第3話 クソガキは女神様と会う
「いや〜ごめんごめん。人間って瞬間移動出来ないんだったね」
「普通気付くでしょ」
「俺よりアホ?」
「あんたそれ世界最大級の悪口だよ」
「流石に酷くない?」
「アホなのが悪い」
「はぃ…」
なかなかついて来ない3人を不思議に思い戻ってきたエルノラを捕まえ、なんとか話を聞いてもらった。そして現在、部屋に閉じ込められたということから目を逸らしている最中である。
「──さて、現実逃避はここまでにして、どうする?これ移動出来なくない?」
「エルノラが一緒に飛べないの?」
「無理だね。これ1人用だから…あっ、悪いなの◯太!これ1人用なんだ」
「わざわざ言い直さなくて良いよ」
「必要かなって」
「それよりここから出る方法の方が必要かな」
「わお正論」
かれこれ長い時間この部屋に居るため、若干の慣れはありつつもずっと気持ち悪いままである。そろそろ誰か発狂してもおかしくない。
「もう女神がこっち来れば良いんじゃね?」
「確かに」
「エルノラさん呼んで来て〜」
「えぇ〜…それも無理だよぉ…女神様は死者を裁くので忙しいし…」
「それ閻魔がやるんじゃないんだ」
「そうそう。まずここで天国行きか地獄行きかを裁くの、その後どの地獄に堕ちるかを閻魔が裁くって感じ」
「へぇ〜てことはこっち大変過ぎない?」
「やばい。特に魂が地上に帰る習慣のある世界…地球のお盆とか、そんなときは全員の外出許可証出さないといけないからまじで大変…もう辞めたいこの仕事…」
「雑用も大変なんだね。」
「そうなの。」
神様クラスになっても仕事は大変らしい。世知辛い。
「じゃあ…一応呼んでみるから、皆もどうにか出る方法探ってて」
「は〜い!」
またまたエルノラはシュンッと音を立てて消えた。
「さて、出る方法って言ってもなぁ…」
「ゆーちゃん何か思いつかない?」
「流石に無理があるなぁ…神様のことは流石に分からないし…」
「そっかぁ…」
「あの瞬間移動ってどういう原理なんだろうな」
「確かに、それが分からなかったら一生賭けても無理だと思うな」
「実はこの部屋に扉が付いてたりしないかなぁ?」
「う〜ん、確かに探してなかったけど無いんじゃない?あったらわざわざ瞬間移動で入って来ないだろうし」
「探すだけ探してみようよ」
「まあそうだね。やることも無いし、探してみようか」
一度真っ白な部屋を探索してみることにした。地面も壁もどこにあるのか分からないため、転ばない様に少し屈んで移動した。
「何も無さそうだな〜」
「やっぱり無いよねぇ〜」
「本当にこの部屋気持ち悪いな…」
「となると閉じ込められてるから、食料が無かったらこのまま餓死だね」
「悠太。お前冷静に何言ってんだ…」
「怖いこと言わないでゆーちゃん」
「あ、ごめん」
普段怒られる側の2人に怒られた悠太は少ししょんぼりとした。その時、光が現れてエルノラが帰ってきた。
「仕事終わったら来るって。普通はこんなことしないのに『特別だぞ』って言われた。あと『肩でも揉め』って言われたからぶん殴ってきた。」
「とんでもねぇことしてるぞこの雑用」
「飼い犬に手を噛まれる所の話じゃないね…」
「暴力は駄目だよ?」
「え、紗耶がそれ言うの?」
「あ?何か文句あるの?啓人。」
「べっつにぃ?自分に甘く他人に厳しくは嫌われそうだな〜って思っただけ」
「お?やるか?喧嘩か?このド低脳が表出ろやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「ここから出られねぇんだよぶぁぁぁぁぁぁか!!!」
「てめぇやっぱりボコすっ!!」
「かかってこいよ暴力女っ!」
「あ"ぁ"!?」
「声野太っ」
いつも通り始まった喧嘩をこめかみを押さえながら見つめる悠太と、オロオロしているエルノラ。長い時間罵りあっていた2人は、疲れたのか急に静かになった。
「2人とも満足した?」
「ぜ、全然?」
「ふぅ、ふぅ…まだまだァ…」
「そろそろ辞めないと怒るよ?」
「「………はい」」
悠太の声を聞き、2人は急に萎んでしまった。エルノラはそんな2人と悠太を交互に見ながら思った。
(この喧嘩を止められるってこの子何者!?)
と。
─体感数時間後
「ふりかけ」
「啓人は低脳」
「うるせぇボケ」
「喧嘩するか?」
「かかってこいよ」
「余裕だわお前みたいな雑魚」
「殺す」
「君たちしりとりしながら喧嘩しないで……あとしれっと僕の番飛ばさないで…」
仕事に戻ったエルノラを除いて、3人でしりとりをしたり、喧嘩したり、悠太が怒ったりしていると、再び光が出現した。光が収束した時、そこにはエルノラと、もう一人姿があった。
そこにいたのは──
「やぁやぁ皆。調子はどうだい?」
エルノラと対象的な低身長。綺麗な金髪をなびかせた美しい…
「私は女神ニア!偉大なる最高位神にして世界と罰を司る神様だっ!」
めちゃくちゃドヤ顔のロリっ娘だったっ!!
数分後、正気を取り戻した3人は目の前の自称女神様に話かけた。
「─あの…女神様〜ですか?」
「そう!私が最高位神にして─」
「あーそれはさっき聞いたので大丈夫です。その…すいません。本当はこっちから行かなきゃいけないのに…」
「全然気にしてないよ!この部屋から出る方法が無いなら仕方あるないし!で、君らの名前を教えてくれない?」
「はい!俺中河啓人!」
「僕は日比野悠太です…」
「私は春野紗耶だよっ!ねぇねぇ可愛い女神様!ニア様って呼んで良い?」
「うん!許す!なんだこの可愛い生物は…春野ちゃんと、中河君に日比野君だね、うん覚えた。」
女神ニアはデレーっと顔を歪ませて、キャッキャッとはしゃぐ紗耶の頭を撫でた。世渡り上手な娘である。
「女神様。早く話を始めて下さい」
「えぇ〜でもお前さっき殴って来たしなぁ…」
「それは忙しい私に仕事でもないことを押し付けようとしたからです。」
「こいつ部下なのに私に対して偉そうじゃない?クビか?処す?処す?」
「私を解雇したら雑用は全部女神様がやって下さいね。」
「嘘嘘冗談に決まってるじゃーん!女神ジョーク!」
「神の
「待って待って待って!!ごめん!謝るから!あいつら超怖いんだよ!?私相手にボコボコ言ってくるし!私世界と罰を司る神様なのにっ!」
「言われる様なことしてるからでしょ…」
「それはさ…ほら、女神の顔に免じて…ね?」
「やっぱり通報するかぁ…」
「私の泣き落としが効いてない!?」
「あの…早くしてもらっても良いですか?」
「あ、ごめんごめん。ほら女神様。早くしてください。」
部下からボコボコにされた女神ニアは、心なしかこの空間に来た時より疲れた顔をして話を始めた。
「あ〜うん。皆に話があると言ったよね、それはある頼みがあってなのだ〜。」
「頼み?俺達にか?」
「そう。君たちの様な幼い子に頼まねばならない程の重大なお願いだ…」
「………ごくり」
「なんだろう…」
「そのお願いをするには、まずこの天界の現状を話さなければならない。今天界は類を見ない程の人材不足なんだ!」
「ほぇ…」
「人材…」
「不足?」
「そう。だから常に優秀な人材を探しているわけだよ…ここまで言ったら分かるよね?」
「いや全く?」
「ニア様どういうこと〜?」
「あれ〜?結構理解力ある子達って聞いてたんだけど…」
「それは子供にしてはって話です女神様…私の話聞いてました?」
エルノラが怒った様な、困った様な、絶妙な表情で女神ニアに聞いた
「いや〜その…どうやって肩揉ませようかしか考えてなかった…テヘペロッ!」
「通報」
「ごめんごめんごめんごめんごめん」
「もっと簡単に言ってあげて下さい」
「分かったよぉ…こほん。」
女神ニアは咳払いをし、その一言をもったいぶって言った。
「君たち……………神様とか興味無い?」
そんな意味不明なお願いに
「「「…はぁ?」」」
と、3人は素っ頓狂な声で返事をすることしか出来なかった。
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実際の女神とかから名前付けようかと思ったけど詳しく無かったので完全創作しました。
そしたらなんだか可愛い生き物が出来上がった…
手な訳で3話です。こっちも書くの楽しいので、意外と早いペースで投稿出来そうですね
それではまた
〈キャラ紹介〉
女神ニア:世界と罰を司る最高神。見た目はロリっ娘、口調はお姉さん6割ロリ4割。魂の善悪を決めるのが大変過ぎて趣味という趣味もないブラック企業戦士。
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