2 再会
それから5年の年月が経った。
私はそろそろ街で働きながら暮らしていた。
ある日、仕事場でその会社の社長の息子がいなくなった、ということを聞いた。
もしやと思うと、それはまことだったのだ。
それから私は毎日、帰るとまことを探そうと思い、そこら中を探し回っていた。
すると、まことに似た人を見つけた。
もしやとは思ったが、よく見ると本当にまことだったのだ。私は思い切り、声をかけた。
「まことっ、まことじゃないか!」
すると、その青年は振り向き、顔をほころばせると、「よしゆきーーー!!!」と私に走り寄ってきた。
話を聞くと、あの後、家に戻ってずっと普通の生活をしていたという。しかしやっぱり耐えきれなくなって、ついに夜に逃げ出したそうだ。
それから、家でまた2人一緒に暮らすことになった。
私が外で働いているときは、まことは家でいろんなことをしていた。だがある時、ふと「やっぱり私はもう、一人で鳥になる」と言い出した。
あの日、私が言わなかったせいで、まことは姿を消した。今度もまたそうなってしまうのかと思ったが、どうしたらいいのか分からなかった。
そして、私はまた知っていたのだ。あの時、言わなかった時も同じだったが、今も私は知らぬふりをしている…。
会社でまことが、鳥になって森に行きたい…よしゆきに会う、ということをいつも言っていたと聞いた。
だが、鳥になんてならなくても、そう言って止められなかった。私はいったい…。
「まこと、待って、まことっ!」
ようやくそれだけ言うことができた。
私が追いかけると、まことは振り向いて大声で私に言った。
「よしゆき、いいか。俺は鳥になりたいって言っただろ。死ぬんじゃないさ。この空ではばたく自由な鳥になるのサア。俺の自由を喜ぶなら追いかけるな!!」
そう言われたが、私は走った。
しかし、まことはもう一度振り向き、
「人は、自分のなりたいものになるのが幸せなんだ」
そう言って、すごい速さで走っていってしまった。
その言葉を聞いて、私は何も言えなくなった。しばらく、そこから動くことさえできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます