第21幕

朝日に合わせて、海辺を見下ろす管制塔から、歌声が聞こえた。

そんな陽気な歌唄いの管制官とは、裏腹な気分でまだ寒い砂浜を歩く。

コートのポケットの中には、古ぼけた写真が一枚。

その裏側に、1989年、春と、掠れた文字が書かれていた。

大半は消えてしまった当時の記憶を辿りながら、宛もなく歩く。


beautiful my worldと、誰かが言っていた気がした。

そんな言葉とは、真逆のlack lifeを歩いている。

欠落こそが美しいなどといった言葉を思い出した。

全くその通りだと思っている自分に、思わず苦笑いを零す。


何だか、今日はどうもおかしい。

日常というのは、単調でありながら、特別なのだろう。

常に、happy birthdayだ。

そんな事を思っている内に、朝日が眩しくなる。

目眩さえ起こすその光の射す方へ、ゆっくりと足を向ける。

こうやって、今年最初の休日を過ごしていく。



歌唄いの管制官

1989年、春

beautiful my world

lack life

happy birthday

光の射す方へ

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