拝啓、ライトノベル様へ

ぽんぽん丸

拝啓、ライトノベル様

ますます暑さ強まる中、いかがお過ごしでしょうか。ライトノベル様のここ20年のご活躍を讃えたくこうして筆をとらせて頂きました。


不躾な書き出しになってしまいますが、私はライトノベルを読みません。ライトノベルが原作のアニメは拝見しております。そんな私がライトノベルを讃えるなどと笑われるかもしれません。また伝えする必要がないとおっしゃられるかもしれません。しかし読まずともまるで日が輝くが如く輝くあなた様のご栄光は私に届いているのです。何卒寛大にお受け止め頂ければと思います。


出版不況という言葉を耳にするようになってから長い年月が経ちますます深刻になってきております。その中でライトノベル様は累計1000万部を超える作品を世に出しておられます。それに対して芥川賞を受賞するような文学的作品においては、調べてみたものの発行部数を簡単に知ることさえ叶いませんでした。積極的に発信するような数字ではないのだと思います。


出版業界は1996年の2兆6563億円をピークに2017年の時点で1兆3701億円、11年の間に半減しその後も縮小し続けております。この流れは致し方ないものだと私は考えております。


今を生きる大人に活字の本を読めというのはあまりに酷です。我が国においても様々な電子機器、また工業機器の発展は目覚ましいです。しかし労働生産性は上がりませんでした。その結果、先進諸国との競争の中で長時間労働だけが財を成す手段になってしまいました。時間をお金に換える生活の中でじっくりと本を読むという選択そのものが愚かに思えます。


また人々に残されたわずかな娯楽の時間も奪い合いがあります。世界市場で戦う数少ない日本文化であるコミックには日本語圏のあらゆる才能が集まり切磋琢磨し、より先鋭化された素晴らしい作品が生まれ続けて、そしてすぐに過去のものになるほどの隆盛を誇っております。


ゲームに目を向ければ4K60fpsの美麗なグラフィック、未だかつてないわくわくする体験、心の底を抉るような物語。最新のゲームもセールを待てばたった3000円ほどで購入でき、50時間を楽しく過ごせます。


今や誰もがモニターを持ち歩くこの時代にYouTubeには無料の娯楽が無数にあり、さらに毎日生まれ続けています。


ライバルとなるどれもが徹底した淘汰にされされながらその中で生き抜いた傑作だけが我々に届きます。


時代の変化。他ジャンルの発展。その背景に技術の発展がある以上は抗いようのないことです。しかし役目を終えつつある書籍、活字の出版業界において新たに生まれ成長した数少ない存在がライトノベル、あなた様です。

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