第3話 原作のメインヒロイン登場
日が暮れてきた頃、ステータスを確認した。
さて、今日の成果はどんな感じなんでしょか!
名前:アルマ
レベル:3
攻撃力:9
防御力:9
といった感じにレベルは2つ上昇していた。
ちなみにこのゲームの経験値関係とかっていうのはマスクデータになっており、プレイヤー側からは確認できないんだが。この世界でもその仕様は同じなようだ。
「うん、悪くないんじゃないかな」
原作では一日これと同じことをして上がるレベルは1とかだし、2つあがったと考えると悪くないどころかむしろいい感じだ。
ぜんぜん、悪くない。
このままの速度で成長するなら1ヶ月後俺のレベルは60だ。
それだけあればチュートリアルもやり過ごせるはずだ。
しかし、念には念を入れたい。
この特訓に俺の生死がかかっているし、俺は慎重だ。
レベル60と言わず、もっと上を目指せるなら目指したいところだ。レベルなんてあればあるほどいい。
と、思ってはいるんだけど。
「今日は切り上げよう」
これは俺の持論だが、休むべき時には休んだ方がいい。
絶対そっちの方が効率いいと思う。
日本にいた時は、ブラック企業にいたんだけど、8時間寝た時と、4時間しか眠ってない時じゃ翌日のパフォーマンスもぜんぜん違ったからだ。
睡眠はしっかりとるし、もちろん食事もしっかりとるつもりだ。
というわけで、施設に帰ろう。
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施設は大きく分けて4つの建物からできている。
まず、座学を学ぶための【学舎】。
食事をとる為の【食堂】。
休んだり睡眠をとったりするための【宿舎】。
それから、座学や体術を教えてくれる教官のいる【教官棟】。(ここはほとんど登場することないから、実質3つだ)
そして、今からこの中の食堂に向かう。
すっかり日が暮れているせいで見通しが悪いが、建物の場所は覚えてるのでなんなく進むことが出来た。
食堂の中に入ると、沢山の人で賑わっていた。
原作でも見たようなメインのキャラたち。
それからチュートリアルで死んだり、物語中盤で死んだりしたようなサブや名前も知らないモブキャラたち。
その数は総勢100人弱ってところか。
全員が今ここに集まっていた。
生きていた。
楽しそうに会話していた。
不思議となんとも言えない安堵に包まれた。
(このときはまだ平和だったんだな)
って思ってしまう。
少なくとも物語中盤以降のキャラが死にまくってせいで淀んだ空気はなかった。
(このまま時間が止まったまま物語が進めばいいのにな)
そんなことを思いながら俺は食堂の中を見回した。
カレンはさっそく友達ができたらしく、その友達と食事をしていた。
俺は空席を見つけてそこに向かっていくことにした。
座席は特に決まっていない。
空いている席に座って食事をする形だ。
ちなみに配膳してくれるのは教官たち。
教官から食事を受け取ると俺は空いている席に向かった。
来た順番の都合上、席は選べない。
隅っこの方の席だった。
出にくいし、移動するのもめんどくさい壁際の場所だが、来るのが遅かったのだ。文句は言えない。
移動しながら隣の席の人を確認。
(俺の横、女の子か)
座ってみると、
「ひゃっ……」
ビクッとしていた。
誰だろう?分からない。
名前も知らないようなモブの子だった。
「あー、ごめん。驚かせた?」
配慮が足りなかったかも。
いきなり現れたらビビるよな。
「あ、いえ。驚いた私が悪いんです。ご、ごめんなちゃいっ」
噛んだのだろうか?
恥ずかしそうに口元を抑えてた。
「うぅ……」
めっちゃ恥ずかしそう。
(かわいい)
ちょっとだけからかいたくなるけど。
さすがに性格悪いかな?やめておこう。
「俺はアルマ。これからよろしくね」
「え?よろしく、って?なにを、でしょう?」
「これからは仲間じゃん。だから」
シュボン。
リアルにそんな音がなりそうなくらい、顔を真っ赤にしてた。
「あ、ご、ごめんなさい。私勘違いしてました」
勘違いする要素ある?
「と、友達からよろしくお願いします」
(ん?)
そこは仲間からじゃないのか?
普通は、仲間→友達の順番じゃないの?
1個段階すっ飛ばしてない?キミ。
まぁいいか。
「よろしくね」
「はぅぅ……初めてのお友達さんですぅ(ジーン)」
目頭を暑くしていた。
感動しているらしいが、俺がやったことは友達になっただけなんだよな。
それから思い出したように女の子は名乗った。
「私はミーナと言います。よろしくお願いします、アルマ、くん……//////アルマ、くぅん♡」
めっちゃ顔を赤くして、見つめられてそう自己紹介された。
さっきから思ってたけど。
なんか、距離感バグってない?この子。
「あの、手を握ってもいいですか?」
「へ?なんで?いいけど?」
手相でも見たいのだろうか?
と思っていてらミーナは俺の手を取ってきた。
俺の右手を両手で包んできた。
「これがお友達の約束です、うふふふ……。これで私とアルマくんはお友達、です。一生、永遠に、来世まで、死ぬまで。魂と魂で結ばれました。きっと、生まれ変わってもまた私たちは惹かれ合うことでしょう。永遠の絆をここに。ふふふ……」
(お、おう……)
重すぎない?感情が。
ちょっとしんどいよ?俺の心。
なんか、怖くなってきた。
背中ひんやりする。
もしかして、声をかけてはいけないタイプの子だったのだろうか?
だが、声をかけてしまったものは仕方ない。
これからは友達だ。
覚悟を決めろ。アルマっ!
例え感情が激重のヤンデレだとしてもこの子は友達なんだ!
「それでは、アルマくん。また明日、明後日も、明明後日も。毎日。この場所でいっしょにご飯食べましょうね。あ、ウザかったら言ってくださいね。私1人でもご飯食べれますので」
んー。
感情は激重だけど、悪い子ではなさそうなんだよな。
どうせ今の俺は友達もいないし、これからは基本的には毎日いっしょに食べようかな。
こうして俺がミーナとの絆を深めていたところだった。
コツコツコツ。
まだ食事中だと言うのに足音が聞こえてきた。
チラッと横目で目を向ける。
(うおっ……まじか)
こっちに近づいてきていたのは見覚えのある人物だった。
長い金色の髪の毛。
サラサラしてる。
そして、見た目はとても美しく。
男女共にすれ違えば目を奪われるであろう存在感を放っていた。
現に俺もこうして目を奪われている。
その人物は。
原作ではメインヒロインを務め、最後には原作主人公のパートナーとして選ばれる。
いわゆる勝ちヒロインの女の子。
シエルという少女だった。
こんなところに何をしに来たんだろう?
そう思っていたらシエルはミーナに声をかけていた。
「ミーナ、そちらの人は?」
どうやら2人は知り合いのようだ。
原作ではシエルの交友関係は深堀されなかったし、俺の知らない情報だった。
「えっと、友達さんです。えへ、へへへ」
シエルはミーナから俺に目を逸らした。
どうやら話す対象を俺に変更したようだ。
「ありがとうミーナの友達になってくれて。見ての通り友達の少ない子なんだ」
俺は少し動揺していた。
まさか、こんな形で原作のメインヒロインと知り合うことになるとは思っていなかったからだ。(だって、普通思わないじゃん。モブの女の子に声掛けたらメインキャラともお知り合いになれるなんて)
(ていうか、それにしてもかわいいなぁぁぁ。シエルは)
原作でも他のキャラにかわいいと言われていたシエル。
作中でもかなりかわいいキャラだったけど。
本物は例えようもないくらいかわいかった。
シエルちゃんマジ天使!
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