第1共有 悲しみをあなたと1

その男は、石碑の前で立ち止まっていた。雨がザァーザァーと降る中

男は石碑の前で、立ち止まっていた。「ごめんなぁ。今日も、雨を

つれてきちゃって・・・・・・」自分の体が、濡れるのを構わず。

男は、ぽつりと独り言を吐く。「その石の前で、何をお話を

しているんですか?」男の前に、黒髪の少女が自分の体よりも

大きな傘を差して。石碑前の男に話かけた。「そんな事を

しているという事は、お兄さん。もしかして、ぼっちなんですか?」

小首を傾げる。黒髪の少女に対し、男は「ぼっちじゃないよ。

俺は、大切な人とお話をしているんだよ」男が、黒髪の少女に

そう言い返す。すると「そのお石が、大切なお方なんですか?」

「あぁ、そうだよ」「ふ~ん~やっぱりぼっちなんですね」

また、黒髪の少女が男のぼっち説をとなえる。「いや、だから

俺は、ぼっちじゃないから」それを男が否定する。

「では、何で石とお話をしているんですか?」黒髪の少女の

再びの問いに。男が答える。「そもそもこれは、石なんかじゃないよ」

「石ではない・・・・・・」「この中に、俺の大切な友人が眠っているんだよ。

俺の大切な友人がなぁ」男の哀しげな表情に、黒髪の少女が自分の体よりも

大きな傘を男を入れる。「そのお話を見させて下さい」

「見る?」今度は、男の方が首を傾げた。友人との話を聞くではなく。

 見ると黒髪の少女は言った。「私、見たいんです」

「いや、それって見るじゃなくてさぁ。聞きたいの言い間違いじゃないの?」

男の言葉に、黒髪の少女は少し黙り込み。「あぁ‼」と何かに納得した。

返事をする。すると、黒髪の少女は持っていた。大きな傘の柄を男に

渡し。フリルの黒いスカートのポッケから、透明な糸を取り出す。

取り出した糸を男に見せる。「これを使えば。あなたの記憶を

私も共有する事ができるの」「はぁ・・・・・・」呆れた溜息を吐く。

男に黒髪の少女は、話を続ける。「これは、メモリーチェーン。

人の頭の中の記憶を第三者が見る事ができて。その人の記憶を

追体験できるの」「はぁーそうですか・・・・・・」男は、さっぱりと

意味が解らないでいた。「要するに、あなたの記憶をこの糸を使えば

私があなたの記憶を見る事ができて。追体験ができるらしいの」

そう毅然とした。態度で言う。黒髪の少女を見て、男はポカンとした。

「私は、知りたいの。あなたの今の感情をどんな記憶で、あなたは

そんなに悲しい気持ちになっているのかを」黒髪の少女の真っすぐな

純粋の眼差しをみて。男は(これは、嘘を言っている表情じゃない。

本当に、知りたいんだ。俺の悲しみの感情をこの子は純粋に)

しばらく黙る。男は、大きく息を吸い吐き出す。

それを三回繰り返す。三回繰り返した後に「あぁ、いいぞ。

俺とこいつとの悲しい別れの記憶。そんなに興味があるなら

好きに見ればいい。きっと、アイツもそれを望んでいるかもな」

男は、黒髪の少女の前に手を差し出し。「俺の名前は、ヴィル・

ウォルターだ。ヴィルって呼んでくれ」そう自己紹介をする。

それに答えるように。黒髪の少女は「私の名前は、アイ=アシモフ。

人の記憶を体験するのが趣味の普通の女の子だよ」と自己紹介をした。

ヴィルは「どこが普通の女の子だよ」と鼻で笑う。

アイは、ヴィルの言葉を無視して。透明な糸メモリーチェーンを

ヴィルの左の手の甲に優しく付けた。これは、アイ=アシモフの

一つ一つ自分にはない。感情を覚える物語の最初の感情との

出会いと始まりの瞬間だった。

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