発展
あなた様の発展としてもっとも特筆すべき点は"型"にあります。
伝統的な大衆文化に目を向けてみましょう。落語や歌舞伎など大衆の間で形作られた文化には定番があります。寿限無や曽根崎心中など現代の人間が聞いても名前は知っているような代表する名作があります。
演者は作品をどう演じるか、見る人は誰もが知っているからこそその差異を吟味する。そうしているうちに様々な表現が生まれ、新たな才能や発展を続けていきました。
ライトノベル様、あなたはまさにこの流れを令和に体現しています。
異世界転生、弱者成り上がり、天才の転生スローライフ、架空現実無双など最近のカルチャーに明るい人なら私が今思いついた型の名前を聞けがおおよその作品が思い浮かぶほど浸透しております。
これがどれほど素晴らしいことか。
まずこの型を利用する書く側にとっての利点としてマーケティングを省略できるのです。どういう人に向けて、どういう設定にするのか。本来の創作はまず自己の心の内や読者を想像して関心を引き出すところから始まります。しかし先述した型をなぞれば読者が読み易く作品に関心を寄せてくれます。これは小説を書き始める人にとってとてつもなく大きな利点です。ライトノベルは読書の入り口だけでなく随筆の入り口にもなっています。
次に常に比較に晒されることも大きな利点です。同じ型をなぞることで徹底した比較に晒されます。そうした比較の中で他の作品の技術、表現、構成を見て盗み、出し抜き、手を変え品を変え、そうして"自分の作品"を完成させることができます。同じ土俵で競う人がたくさんいる。スポーツの競技人口が成熟度を表す指標になるように、同じルールの中で競争のあるライトノベルは優れた作品を生む環境が整っています。
この2つは読む側にとって幸福なことです。自分が年齢を重ねるにつれ新たな才能が現れて革新を加えながら発展し続ける文化を見る。その流れに自分が意見をしたり、書く側になり参加できる。これほど楽しいことがあるでしょうか。それも深い教養がなくとも参加できます。もう評価の固まった古典にはない生きた文化の楽しさがあります。落語や歌舞伎を楽しんだ人々も同じ気持ちだったのではないかと私は感じております。
また教養や古典に関する知識を必要としない口語で書かれた文章は奇しくも初期の純文学の考え方と似ているように思います。
繰り返しになりますが私はライトノベルを読みません。私の趣向に合わないからです。しかしそのことを私は不幸だと感じます。ライトノベルを楽しむ人々は幸福だと思います。
生きた文化ほど楽しいものはないからです。
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