゃん。頭消し飛ばすよ?」

「ちょっとゆーちゃん変なこと言わないで〜」

「やっぱり私のことを分かってくれるのは紗耶ちゃんだけだよ…私の養子にならない?」

「おいコラエルノラ」

「なんですか女神様…養子になるとかは自由ですよね?」

「いや、不快だから禁止」

「えぇぇぇぇぇ!?!?そんなぁ〜堪忍して下さ〜い!」


女神ニアに泣きつく雑用エルノラ…神話にでもありそうな場面を3人は冷めた目で見ていた。


「それで、結局どうするの?」

「死ぬのが一番手っ取り早いんだけどなぁ」

「それって痛い?」

「いや、痛くないように出来るよ。」

「じゃあそれで良いじゃん。」

「私も賛成〜」

「じゃあ僕も」

「この子達肝据わり過ぎでしょ…まぁ、本人達の許可があるなら殺っちゃっても良いか…」

「字が物騒過ぎる。」


悠太は心なしか目がキラキラしだした女神ニアから目を逸らした。


「じゃあさっそく。消し飛ばしていい?」

「そこまでする?どう考えてもオーバーキルでしょ。こっち人間だよ?」

「殺るからには全力。これが女神ニアの信条よ。」

「だから物騒なんだって。女神の信条じゃ無いでしょ。」

「えぇ〜いうるさい!さっさと並べ!まとめて消し飛ばしてくれる…」

「は〜い!」

「そのテンションで死ににいく人居ないでしょ…」

「ここにいるだろ?」

「私を除いてってことだよ低脳」

「認めてんじゃねぇよサイコパス」

「は?先に殺すぞてめぇ」

「早くっ!俺が暴力女に殺される前に早く!!」


首を絞められながらお願いする啓人を横目に、女神は力を溜めた。


「あの…女神様?多分溜めなくてもいけるかな〜って思うんですけどぉ…」

「だ〜か〜ら〜!殺るからには全力!本気で…だと部屋が消滅するから、部屋が壊れない程に全力だよ!」

「死んだらすぐ女神様の部屋に着くの?」

「そうだよ。待ってるから、ちょっとゆっくりしてきても良いけどね。」

「ゆっくりするとこあるの?」

「ない」

「なんだよ。」


女神ニアが変な事を言うため、悠太はついいつもの調子でツッコんだ。


「お、良いね〜私にそんなこと言えるのエルノラとあと何人かしか居ないからなぁ…」

「じゃあ僕もこれで行くよ。早くして?」

「急に生意気になったな…まぁそのくらいがちょうど良いか。よし、そろそろ準備出来るよっ!」

「おーい2人とも、そろそろ死ぬよ〜」

「何そのパワーワード。…おい、起きろ低脳」

「………」


2人に話しかけた悠太だったが、返って来たのは1人、紗耶の返事だけだった。よく見ると、啓人は紗耶に首を絞められて白目を剝いていた。


「え、返事無いんだけど…もしかして紗耶。先に殺した?」

「ちょ、ちょっと力込め過ぎたかな〜」

「………る」

「お、息はあるっぽいね。何て言ってる?」

「…ぜ、ぜったい…ボコボコにして…やる」

「よくこの状況でそれ言えるね…」


凄まじい程のバカっぷりに呆れつつ、3人は女神に視線を向ける。


「じゃ。お願いしま〜す!」

「よーし、行くよ〜」


女神から眩い光が現れた。そしてその光は収束し、強烈な光を放つ玉になった。


「それじゃ待ってるね〜」


キィィィィィィィィィィィィィィィィィィン


そう言った瞬間。高音が鳴り響き、気付いた時には恐らく爆発したであろう玉が3人の意識を刈り取った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ん、ここは─」


初めに目を覚ましたのは啓人。ここはどうやら、先程の白い部屋とは比べ物にならないくらい巨大な部屋らしい。壁や床も、お城の様な装飾が付いている。周りを見渡すと、頭に三角の布を付けたナニかがそこら中に居ることを確認した。多すぎて目眩がしてくる。


「んぇ…どこ?」

「意外と一瞬だったね。」


続いて起きた悠太と紗耶も、周りを見渡して同じ様な反応をする。


「うぇぇ…ちょっと気持ち悪いね…」

「人多すぎ…」

「俺達も同じ様な見た目なんだよなー」


そんなことを呟いていると、突如部屋の中心に現れたエルノラが大声を出した。


「啓人〜紗耶〜悠太〜どこにいる〜?」


どうやら3人を探しているらしい。突然現れた者が大きな声で言っているため、周りのナニかからの注目を浴びている。


「俺達のこと呼んでるな…え、この中で出るの?」

「無理…」

「…はぁ、僕が行って来るよ…」

「お願いゆーちゃん…」


場所を忘れない様にしつつ、エルノラの場所に向かう。大きな声を出せば良いと思うかもしれないが、悠太は陰キャである。ここで大勢の注目を浴びでもしたら、魂だけの悠太は蒸発してしまうだろう。


「3人とも〜?」

「あ、あの…エルノラさん?」

「あ、悠太君?あとの2人は?」

「注目浴びたく無いって言ってたんで僕が呼びに来ました。というか僕も注目浴びたくないんですけどね…」

「あら…ごめんね。じゃあ2人も呼んで、女神様のところに行こうか。」

「あれ…ここ仕事部屋じゃ…」

「今は休憩中だよ。さっきまでバリバリ働いてたし。」

「そうですか。」


雑談をしながら2人の元に帰る。ちなみに悠太は、魂だらけの場所に唯一人の形をしているエルノラと一緒に居るため、かなり目立っている。蒸発一歩手前である。


「こっちで──うん?」


エルノラを案内していると、何やらざわざわとした声が聞こえてきた。しかも、今向かっている方から。


やばい──


そう反射的に思った悠太は、エルノラを置いて走り出した。


「え、ちょ、悠太君!?なんで魂だけなのにそんな早いの!?」


エルノラの声が聞こえたが無視して先に進む。もし悠太が想像している通りならば、心配である…特に紗耶────


「ぐぼぁ!!」

「おらおらさっさと立てよ雑魚がぁ!」

「ゆ、ゆるじで…」


紗耶のお相手さんは。


「何があったの?」

「あ、ゆーちゃん!こいつが悪いんだよ!私はちゃんと大人しくしてたんだけど、こいつが急に『君、可愛いね…でゅふ』とか言い出すんだよ!?キモ!気持ち悪い!だからボコボコにしただけ!私悪くない!」

「大丈夫。紗耶は悪くないから。あ、エルノラさん。こいつどうする?」

「はぁ…はぁ…早すぎ…え?何この状況?」

「紗耶、ナンパされる、キモかったからボコボコにする、僕達駆けつける」

「よし、地獄行き。」

「だよね〜」

「あれ、てか啓人は?」

「啓人ならそこで伸びてるよ?」

「キューー…」

「なんでだよぉ…」


ナンパ男だけでなく、何故か啓人まで伸びている状況に更に悠太とエルノラは混乱した。


「えっと…啓人は誰にやられたの?」

「こいつ!?こいつなの?やっぱり無限行きかしら…」

「いや…その…」

「もしかして別に居るの?だとしたらそいつも地獄に…」

「……です。」

「ん?紗耶ちゃん何か言った?」

「啓人は私がボコボコにしました…私がじっと待つことが出来ない暴力中毒だって言うから…」

「なんでそこで暴力で返すの…」


どうやら啓人は紗耶がボコボコにしていたらしい。これで問題は全て解決した。


「まぁ…良いか。じゃあ女神様のところに行くから、私に着いてきてね」

「は〜い。」

「分かった」

「キュー…」

「はぁ…大丈夫かな…」


エルノラの心配そうな声だけが、その空間に残ったのであった。



────────────────────

早く本編行きたいんですけどねぇ…毎回漫才してるせいで全然進まない…そろそろ本編に入れそうなので、頑張っていきます…


魂達ですが、一応人っぽい形をしている設定です。ただ顔とかにはぼんやりモヤがかかってる感じで、モヤをじっくり見ると頭の中に顔のイメージが流れて来ます。現実にも実装されてくれ。


それではまた

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