第7話 テヘペロ

何というか。

早乙女マキという少女が俺の学校に引っ越して来た。

この少女は綺羅の仲間だという。

俺は衝撃を受けながら早乙女マキを見る。

早乙女マキは湊によってマジにボッチにされてない。


具体的に言うと。

ボッチになりたそうな早乙女さんに湊が必死に話し掛けている。

「もう友人だよねぇ」と言いながら湊はニコニコしている。

周りのリア充女子達も湊の友人だ。

だから早乙女さんに近付いている...ああそういえば言い忘れていた。


早乙女さんはこのクラスに転校して来た。

湊も俺と同じクラスなので早乙女さんはドン引きしていたが。

予想通りの結末になった。

まあ...早乙女さんもまんざらでも無い様な感じだから問題無いか。


「さて」


俺はゆっくり立ち上がる。

そして売店に行こうと思いドアを開ける。

それから外に出た時。

「待って下さい」と声がした。

見ると早乙女さんだった。


「...佐竹さん」

「...早乙女さん?どうしたの?」

「売店に行くんですか?」

「そうだね。...喉が渇いたから」

「...そうですか」


そして何故か早乙女さんも付いて来る。

フードを深く被って人の目線を遮る様に、だ。

俺はその顔につい聞いてしまった。

「早乙女さんは何でそんなに人の視線が嫌なの?」と、だ。

すると早乙女さんは「...私、あまり人付きあいが好きじゃないです」と切り出した。


「...私、嫌われているので」

「このクラスには馴染めそうにない?」

「...私、馬鹿ですから」

「...そっか」


俺はそう言いながらそれ以上は何も言わず。

挨拶してくるクラスメイトに挨拶してから歩く。

早乙女さんは俺の横を一緒に歩く。

それから俺は売店まで行く。


「ねえ」

「...はい?」

「君ともう少しだけ話したいな。...綺羅の事。教えてくれ」

「...え?でも...私は...綺羅ちゃんとあまり仲が良くないです」

「...そっか。...じゃあ何か少しだけでも知らないか?綺羅の事」

「綺羅ちゃんはとても良い子です。...私、何時も助けられています」

「そうなんだね」


売店に入る。

それから俺は飲み物。

スポドレを買う。

早乙女さんを見た。

「何かいる?」という感じで聞いてみる。


「...え?...あ、いえ」

「じゃあお茶は?」

「...」

「じゃあミルク紅茶とか」

「...そ、そうですね」


俺は苦笑しながらミルク紅茶を買う。

それから俺達はその場を後にして表に腰掛ける。

早乙女さんは座らず立ったままだった。

お金を取り出そうとしている。


「ああ。必要無いよ」

「...え?...で、でも」

「君と話が出来たらそれで良い。...ね?」

「...」


困惑する早乙女さん。

俺はベンチの横を叩いた。

「座って」と言いながら、だ。

するとおずおずと早乙女さんが腰掛ける。

人の視線が気になる様だ。


「...早乙女さん。大丈夫だよ」

「...でも...」

「まあでもその気持ちは分かるよ。...俺も人の視線が怖かったから」

「...え?」

「俺、5歳ぐらいの記憶が無いんだ。麻疹にかかってな」

「...え...」


「それは高熱だった。...だから脳が焼けちゃってな」と苦笑しながら早乙女さんから目線を外して空を見上げる。

ここは日差しを遮るものがあって心地良い。

丁度、屋根があるから。

そう思いながら見ていると「...寂しくないですか」と聞かれた。


「...ああ。寂しいよ。だって幼稚園の頃の記憶が無いから」

「じゃ、じゃあ...綺羅ちゃんの時の...」

「無くなってる。...だけどインパクトある様な感じで彼女は接して来たから...まあ多少は思い出した」

「...そうなんですね」

「ああ。...君の大変さ、良く分かるよ。...俺は別の意味で大変だったから。その後、少しだけ性格が変わってな」

「そうなんですね」


俺の言葉にミルク紅茶のペットボトルを両手で握り締める早乙女さん。

日差しが少しだけ陰った。

だけどまだ日は差し込む中。

早乙女さんが「...綺羅ちゃんとは最近、仲が良くなっています」と話した。

俺は「!」となる。


「...綺羅ちゃんが...必死にやっています」

「...何を?」

「メンバーの力を一致団結させようって頑張っています」

「...リーダーだから?」

「そうです。...この前、電話されました」


早乙女さんはそう話しながら「...私...は。...本当に弱いですから」と俯く。

俺はその姿に早乙女さんの頭を撫でた。

そして「大丈夫だ」と言い聞かせる。

早乙女さんは「??!!!」となっていた。

そんな顔に笑みを浮かべる。


「...俺さ。応援しているよ。...早乙女さんも...みんなも」

「...」

「ヴィーナス・メモリーは強いって思っているから」

「...ですか」


早乙女さんは苦笑する。

俺はその姿を見つつ笑みを浮かべる。

すると向こうから軍団が来た。

それはクラスメイトだ。


「早乙女さん!」

「衝撃的だね。...まさかヴィーナス・メモリーのアイドルだったなんて」

「そうそう!すっげぇよ!だからみんなで来たんだ」


どっからバレたんだよ。

注目度が上がっているのだが。

そう思いながら囲まれる早乙女さんを見る。

早乙女さんの目はグルグル回っていた。


そんな軍団の奥の方。

そこでテヘペロ的な感じで湊が...。

奴かこれ話したの。

バラすなよ。

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