第10話 職場見学だよっ! お母さん!

「……このスーパーね……っよし」


入店音(SE)


「完全な変装もしてきたし、絶対にバレないはずだわ。かなり広いわね。どこにいるのかしら?」


「あっ! いたいた! 品出ししてるみたいだわ……見つからないように店の陰から観察しないと……」


「なに? 遅いわね……横に置いてあるカゴから商品を出したけど、どこの棚の商品かわからないのかしら……あんなにキョロキョロしてたら、周りのお客さんが困っちゃうじゃない」


「初日なんだから、恥ずかしがらずに近くにいる店員さんに聞くのが一番なんだけど……」


「ちがっ! よく見たら手に持ってるの、レトルト食品じゃない! 今いるの、お菓子コーナーよ!! そこに置ける場所があるはずないじゃないのよ!」


「見てるだけでモヤモヤするわね……でも我慢よ、私……ここで手伝ったらあの子のためにならないもの……」


「そう! それはお菓子の棚じゃないのよ! よくわかったわね! お菓子コーナーに置くのは……そう! お菓子コーナーはお菓子を置くコーナーなの!!!」


ポンポンッ・肩を叩かれる音(SE)


「はいっ! 何ですか!? え? 私?? 迷子じゃないです! え? サングラスしてマスクつけた小さな子がブツブツ言ってるってお客さんから言われたんですって!? 失礼な! こう見えても私は立派なお母さんです! はっ!」


「いっ……いつの間に後ろにいたの……ぐっ、偶然ね! お母さん、このスーパーに買い物に来てたのよ! はいっ! 私、この子のお母さんです! ねっ! 何で返事の歯切れが悪いのよ!」


「あらっ! この店の店長さんでしたかっ! 息子がこれからお世話になりますので、どうかビシバシしごいてあげてください! それじゃあ私はこれで……」


ビューン・走り去る音(SE)


退店音(SE)


「ふぅ……バレちゃったけど、働いてるところが見れて良かったわ。でも今度はもっと上手く隠れないといけないわね……あんなに頑張ってるから、今日帰ってきたら相当疲れてるかもしれないから、美味しいもの作ってあげないとね!」


「お仕事初日……頑張るんだぞ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る