第4話 僧侶①

 前略、女僧侶シスターカゴメは闇堕ちしています。



***



 唐突に女僧侶シスターカゴメが口をひらいた。


「ふふふ……、もう神とか知りませんわ。戒律とか知りませんわ。わたくしわたくしのしたいように生きるのですわ」


 魔法使いキューピーは不安を感じながら僧侶カゴメの様子をうかがっていた。しかしキューピーの心配を余所よそに、カゴメは危険な方向に話を進めてしまった。


わたくし、この戦いが終わりましたら──」


 カゴメ、なにを言うつもりなの!?


 魔法使いキューピーは死亡フラグの気配を感じて慌ててカゴメをめようとするが、それよりも早く彼女は言葉を続けてしまった。


「真っ白なチラシの裏側をメモやお絵描きに使わずに綺麗なまま捨ててやりますわ!」


「────」


 なんだ、そんなことか。カゴメが死亡フラグを立てるのではないかと警戒していた魔法使いキューピーは、安堵の溜息ためいきをついてから返事をした。


「なるほどね。どうやって捨てるつもりなの?」


「もちろん紙類だけを集めて束ねて指定された曜日に所定の廃棄場所に置いて、再生紙の材料として回収していただきますわ!」



***



 しばらくすると、また女僧侶シスターカゴメが口をひらいた。


「ふふふ……、もう神とか知りませんわ。戒律とか知りませんわ。わたくし、この戦いが終わりましたら──巣から落ちた雛鳥ひなどりを見つけても見捨てたりせず保護してやりますわ! これは各国が定める鳥獣保護法に違反いたしますわ!」


 なんだ、そんなことか。カゴメが死亡フラグを立てるのではないかと警戒していた魔法使いキューピーは、またも安堵の溜息ためいきをついてから返事をした。


「じゃあ、今までは助けていなかったのね」


「いいえ、今まではこっそり助けておりましたわ!」



***



 しばらくすると、またまた女僧侶シスターカゴメが口をひらいた。


「ふふふ……、もう神とか知りませんわ。戒律とか知りませんわ。わたくし、この戦いが終わりましたら──魔導機関車に乗る際に、お年寄りや体の不自由な方向けの優先席に座ってやりますわ!」


 なんだ、そんなことか。カゴメが死亡フラグを立てるのではないかと警戒していた魔法使いキューピーは、またまた安堵の溜息ためいきをついてから返事をした。


「ふーん。じゃあお年寄りが乗ってきたとしても席を譲ってあげないのね」


「もちろん席を譲った上で荷物を持つのを手伝って場合によっては目的地まで送って差し上げますわ!」



***



 しばらくすると、またまたまた女僧侶シスターカゴメが口をひらいた。


「ふふふ……、もう神とか知りませんわ。戒律とか知りませんわ。わたくし、この戦いが終わりましたら──歯磨き粉の残りが少なくなっても、ハサミで容器チューブを切断してまで中身を使い切らないでやりますわ!」


 なんだ、そんなことか。カゴメが死亡フラグを立てるのではないかと警戒していた魔法使いキューピーは、またまたまた安堵の溜息ためいきをついてから返事をした。


「じゃあ中身が残っていても捨てちゃうのね」


「ええ、遠心力と握力で極限まで絞り出してから捨てますわ。ちなみに握力は60Kgを超えておりますわ!」



***



 しばらくすると、またまたまたまた女僧侶シスターカゴメが口をひらいた。


「ふふふ……、もう神とか知りませんわ。戒律とか知りませんわ。わたくし、この戦いが終わりましたら──あの破廉恥ハレンチなミニスカートというものいてやりますわ!」


 なんだ、そんなことか。カゴメが死亡フラグを立てるのではないかと警戒していた魔法使いキューピーは、またまたまたまた安堵の溜息ためいきをついてから返事をした。


「それくらい良いんじゃないの。あ、ちゃんと見られても大丈夫なように可愛いパンツをいておきなさいよ」


「対策は十全じゅうぜんですわ! ちゃんとスパッツもいておきますわ!」

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