第6話 太陽と陰


翌日になった。

俺は大欠伸をしながら家を出る。

それから学校に行く為に歩いていた。

何というかまあ...学校に行くのは金払っているから行かないといけないけど。

面倒だなぁ。


「やれやれ」


そう呟きながら俺は人に混じって歩いていると...何か視線を感じた。

バッと俺は思いっきり振り返るが。

何も無い。

というか通学している同じ高校の生徒しか居ない。

何だ今のは?


「...俺も寝ぼけているのかな」


思いながら俺は歩き出す。

すると「へろぅ」と声がした。

そのクソ間抜けな声は...アイツしか居ない。

そう思い「何をしているんだ」と背後を見る。

そこに酒井湊(さかいみなと)が居た。


「つまらん反応ですな」

「...お前がつまらん事をするからだ」


女子の湊。

俺の親友であり腐れ縁であり。

後なんか色々。

考えながらボブヘアーの可愛らしい少女を見つめる。

まじまじと湊を見ていると「な、何?」と赤くなって言われた。

ああコイツは失敬。


「いやすまん。女子っていうのは謎だなって思って」

「はぃ?それはつまり何か有るの?私に訴えたい事が」

「ちげーよ。すげぇなって思ってな。可愛くなるんだなって」

「え?...ふぁ?」

「あ?」


俺は「?」を浮かべながら湊を見る。

すると湊は赤面しながら「な、何。いきなり」となった。

これは失敬。

そう思いつつ「いや。知り合いに可愛い女子が居てな。それでその子が...」とそこまで言っていると湊が「...」とジト目をしていた。


「あ、ふーん。成程」

「...何だよ」

「別にぃ?なにもなぃ?ちょっとムカついた」

「はぁ?お前、もう訳分からん」

「女子が可愛いっていうのはそういう意味ね?はぁん?」


何でコイツがイライラしているのだ。

訳が分からないよ。

そして湊は歩き出す。

俺はその姿を追う様にしながら歩き出した。


「ねえ。耕」

「...何だ?」

「私、可愛い?」

「...いきなり何をぶっ飛んだ事を言ってんだ?」

「いや。...何でもない」

「はい?」


コイツの心理が理解出来ない。

そう思いながら歩いていると視線をまた感じた。

俺は直ぐに振り返る。

だがそこには何も無い...いや。

今度は居た。

野生のカンが働き数秒の差があったがソイツにようやっと声を掛ける。


「オイ。さっきから何だお前は」

「...」

「あれ?その子知ってるよ」

「え?湊。知っているのか?」

「うん。早乙女マキちゃんだよね」


愕然とした。

早乙女マキっておま。

ヴィーナス・メモリーの有名アイドルの!!!!?

「湊...お前何で驚かない」と湊を見る。

湊は「いや。これでも結構ビックリなんだけど。...だけどそれよりも何でそんな暗いのかがビックリ」と話す。


「...ごめんなさい。...貴方に会うと話があったから観察していた」

「...え?それは...まさか綺羅か」

「綺羅ちゃん...はい」

「...そうか」


俺は「...」となりながら「何でこの場所に居るんだ」と聞いてみる。

すると「...学力の差。そして私の周りの関係で学校を転校するつもりだった。成績の良い学校と嫌な人が居ない場所に。そしたら貴方が居た」と話を切り出した。

その言葉に俺達は顔を見合う。


「ねえ。耕。綺羅ってまさか...」

「そうだな。...日高綺羅だ。...俺の幼馴染だそうだ」

「え...あ、そ、そう」


何故か話が萎れていく湊。

俺は「???」と思いながらも早乙女さんを見る。

早乙女さんは「この事は全て相談している。...綺羅ちゃんにも話したけど。...まさか本当に貴方が居るとは思わなかった」と驚く。

その言葉に俺は「...そうか」と返事をした。


「...でもせっかく転校して来るなら仲良くしたいね」

「...?」


湊に警戒する早乙女さん。

すると湊は「これ」と何かを差し出す。

それはクッキーだった。

俺は「?」を浮かべてから湊を見る。


「朝焼いたクッキーだけど...私用で申し訳無いけど友情の証だよ」

「...変な人ですね。私なんかを見て根暗に思わないですか」

「私はそういうの嫌いだから」

「...え?」

「私、ボッチなんて作らせない」

「...!」


そうだな。

湊はいつもこんなんだしな。

思いつつ俺は湊を見る。

湊はいつも笑顔を浮かべており色々な人と仲良くする。

最初は異端者かと思ったが。


「...私は放って置いてもらっても」

「じゃあクラスメイトと仲良くしようね」

「は、話を聞いて下さい...」

「え?何か言った?」

「えぇ...」


湊は早乙女さんを引き摺って行く。

それから高校に登校した。

早乙女さんは逃げる様に職員室に向かった。

俺はその姿に「アイドルってのも大変だな」と思いながら見送る。

そして湊を見た。


「可愛いね。早乙女さん」

「お前はもうちょい自重した方が良いぞ。可哀想だ」

「え?」

「え?、じゃないぞ。俺の時もそうだったろ」

「あれ?そうだったっけ?」

「いやお前。忘れたのかよ...」


湊はリア充の様なクラス委員の様な。

太陽の様な存在。

俺にとっては眩しかったのだが。

だけどコイツが始まりだった。

あの時は。

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