第20幕

今年の残りの月日を数えてみる。

気が付けば、いつの間にか、年の瀬が迫ってきていた。

どこからか、countdownの鐘の音が聞こえてくる気がした。


一台の車が、閑散とした通りを、猛スピードで走り抜けて行った。

一見すれば、危ういとしか言いようがないそれは、私にとっては自由そのもので、羨ましさすら抱く程だった。

Driving Liveなんて言葉が似合いそうだ。


日常に磨耗したCrazy Manが、私の側を通り過ぎた。

その横顔は、狂気なのか、正気なのか、分からなかった。

恐らく、どちらも正解で、どちらも間違いなのだろう。


部屋の片隅には、未だに後ろ向きに置かれたキャンパスがある。

思いついた空想を、狂ったように、ひたすら描き殴っていたそれは、未完成のまま、捨てる事も出来なくなった。

側には、折れた絵筆とパレットが落ちている。

絵の具が混ざり合った狂想パレットが、私を責め始める。

そんなものから逃げるようにして、駅に着いた。

宇都宮線の下り電車を見送る。

電車は私を置いて、次の駅へと向かった。

警鐘音が響く。

遮断機に隔てられた線路は、別世界のように見えた。

この線路を辿って行けば、何処へでも行ける。

そんな錯覚さえ起こしそうだった。



countdown

Driving Live

Crazy Man

狂想パレット

宇都宮線

遮断機

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る