第2話 クソガキは帰れなくなる

目が覚めると、真っ白な部屋に居た。


「うぇ…頭…痛ぁ……」

「なんだろう…ここ…」

「真っ白で気持ち悪い…」


顔を見て、それぞれがいることを確認した後、3人は真っ白な部屋に視線を飛ばした。

先の見えない白。部屋と称したが、それがそもそも部屋なのかすら分からない。地面があるのか分からず、まるで宇宙空間にいるような感覚に襲われた。


「これ地面あるよな?」

「気持ち悪いぃぃ…」

「う〜ん…なんだこの状況…気付いたら真っ白な部屋にいるって…まるで─」


それまで喋ったところで、目の前…たまたま視線を向けていた方向に、謎の光の塊が現れた。その光は徐々に小さくなり、やがて人の女の子の様な形をとった。160cm程の身長に、髪は透き通る銀色で、整った顔立ちをしている。


「はぁ…なんで部屋の掃除なんか─って、うん?えっ?誰?え?人間!?」

「いや混乱してるのはこっちだよ」


突然現れて驚いてくる目の前の女に悠太がツッコミを入れつつ、この場所が何なのかを知っている口振りだった女に話しかける。


「あの〜どちら様ですか?後ここってどこなんですか?」

「なんで人間がこんなところに──って何?私?」

「あ、はい。そうです。」

「普通人に尋ねるときって自分から教えない?」

「そうですか。僕は日比野悠太。こっちの男の子が中河啓人で、女の子が春野紗耶です。」

「ども。」

「よろしくお願いしま〜す!ねぇねぇ美人なお姉さんは!?何て言うの!?」

「び、美人なお姉さん?それって私のこと?」

「この部屋にお姉さん以外の人って居ませんよ?」

「え、へへへ。美人…美人かぁ…皆からバカにされてきたけどやっぱり私のこと美人だって思ってくれる人もいるんだよあのクソ上司が…」


突然ブツブツと誰かの文句を言い始めた女に、再び悠太が声をかける。


「あの、それであなたは─」

「あっ、そうだった!ゔぅっん。えー私の名前はエルノラ・フリーズ・テル。役職は偉大な女神様っ!」

「えっ女神様!?」

「…に仕える部下兼雑用係です…」

「うわぁ…」

「一気に神々しさ消えたね…」

「こんなに綺麗で可愛いのに雑用係なの?」

「何この子超良い子!欲しい!頂戴っ!」

「いや俺達は要らないんで全然上げますけど…」

「右に同じく」

「おいてめぇらぁぁぁぁぁ!!!」


急に光ったりしょんぼりしたり暴走したり…

一瞬で様々な面を見た3人の感想は一致した。



「「「この人残念だなぁ…」」」



と。


「─それで、あなた達どこの世界からどうやって来たの?」

「どこの世界?まぁ地球から来ました。ここには神社にあった石の縄とお札を取ったらいつの間にか。」

「地球地球っと…そして神社ね…オッケー分かった。ちょっと確認と報告してくるから待ってて。」


そう言ったエルノラはシュンッと音を立てて目の前から消えた。


「うお…瞬間移動?」

「かっけぇ〜」

「私も使えるかな!!」

「無理…とも言えなくなってきたかも…」

「これ、今更だけど夢じゃ無いよな?」

「ほっぺたぶん殴ってあげようか?」

「なんでだよ普通つねるだろぶぉげぇぇぇぇぇぇ!!!」

「ふぅ、痛かった?」

「…うん。痛かった。後でしばく。」

「やれるもんならやってみろば〜かw」

「お前エルノラ?と話すとき猫被り過ぎだろww」

「は?あれは素だが?可愛い物を愛でるのは女の子なら誰でもやるが?」

「紗耶は例外だろw」

「は?殺す。」

「こんなところに来てまで喧嘩しないでよ…」


3人でいつもの様に雑談して時間を潰していると、どれくらい経ったのか分からないがエルノラが戻ってきた。


「ただいま〜って何やってるの?」

「喧嘩してるだけです。気にしないで下さい。」

「えでも…止めなくても…」

「いつものことです。気にしないで下さい。」

「…分かった…それで確認してきたんだけど、良いニュースと悪いニュースがあるわ」


エルノラは指を2本立てて、フリフリと動かしながらそう言った。


「それ映画でしか聞いたことない」

「うっさい啓人。黙って聞けないのか残念頭」

「ぐっ…すんません…」

「……で、どっちから聞きたい?」

「悪いニュースからで」

「こう言うのは悪いのからって相場が決まってるよねぇ〜」

「じゃあ悪いニュースからね……あなた達には辛いかもしれないけど、あなた達の家族、友達、先生、知人、誰の記憶からも、既に忘れ去られていたわ…というより、最初から存在してなかったみたいになってる。だから皆を元の世界に帰すことが出来ない。」

「へぇ〜」

「そうなんだ。」

「それは別にどうでも良いかな」

「あれぇ、思ってた反応と違うなぁ…」


てっきり泣き叫ぶと思っていたエルノラは、想像と違う反応に面食らってしまった。


「え、えっと〜何で?悲しくないの?」

「まぁ…全然?親は俺達に無関心だし、友達は俺達の夢をバカにしてイジメてくる。先生は俺達の言葉に耳を貸そうともしないし、挙げ句いい加減大人になれってあいつらに協力するし。帰るつもりも無いかな。」

「啓人…こんな難しい文章も言えるようになって…」

「バカにしてるよな?だよな?」

「褒めてるんだよ」

「そっか。良かった。」

「チョロ」

「は?」

「あはは…」


再燃した喧嘩に苦笑いしつつ、エルノラはどうにか自分を保って続けた。


「そ、そっか…辛かったんだね…じゃあこの話は終わりにして、良いニュースに移ろうか。」

「辛かった訳じゃないけど分かった。」

「僕も大丈夫です」

「私もーー!!!」


元気良く答える3人を見て、咳払いをしてから話始める。


「良いニュースは、封印の石を勝手に触った罰は与えられないってこと。そして3人と女神様が合いたいって言ってることかな。」

「それが良いニュース?」

「なんで罰が無いの?」

「普通は元の世界に帰れないってのが罰なんだけどね…あなた達には意味無かったみたいだし。後封印を解いただけで神域と繋がれる地球担当の神が悪いしってことで、罰は無し!良かったね!」

「じゃあ、女神様が合いたいって言うのはどういうことなの?」

「さっき確認と報告って言ったでしょ。報告しに行ったら、『封印を解くだけで神域に足を踏み入れるなんて凄い才能じゃないか!ぜひ連れて来てくれ!』って言われたの。」

「へぇ…女神様ってそんなフランクに会って良い存在なんだ」

「あのクソ上司…じゃなくて〜女神様は軽い人だからぁ…もっと肌の手入れに力を入れた方が良いとか言ってくるし…それが出来ないのはてめぇが雑用押し付けて来るからだよっ!!」

「わ〜お、荒れてるねぇ…」

「バレて怒られても知らないですよ?」


文句第2弾を言い始めたエルノラを置いて、3人はコソコソと話出した。


「どう思う?ゆーちゃん」

「う〜ん、僕は会っても良いと思うな。」

「それはなんで?」

「エルノラさん曰く女神様は僕達を絶賛してたみたいだし、良いニュースで女神様と会うって内容なら少なくとも悪い用にはならないでしょ…多分」

「しっかりしてよゆーちゃん〜君が私達の頭脳なんだから」

「頼むぞ悠太〜」

「あんたはもっと考えろ」

「考えてるし。」


話がまとまった3人がエルノラに視線を向けると、エルノラはまだブツブツと文句を言っていた。


「あの〜エルノラさん?」

「だからあのクソ上司は──はっ!な、何かな3人とも。」

「俺達も女神様に会いたいんだけど〜」

「会う?…あぁ、そう言う話だったね。ごめんごめん忘れてたよ。」

(大丈夫かこの人…)

「じゃあ女神様のところに案内するから、私について来て」


そう言ってエルノラはシュンッと再び瞬間移動をして消えた。


「いや出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 


3人の叫びは、ほぼ必然的に揃った。



────────────────────

これ結構書くの楽しいな?てことで結構な頻度で投稿するかもしれないです。


ちなみにこの先ノープランで書いてます。なんならここまでもノープラン。せめて文章になるように書くので見捨てないで(泣)


それではまた


〈キャラ紹介〉

エルノラ・フリーズ・テル:偉大な女神様!ではなく部下兼雑用係。女神様のパワハラセクハラにストレスが溜まっており、爆発すると藁人形で女神様に呪いを掛けだす。

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