第4話 病室、妹にとらわれて。

 立ち上がった肉体は兄を私が寝ていたベッドに寝かせ。その場を後にした。

 肉体はどこかへ行ってしまった。


 どこ行くの?精神はここにいるのに。私は……



 その瞬間私の意識は途切れた—――



 安堵と不安の波が同時にやってくる。







智広ちひろ!目が覚めたんだな。良かった…」

目を開ける妹を見て思わず抱き起してしまう。

「あ、おにいちゃん」

力なく小さく漏れた声が僕の鼓膜をわずかに震えさせる。僕も震える手でしっかり智広を抱きしめる。

「本当に良かった…もう起きないかと」

過保護すぎてちょっと引くわ、と抱き着いた僕の腕を振りほどく妹の肩をつかみなおす。

「それだけ大事なんだよぉ」

自分でもなかなか情けない声だったと思う。でもそれでも妹が元気であればそれで良い。

「シスコン」

と、吐き捨てる智広。シスコンか…。

「え、うざいか?そうか…気を付けるよ。」

小言を言えるくらい回復したんだ…よかった、よかった…。

「冗談だよ、すぐ真に受けるんだから…」

真に受けるってそりゃそうだよ、だって—―


智広が倒れた。


「おい!智広!おい?おい、おーい」

駄目だ答えない。どうして、どうしてだよ。2度も急に倒れるなんて無いだろ疲れたんならそう言って寝てくれよ。なぁ智広…答えてくれよ。

燦燦と輝く日光が病室のカーテン越しに僕を刺す。眩しさにやられそうになりながら僕は力なくつぶやく。

「智広…今何が見えてるんだ?」

そして智広の眠る布団に顔うずめた。







夢を見た。



真っ白な雲の上さえぎるものが何もない中で真っ白い光に飲み込まれる。



そしてその白い光を抜けると黒い場所に出た。宇宙みたいだ。



かと思えばまた白い光にあてられて。



宇宙と白昼を繰り返し



何度も何度も空間を駆け抜け。



目が覚める。







目を開けて空を見上げる。そしてあたりを見回す、ここは病室のようだ。

智広、智広はどうなった?


目の前にいたのは最愛の妹なんかじゃなく。




僕だった。


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