第4話 持てない自信

ヴィーナス・メモリーは5人居るが。

関係性は全てが上辺だ。

上辺というのは何なのかと言われたら簡単である。

私達は繋がってはいるが。


(全てが平行線上の上っ面の関係)


なのだ。

だからこそ私は...ヴィーナス・メモリーの仲を深めたいと思っている。

だけど上手くはいかない。

何故なら...このヴィーナス・メモリーは...。



私は仕事が終わってから家に帰宅しようとした。

その時に紗千香に話し掛けられた。

これからのヴィーナス・メモリーについて話し合いたい。

そういう意味で私に話し掛けてきた。


「...紗千香はどうしたいの?これから」

「この関係性は...まあその。...良いとは思っている。だけどさ。...それだけじゃん?それだけだから何も無いじゃん?」

「...でも。マキもそうだけど...もう話を諦めている様な感じだし」

「それは確かにそうだけど」


紗千香と一緒に家に帰って来る。

この場所は最初の家。

つまり2番目のお家、である。


1番目は実家。

2番目はここ。

3番目は所謂アパートの家、だ。


此処は主に...ヴィーナス・メモリーの集まりの場でもある。

私はお金を持っているから借りているのでは無い。

全て親に預けている。

その親が私の収益から家賃などを出している。


「...私、思うんだよ」

「何を?」

「ヴィーナス・メモリーは...このままじゃヤバいって」

「ヤバいって何が?」

「いや。だって...ずっと関係性が上辺だから」

「...そういう意味でね」


「ライバルのスパーリング・スターにも勝てないしね。このままじゃ」と言う紗千香はそのまま私の部屋の冷蔵庫を勝手に開けてからジュースを取り出す。

私の部屋なんだけど。

そう思いながら私はジト目になりながらも「確かにな」と思いながら紗千香の言葉に納得する。

そして私は「...紗千香は作戦とか有るの」と聞いてみる。


「...無いね」

「...そっか」

「私は作戦立てるのが...下手糞だし」

「...それは無いでしょ。...私が知っている限り紗千香は頭良いよ」

「...そうかな。...教科書忘れるし。宿題は間違えるし。忘れるし。グループワークも苦手だし。...アイドル以外は」


学校で紗千香は馬鹿と言われている。

馬鹿と言うのは紗千香自身が馬鹿にされている。

それは学校で運動音痴もあるから。

彼女はそれがあるから自信が持ててない。


「...紗千香。私、貴方の頑張りを誰よりも知ってる」

「...確かにね」

「それは貴方にとっては...その程度のものなの?」

「正直、アイドルを馬鹿にする気は無いよ。だけど...考えるにアイドルだけじゃ食べていけないよ。普通は。アイドルやタレントで食べていけるなんて...一握りの存在だしね。いつまでもこの場所は無理だから」

「若いうちが華っていうしね」

「そう。だから私、引退した時の為に...看護師になりたいのにね」


そう言いながら紗千香は「...なのに何をしているんだろう私」と苦笑した。

私はその言葉に「紗千香」と向く。

すると紗千香は「?」を浮かべて私を見てきた。

紗千香を抱き締める。


「私、例え貴方が馬鹿にされても私は貴方の頑張りを知っている。だからそれで良いじゃない」

「...綺羅...」

「私、貴方の事、愛している。大切な友人として」

「...相変わらずだね。綺羅は。泣かせてくるね」


私は紗千香の顔を挟む。

それからニコッとしながら紗千香をまた抱き締めた。

紗千香は「有難う。落ち着いた」と言ってきた。

私は離れる。


「...先ず、マキの事だよね」

「...マキから変えようか。意識を」

「そうだね。...私がリーダーだしね」

「そうそう。頑張ろう」


そしてそのまま私達は握手した。

それからそのまま他愛無い話をし始める。

マキの意識を変える。

そうしてから徐々に全てを。

そう思いながら私は意を決した。



私は。

早乙女マキは...恋をしている。

誰にかと言えば簡単。

私は綺羅ちゃんに恋をしている。

愛していると言える。


だけど。


私はいつもコソコソと隠れて動いている。

周りからも白い目で見られ。

家に籠っている。

そんな私が彼女。

天女を好きになって良い訳が無い。


そう思いながら歩いているとサラリーマンの様な人にぶつかった。

私は謝りながら立ち上がる。

それからまた歩き出した。

この性格を...変えたい。

表舞台だけじゃない場所も。


思いながら歩いていると「お姉ちゃん」と声がした。

私は顔を上げて見る。

そこに小さなポシェットを肩から掛けた早乙女伊豆奈(さおとめいずな)が居た。

私の大切な妹である。


「お仕事終わり?お疲れ様。待っていたんだ」

「...そうなんだ」

「どうしたの?」

「...いや。お腹が少し痛いだけ」


私はそう言い訳をしながら歩き出す。

小学3年生の伊豆奈。

彼女は私以上にしっかりしている。

そして私を慕ってくれている。

こんな私を。


「お姉ちゃんは本当にヒーローだよね」

「...え?いきなり何?伊豆奈」

「いや。いつもお姫様みたいな姿で...笑顔で踊っているから。私はいつもそれで励まされる。ヒーローだなって」

「...私は陰口を言われるだけ。叩かれているだけ。...そんなのヒーローじゃないよ。寧ろ...綺羅ちゃんの方がヒーローだから」

「私にとってはお姉ちゃんだよ」


力強く言ってくる伊豆奈。

私は「!」となりながら伊豆奈を見る。

伊豆奈は私の手をゆっくり握る。

それから「例え誰がどう言おうとしても。私はヒーローはお姉ちゃんだから」と言ってきた。

私は...涙が浮かぶ。


「...え?え!?」

「こんな自分を変えたいんだよね。...有難う。伊豆奈」

「う、うん。お姉ちゃん」

「...お姉ちゃんが泣いてゴメン...」


そして私は伊豆奈の手を握る。

それから「帰ろうか」と笑みを浮かべる。

伊豆奈は「うん」と笑顔になりながら私を見る。

私達はそのまま家に帰宅した。

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