第1の共有この悲しみをあなたと2

アイは、記憶の海にダイブした。それは直接的な意味ではなく

そう表現をするとしっくり来ると思うから。アイは、深い

深い記憶の海に潜る。石碑の前で佇む。ヴィル・ウォルターの

記憶が自分の頭の中に送られてくる。記憶の海を優雅に泳ぎ。

アイは、ヴィルの悲しみの記憶を見る事になった。

10年前のある日の事だった。その日の天気は曇天と

表現するのに相応しいくらいの曇りだった。

当時15歳の少年のヴィル・ウォルターと幼馴染の

カエデ・ムラカミは、いつものように互いの最近の

出来事について。報告会を開いていた。

「それでは、これより。第15回近況報告会を始めたいと

 思います」中学の卒業式に着る。黒色のガウンに

 四角いキャップを彼女元気な姿がヴィルのフィルターに

 通して。アイもカエデの事を見つめる。

「ねぇ、こんな子供みたいなノリそろそろやめない?」

 ヴィルが、カエデにうんざりした表情で言う。

「あら、私は好きだけど。こういう子供ぽいノリ」

 カエデの無邪気な笑顔が、ヴィルは大好きだった。

 カエデは、日本人の父親とアメリカ人の母親との間で

 産まれた。カエデは、8歳まで日本人学校に通っていたが

 カエデ自身が「ヴィルと一緒の学校に通いたい」と言って

 アメリカンスクールに編入をした。そこからは

 二人はいつも一緒だった。学校でも、学校の外でも

 いつも二人は共に過ごした。周りから見れば二人は

 付き合っているんじゃないかと、邪な考えをする者も

 二人のそばには大勢いた。ヴィルは、そう思われるのが

 嫌いだと思っていた。「ねぇ、高校に行ってもさぁ

 また、ここに集まらない?」報告会の最中に、カエデが

 ヴィルに提案をする。ヴィルとカエデは、別々の高校に

 進学する事になった。ヴィルは、将来を見据えて

 自身の長年の夢を叶える為の高校に進学する事に。

 一方のカエデは、家から近い高校に通う事になった。

 つまり、二人は高校からは、離れ離れになる事が決まった。

 だけど、カエデは高校は違うけど。また、いつも通りに

 この大きな木の下で会う事を。カエデは、ヴィルに提案をした。

 大きな木の下で、二人はよく遊んでいた。くだらない事も

 勉強会と言いつつ、カエデの愚痴を聞くのだって、この

 木の下だった。この木が何の木なのかは、二人は知らない。

 そんな事に二人は興味がないのだ。カエデの提案に、いつものように

 ヴィルものってくれると思っていた。しかし、ヴィルの口からは

 カエデには衝撃な言葉だった。「ごめん。それは、無理かも・・・・・・」

「えっ?」ヴィルの言葉に、カエデは言葉が出なかった。

「俺の行く高校さぁ。俺の家からかなり遠くて、学校の寮に入る事にしたんだよ

 ね」「そうなんだ・・・・・・」カエデは、高校に進んでもヴィルとは

 いつも通りだと思っていた。だけど、ヴィルは高校からは寮に入ると言った。

 その言葉が、カエデにとっては衝撃な内容のように本人は聞こえた。

「あっ‼もうこんな時間だ。今日、俺の送別会をやるって。ケニーから

 誘われたんだ。カエデも来るよね」ヴィルが、カエデに顔を振り向くと

 カエデは、もうその場にはいなかった。

 「なにも言わずに帰るなんて・・・・・・」この時のヴィルはそう思っていた。

 その後日、カエデ・ムラカミは遺となって。ヴィルと再会した。

 深い記憶の海から、アイは戻ってきた。メモリーチェーンで繋がっていた。

 ヴィルの記憶が、アイので記憶を共有した。すると、アイの目から

 涙が流れた。「これが、大切な人とのお別れの記憶なの?」自分が

 泣いていると気づかず。アイは、ヴィルの友人との別れの記憶で

 悲しみを初めて感じた。

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