文化のはじまり
ライトノベル様、あなたは徹底したマーケティングの上に発展なさいました。
まず大胆にターゲットを変えました。忙しく働く大人が本を読まなくなったのであれば時間に余裕がある層をターゲットにすべきです。若年層を見事に取り込むことに成功しました。
学生の暮らしに合わせてハードカバーではなく文庫本で発刊し、価格も1000円以下。漫画を2冊買う値段でより長時間楽しめるストーリーを楽しむことができる。初期の強みはその辺りにあったのかと思います。
漫画といえばライトノベルは漫画文化の派生の色が強かったように思います。テレビの力が強い時代にアニメ化を見越しつつ、漫画の読者層を取り入れました。しかしその路線はあくまで漫画の二番煎じとなってしまいます。
ゲームのノベライズこそが今日の発展に続いているのだと私は考えております。漫画は詳細な部分まで表現することができますが、一方ゲームはゲームシステムが中心でありストーリーの面では改めてノベライズした時により良いものになることが多いです。ただこれはあくまで醸成するきっかけであり、やはりその中で育まれた功績はルール化にあります。
ライトノベルの発展はまさにゲームのようにルールを形作ったことにあります。タイトルを読めば内容がすべて理解できる。ゲーム文化に根付いたハイファンタジーの世界の種族や世界感を取り込む。この二つのルールは小説の持つ難解さを排除しました。学生であれば一冊に数日から1週間ほどかけて読了します。
しかし内容が想像と違っていたら。あらゆるものが詳細な説明付きで販売される時代に、小説は内容の説明を嫌っています。財布の寂しい若年層に期待はずれのものを1度でも売ってしまうと次はありません。内容を想像できる詳細なタイトルは見事なアイデアです。
ゲーム世界の取り込みもまた小説を読む障壁を取り除きました。設定、世界観、現代を生きる若者はイラストや映像で理解します。視覚から入ることが殆どです。そういった層に文字のみでの表現は伝わりづらいです。そこですでに読者の中にある視覚イメージを利用する。こちらも読者を思いやる姿勢から生まれています。
"果たしておもしろいのかどうか"小説にはそんな不安が付き纏います。しかしライトノベルはこの2つのルールにより安心して購入できます。
この姿勢がなにより讃えるべきことだと思うのです。現代を生きる人は"詐欺まがいの商品"と聞いてまったく何も思い浮かばないということはないでしょう。日々流れてくるネット広告、クリーンに見えるテレビでCMを流すような企業でさえ法に反する行いがあったという報道をよく見ます。その根本には切迫した状況の中で消費者を騙してでも利益をあげるべきだというモラルの欠如があるように思います。そんな時代にライトノベル様の源流にある読者を思いやる姿勢は評価されるべきです。
ただ単に流行りものをを真似る、ただ価格を下げる、など消費者の声を聞かない安易なマーケティングが溢れています。そして残念ながらその中の多くがそれなりに成功してしまいます。きちんと消費者を思いやった商品が少ないからです。そういった悪い思想が一時的に経済を支えることはあっても新しい文化が生まれることは決してありません。私たちが今触れている悪いものは数百年後の人々には決して記憶されません。だとしたら私たちの時代は文化としてどのくらい残っていくのでしょうか?
貧しい時代の中で、ライトノベル様、あなたは正しく読者を捉えて今なお発展しています。私達の時代の中で数少ない新しい文化であるのだと私は思います。
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