No.4
バイトから帰ると、辺りはすっかり暗くなっていた。西の空に、微かに夕闇の名残が見える。時間を確認しようと携帯を取り出すと、一件のメールが受信されていた。相手はバンドメンバーであったヒロだった。ヒロはドラムをやっていた。少し人見知りで人付き合いが下手な奴だったけど、面白くて、一緒に居て飽きない奴だった。文面には一言、「元気か」とだけあった。ヒロらしいな、そう思い笑う。そのまま携帯を仕舞おうと思ったが、ふと思い立って返信ページを開く。「まぁ、そこそこ」と当たり障りのない返事を打ち込むと、送信ボタンを押した。
家に着くと、途中で買ったコンビニ弁当を開けた。一緒に買ってきた焼酎を一口飲む。
ふと、携帯が音もなく光っているのに気付いた。ヒロから返事でも来たかな。そう思って開いてみると、それは意外な人物だった。
「久しぶり、元気にしてるか。」
そう始まったメールの相手はタケだった。タケは僕らのバンドのサポートとして、キーボードをやってくれていた奴だ。地元が僕らと一緒で友人同士だった事もあり、サポートを買って出てくれた。「メンバーに入れば良いのに」と、リュウがよくぼやいていた。
メール内容は、みんなが心配してるといった、何となく予想がつくものだった。ふと、ある一文に目が止まった。
「余計な事かもしれないけど、フジの奴がまたお前とバンドやりたいってさ。」
思わず目を疑った。まさか、フジが僕とバンドをやりたいなんて。
ふと、フジの事が頭に浮かんだ。バンドを辞めると言った時、リュウとヒロは必死に止めたが、フジは何も言わなかった。ただ、ひどく悲しそうな顔をしていた。
突如、携帯が光った。画面に表示される名前。それはフジからだった。
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