第4話 家族団欒

 そして半年後、ノルウェーに夏が到来していた。


「コーデリアー、ご飯だよー!!」

「はーいッ」


 シュレディンガーでは呼びづらいため、サントスがコーデリアと名付けた。ちなみにエミリーが提案した名はモヒート。コーデリア本人に却下された。


「サントスさん、今日は何?」

「フィッシュアンドチップスとスパニッシュオムレツ。あと、ブイヤベースだね」

「サントスさんの料理、美味しいから大好き!!…でも、お魚多いね」


 職業柄、魚中心のメニューが多いサントス家。


「わ…私だって、本気出せばこのくらい…」

「無理しなくていいよ、エミリーさん。得手不得手はあるって」


 対抗心を燃やすエミリーをなだめるコーデリア。警戒心はすっかりなくなってまさに本物の親子のような三人だった。


「いただきます」

「いただきまーすっ」


 サントスの料理を食べながら、


「コーデリア、学校は楽しいかい?」

「うん!!友達もたくさんできたよ、みんな、すごくいい子なんだよ」

「そりゃあ良かった」


 コーデリアは一人の人間として、すっかり環境に馴染んでいた。両親は相変わらず見つからないが、それによる寂しさは紛れているようだ。


「そうそう、友達にサントスさんのこと話したら、釣りを教えてほしいって。何だっけ、タイ…コー…ボー?」

「ああ、それか。俺もいまいちわかってないんだよ」


 相変わらず馴染まない最高の賛辞。まあ、おまけ程度に捉らえていた。勲章なんて所詮、勲章。民間人には不要なものだ。


「よし!!今度の休みは、その友達連れて、川釣りにでも行くとするか」

「釣れるかな?」


 首をかしげるコーデリア。それに対して、サントスは、


「天然物を釣るのは難しいぞー。でもまあ、この暑い時期だ、川で遊ぶだけでも十分だ」

「そっか、そうだね!!」


 こうして三人は、普通の家族として半年を過ごしていた。


 ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ ◇ ◆ ◇ 


「まだ、見つからんか?」

「申し訳ございません、今しばらくお待ちを…」


 時期を同じくして、ノルウェー政府は『星屑の鯨』を躍起になって探していた。伝説には興味ないが、千年前、確かに存在を確認していたため、眉唾物でもない。そこで、


「実は3年前から、シーデンボリーを呼んでいた」

「…!!国際的な、あの探偵ですか!?」


 シーデンボリー。国を股にかける探偵兼傭兵。腕は確かだが、手段を選ばない傾向がある。


「ようやく目星が付いたそうだ。高い金額を積んだんだ、そろそろ結果を出してもらわんとな」

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