第13話 彼女はいないの? お母さん!

「そういえば、聞き忘れてたけど、あなた、いい人はいないの?」


「いい人よ、いい人! なんでわからないかなー! 彼女ってこと、かーのーじょ!」


「お母さんね、夢があるの。息子の彼女と一緒にイオンに行ってお買い物するのが夢なのよ。『お母さん、お揃いの洋服買いません?』ってね。『あら、若い子と同じ服を着たら、若作りしてるって思われないかしら?』って言うのよ。そしたら、あなたが『何言ってるんですか、お母さん! まだまだ現役のナイスバディじゃないですか!』って言って、『あらっ! 嬉しいこと言ってくれるじゃない!』みたいな!」


「どうしてお母さんが話してるのに、YouTube見始めるのよ!」


「で? 実際どうなの?」


「……いないのね……ん? いるにはいる? あらっ! なになにー? 職場にでも気になる人ができたのー? お母さんに教えてよー」


「どんな人? ねーねー、なんで背中向けちゃうのよー、教えてよー」


「ヒントだけ! ねっ!」


「小さくて……ふんふん……口うるさい? ふーん……お母さんとは真逆な人ね」


「何にせよ、気になる人がいるなら全力でアタックよ! アタック! 恋はね、何も言わずに諦めるのが一番ダメなんだから!」


「アタックする勇気がない? そんなこと言ってると、チャンスを逃しちゃうわよ! まずは、何かちょっとしたきっかけを作るの。たとえば、一緒にランチに行かない? とか、簡単なことから始めるのよ」


「初めてのことにはみんな緊張するわ。でも、勇気を出して一歩踏み出すことが大事なの。だって、もしその人があなたのことを待っていたら? それを知らないまま終わらせるなんて、もったいないじゃない」


「そして、もしその人が断ってきたら? それも仕方ないわ。でもね、それで終わりじゃないの。次の機会がまた来るわよ。恋愛ってそういうものなの」


「結果がどうであれ、アタックしたらお母さんにはちゃんと報告するのよ? これ約束ね」


「……何? 次の休みにご飯食べに行かないかって? いいけど? 」

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