チュートリアルで死ぬはずだったモブですけど、努力しすぎたみたいです。うっかり主人公の出番根こそぎ奪ってしまいました、好き勝手やってるだけなのにヒロインたちからの愛が重くて困っています
第6話 ストーリーがやべぇ方向に向かってるかもしれない件
第6話 ストーリーがやべぇ方向に向かってるかもしれない件
翌日。
朝起きると座学が始まることになった。
基本的に朝の時間帯は座学に使われることが多い。
俺は学舎へと足を運び空いてる席に腰を下ろしたのだが……
「隣、いいよね?」
声。
顔を向けてみると、シエルだった。
あんぐり。
口が開いたままになってしまう。
(やばくね?)
「どうかした?アルマ」
(それは俺のセリフだ。レックスはどうした?君の役目はレックスと結ばれることだぞ?!)
心の中でそう叫んでみたが。
「昨日寝る前に考えてたんだ」
照れくさそうにそう呟いていたシエル。
「何を考えてたの?」
「私の生まれてきた意味とか理由について」
(思ったより壮絶なことを考えてたな)
ていうか、嫌な予感がする。
先に言っておくが俺の嫌な予感というのは割と当たる。(俺に限った話ではないと思うけど、なんで嫌な予感ってこんなに当たるんだろうね?!)
「で、君の生まれた理由ってのは?」
パシっ。
俺の両手を取ってきた。
めっちゃ、目をキラキラさせてる。
子供みたいだ。
「私はきっと君に会うために生まれてきたんだと思うんだ、アルマ」
(やっぱりかぁ。言うと思ってたよ、それ系のこと)
もちろん、俺の中で返す答えは出ている。
「気のせいだと思うよ?」
「そんなことないよ。これはきっと運命」
シエルは俺の手をグイッと引っ張った。
俺の体は自然と前のめりになる。
体全体でシエルの方に倒れ込んだ。
ぽふっ。
シエルの胸に顔が当たった。
かと思えばシエルは俺の頭を優しく抱きしめてきた。
「聞いて欲しい。この胸の音を」
(なんも聞こえんぞ……?)
少なくとも俺の心臓のバクバク音の方がデカくて、聞こえる気がしなかった。
しばらく後で俺はシエルに釈放された。
そのあともいろいろ運命とかどうとか宗教じみたことを必死に話してきたシエル。
俺は話半分に聞いていた。
理由は原作主人公、レックスの方を見てたからだ。
「くそっ……」
レックスが小さく悪態を漏らしたのが聞こえた。
(ぷぎゃっw)
ってかこの流れは、ストーリー的に大丈夫なのかな?
シエルがこのまま俺にべったりくっついてしまうのは不味い気がする。
なぜなら、シエルはレックスが覚醒するのに必要不可欠な要素だからだ。
このままだとレックスは覚醒しなくなる。
そうなったらこの世界はどうなってしまうんだろう?
まぁ、どうでもいっか。世界の運命なんて。
モブの俺が考えることじゃないよな。
他のやつに任せようぜ。
モブはモブらしく生きるのみである。
・
・
・
座学が終わった。
次は実技なんだが、実技が始まるまでに4時間ほど空白があったので森の方にやってきた。
相変わらず例のロープ草のギミックでひたすらパリィをしていた。
そろそろ実技の時間が始まるし切り上げようかと思ったくらいのタイミングだった。
【パリィレベルが上がりした。レベル2→レベル3】
おっ。
レベルが上がったか。
原作ではパリィレベルが上がるとだんだん使えるパリィスキルも増えたはずだけど、この世界だとどうなんだろう?
【使用可能なパリィスキルが増えました。オートカウンターを獲得しました】
(ふむ。原作でもレベル3で手に入るのはオートカウンターだったな)
このスキル面白いんだよな、けっこう。
枠があれば使いたいところだが……使えるかな?
たしか、オートカウンターのスキルのコストは1だったはず。
現状経験値同調でコストを3使ってるせいで、そのままだと使えないんだが、スキルコストが上がっててくれれば……使えるんだが。
とりあえず枠の確認をしてみようか。
【パリィスキルスロット】
残りコスト:4
スキル1:経験値同調
スキル2:【空き】
「大丈夫そうかな、うん」
スキル2の枠に【オートカウンター】を付けといた。
さて、そろそろ施設に帰るか。
実技が始まるだろうし。
新しく手に入れたオートカウンターの効果は実技で確認したらいい。
実技の内容が原作と同じなら確認できるはずだしね。
座学はモンスターや武器、魔法について学ぶ時間だ。
実技は反対に体を動かして実戦的な動きを学ぶ時間だ。
もちろん、その中で模擬戦闘みたいなこともするし、パリィを活かすこともできる。
ここで新たなスキルを獲得できたのはタイミングもいいし。僥倖というやつだな。
グラウンドにやってくると、他の奴らは既に集まっていた。
俺は最後の方だった。
とはいえ、俺ももちろん集合時間に遅れた訳では無い。
定刻通りに教官は実技を始めることになった。
で、本格的に始める前に今日の実技の内容を話す。
「今日は人型モンスターに対する対策をみっちりとしてもらうぞ。ペアを組め」
(さてと、誰と組もうかな)
相手の候補を探す。
当たり前の話だけど、俺のようなモブが原作のメインキャラたちと組むことは出来ないだろう。
それに組まない方がいいと思う。
なぜなら組んだ結果各キャラ同士の関係性がおかしくなっても困るし。
よって、メインキャラ連中は候補から初めから外してるだけど。
ひとりの女の子のことを思い出して頭が痛くなってしまった。
(手遅れっぽいけど。シエルなんかはすでにかなーりやばいんだよな)
このままキャラ同士の関係を壊しまくればストーリーにどんな影響がでるか分からない。
俺は自分が"死ぬ"という部分だけをぶっ壊したいだけであって大筋はどうでもいいし、出来るだけ大筋には触りたくない。
なので出来るだけメインキャラ達には関わりたくないんだが。
と、なると。やはりミーナあたりが最適解だろうか?
そう思って声をかけようとしたんだが、
「おい」
がっ。
後ろから肩を掴まれたようだ。
不幸にも、明らかに女の子の手では無い。つまり、男の手である。
悲しいかな。
誰に肩を掴まれたのか後ろを見なくてもなんとなく分かってしまう。
特徴的な声。この話し方が相手を教えてくれるんだが。
それでもとぼけてみよう。
いやー、誰だろうなー?
この声聞いたことがある気がするけどなー?分かんないなー?
……なんてな。
覚悟を決めた。
(神様。どうかお願いします。後ろにいるのがレックスではありませんよーーーーーにっ!)
振り返る。
そいつの顔を見て軽く絶望した。
「俺と組め。今までいろいろやってくれたな?お前」
そこにいたのは……
原作主人公さん?!!!!
やっぱりお前かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
原作キャラと組みたくねぇってさっき言ったよなぁァァァ?!!!
よりによって、原作組でもメイン中のメインのお前かよ?!
本当に大丈夫なんだろうか?
このままストーリーを進めてしまって。
うーん、不安だ。
(でも一回くらいなら。まぁいっか)
俺が新しく付けたパリィスキル。
【オートカウンター】は攻撃スキルだ。
こいつなら、思う存分試せるかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます