第5話「本日、清流釣りに興じます」

 数日後、国がコーデリアを狙っているとは露知らず、今日は家族三人とコーデリアの友達とで、清流に来ていた。


「よっ」


 その釣り糸の先には立派なニジマスがかかっていた。流石は釣りのプロ、サントス。順調に釣果を上げている。


「…釣れない」


 コーデリアは退屈そうだ。はじめの一匹さえ釣れてしまえば、楽しさも伝わるのだが。


「頑張ってね、コーデリア。皆の分はもう釣れてるから」


 エミリーたちは川べりでバーベキューの準備。釣ったばかりのニジマスも焼いて、香ばしい煙が上がっている。


 コーデリアは密かに『星屑の鯨』の力を使おうとした。彼女らは不思議な力を持っている。


 預かった当初は情緒も不安定で、超常現象を起こしてしまい、騒ぎを起こすこともあったが、今は安定期に入っていて徐々に制御もできている。


 あまりに便利な力のため、コーデリアはその力に頼る癖がある。しかし、それでは駄目だとサントスに感づかれ、たしなめられた。


「コーデリア、君の力を使えば確かに簡単に釣れるね。でも、そうじゃないんだよ」


 コーデリアはサントスのやんわりとしたお説教を、身に受けている。


「釣れる釣れないは二の次。足元を流れる川の水の冷たさ。澄んだ空気の開放感。そういうのを楽しんで欲しいんだ」


「でも、やっぱり釣れた方が楽しいよー。何か、コツないのー?」


「あそこの岩陰なんかはいいかもしれないな。何事も余裕を持つことが肝心だよ」


「うー…あれ?」


 なだめられたコーデリア。その時、釣り糸が引いてるのに気づいた。


「わっ、わっ!!これ、もしかして!?」


「落ち着いて…今だ!!」


 釣り上げたニジマスが宙を舞う。そして、コーデリアの手中に収まった。


「やった!!やったよ、サント…スさん?」


 その時、政府の軍隊がサントス家を包囲していた。

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