02 温泉旅館の心スポ
ある日から視えるようになった。それは、良くも悪くも、思い出に強く残る者だった。別に、望んだわけじゃないんだけど。
「よーし、お前ら土曜日、ちゃんと覚えとけよ〜」
今週末の土曜、なんとみんなで旅行に行こうと言い出したのだ。とはいえなにもなく過ぎるのもつまらない。興味ない風を装ってるけど、実は委員長に感謝してる。校庭ではもう、遊べないのかな。いつものようにやつらと走り回ったものだ。中学生でも二年生ならまだいいでしょう。…そんなことを窓から覗きながらよく考える。けどそうやって思い出に浸るのすら、れいのやつに邪魔される。
お、驚いてつい大声を出すところだった、目の前にいきなり現れるなよなあ。
「お前、今週末あそこいくんだってな?」
「そうだけど」
「じゃあついてってやろう、勿論脅かすためだがな」
なんてことだ。せっかくの思い出すらこんな野郎のせいで無駄に?というか、あそこって俗に言う心霊スポットでもあるじゃないか!いやまあ、知ってる霊がいるだけでだいぶやすらぐ…けど!そんな事されたい人間、誰がいるかあ!!
週末、みんなで行こうとなっていた旅館に来た。ひとクラス分、30人となれば団体になるので割引がはいるとのこと。子供たちだけで、ちょっとした校外学習に来た気分だ。あれこれ規制されないのはいいが、やっぱりそこを狙っていつもの男らが騒ぎ立てる。
「なー、ここでるんだって」
「え、なになに!?」
「ゆーれいだよ、肝試しだろ!」
「うおおお!」
…馬鹿だな、ろくでもないやつしかいないだろうに。私はこのまま寝る、面倒事に巻き込まれる筋合いはないしね。
「まさか、ついていくんじゃないよな?」
「ひやあ!?」
び、びっくりした…そうだ、こいつも着いてきたんだ。部屋に一人でいるところを狙ってこいつはいつも、いきなり話しかけてくる。友達がいるときよりはマシなんだろうけど。
「い、いやあまさか、行かないよ。もう眠いし、、、私は寝るよ」
そう言うと、煩い男子共が部屋に割入っては誘ってきた。
「なあ莉菜も来ないかぁ?これから心霊スポット行くんだけどさあ」
「見てのとおりこれから寝るんだけど?あってか由紀ちゃん知らない?温泉入ってから帰ってきてなくて」
そう、かれこれ2時間は一人。何か知ってないかと彼らにしびれを切らして問う。
「あーそいつなら、あがってしばらくしたら一緒に行くことになったぞ?お前も行くか?」
「うぇー…仕方ないや、顔洗ったら行くよぉ」
「おけ!」
なんていうことだ。ルームメイトを餌にされた気分だった。人が多ければなにも起きないわけでもなさそうなのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます