3

 部族の中でのシルファの役目は、巫子である。

 巫子の一番の役目は、神へ部族の者達のために豊かな恵みと平穏を願い、祈ることだ。

 だがそれ以外にも役目はある。

「シルファ、いるか?」

 セアドと川で出会った日から、何日か経ったこの日、シルファが住居の外で、魚を石で作った道具でさばいていると、反対側の方から、名を呼ばれた。

「スレイ?」

 その声の主の名を呼ぶと、「ああ、そっちにいたのか」と、部族の男が現れた。

 シルファやヤヌスよりも、さらに先に生まれた者である彼は、三人の子の父親でもあった。

「薬草を取りにきたんだ」

「もしかして、熱冷ましの?」

「ああ。この間、ネーヤの体が熱を持った時に使い切ってな。もしよかったら、分けて欲しいんだが」

「いいよ。もっと早く言ってくれても良かったのに」

 そう言って、シルファは立ち上がった。

「まあ、湖畔の部族との狩りとかで、忙しそうにしていたからな、お前も」

「そんなのは気にしないで。薬草集めは、巫子の役目だよ」

 シルファはそう言うと、住居の中に入った。

 巫子のもう一つの役目が、自然の中にある薬草を集めることだった。

 神に仕える者として、部族の者達のために癒しを施すのだ。

 シルファは天井からつるしている何種類かの薬草の中から、熱を冷ます効能がある薬草を外した。それを持って外に出ると、部族の男が、魚をさばくためにシルファが使っていた石を手に持って、しげしげと見ていた。

「お待たせ、スレイ」

 そう声をかけると、

「いいな、これ」

 と、部族の男は、感心したように言った。

「これ、お前が作ったのか?」

「あ、うん」

「魚もきれいにさばけているしな。たいしたもんだ」

「スレイも必要なら、作るよ?」

「それもいいが、作り方を教えてくれ。道具を作っている奴らに作ってもらえば、もっとたくさん作れる」

 シルファ達の部族は、狩りをするのは一応男達の役目ではあるが、ジャスのように年老いた者や、あまり狩りが得意でない者達が、器などの生活に必要な道具や、狩りの道具を作る役目を担っていた。

 湖畔の部族との狩りで使った道具も、作ったのは彼らだ。

「お前は今までの巫子の中でも、一番優れているのかもしれんな。さすが、風の神の加護を受けた者だ」

 そんな言葉を、シルファは微かな笑みで受け止めた。

 幼い頃。

 風の神の加護を受けた者でありながら、身体能力に恵まれなかったシルファは、部族の者達に、「男のくせに」とよく言われた。

 だが亡き父は、『自分のできることを、得意なことを伸ばせ』と繰り返し、シルファに言って聞かせた。

 そして、父の恋人でもあったヤヌスの父は、『お前達が大きくなった頃には、男とか女とか関係なく、それぞれが得意なことを生かして助け合いながらやっていく、そんな部族にしておくからな』と、常々言っていた。

 それが、自分やシルフィを支えてきたのだ。

 そして今、ヤヌスの父が言っていたように、部族では男女関係なく自分の得意なことを生かして、それぞれが助け合って生活してく体勢ができあがってきている。

 だがそれでも。

 自分達のやることには、「神の加護を受けた者」という言葉が付くのだ。

「それよりも、スレイ。はい、これ」

 湧き上がってくる苦い感情ものを抑えながら、シルファは部族の男に薬草を手渡した。

「おお、すまんな」

 笑顔で薬草を受け取った部族の男は、礼を言った。

「そう言えば、シルフィはどうした? いないようだが」

「今日は、ちょっと森に狩りに行くって出て行ったよ」

 狩りは、毎日大掛かりなものを行うわけではない。ちょっとした獲物を捕まえるなら、一人で行くこともよくあった。

 それに、先日獲れたナウイのおかげで、しばらく大掛かりな狩りを行う必要はなかった。

「そうか。俺も、魚を獲りに行かないとな」

「今来てくれて良かったよ。僕もこの魚をさばいたら、出かけるつもりだったから」

「お、そうか」

「今度からは、遠慮せずに言ってよ」

 わかった、と部族の男は頷くと、薬草を片手に戻って行った。

 それを見送ると、シルファは再び座り込んで、魚をさばき始めた。

 とりあえず、さっき感じたものは、頭から追い出すことにした。

                ★

 陽が中天に来た頃、シルファは川沿いを川上の方へと歩いていた。

 しばらくすると、生えていた木々がぱかっとなくなり、生えているのは草ばかりになった。

 ちょうど森が途切れたのだ。

 父達が幼い頃は、まだ森は広かったと言う。

 大火が起こった後、木が育たず、こんなふうに草だけが生えている場所が多くなっていた。

 ただこの場所には、小さいが水が湧き出る泉があるのだ。

 近くには洞窟もあるので、父に成人する前に教えてもらって以来、シルファはよく来るようになっていた。

 父も昔はよくこの辺に来ていて、母と出会ったのもそのせいらしい。

 シルファが泉の方へ歩いていると、遠くの方から、メェーメェーと鳴き声が聞こえてきた。

 鳴き声がする方を見ると、一匹の山羊ハレイが近づいて来るのが見えた。

ジュジュ子ども?」

 シルファが名を呼ぶと、うれしそうにメエーと鳴いて、走って近寄って来た。

「久しぶりだな。元気にしていたか?」

 シルファがそう聞くと、白い体をシルファにすり寄せて来る。

 「子ども」という意味の名を持つこの山羊ハレイは、しかし、その体格は既に子どものものではなかった。

 だが、出会った時は子どもだったのだ。

 ケガをして母親ともはぐれていたジュジュを、偶然泉に来ていたシルファが見つけ、手当てをして洞窟まで運んでやったのだ。

 ジュジュのケガが完治するまで、毎日シルファは洞窟に通い、えさである草を刈って与えた。

 運よく肉食の動物にも見つからず、ジュジュは元気になった。

 それが今から二回前のこの季節で、以来、ジュジュはシルファの姿を泉の近くで見かけると、近寄って来るようになったのだ。

「お前、水飲みに来たのか?」

 ジュジュの頭をかいてやりながらそう聞くと、メェーという返事があった。

「そうか。これから、暑くなるからね。でも、あまり気軽に人間に近づかないようにしないと。場合によっては、狩られてしまうぞ」

「風の巫子殿は、動物ともしゃべれるのか?」

 だが、しかし。ここで、自分とは違う声が聞こえて。

「はいっ⁉」

 シルファは思わず、おもいっきり飛び上がってしまった。

 そして、次の瞬間。

 ざっぱーんと、本当にざっぱーんと、泉の中に落ちてしまう。

「だいじょうぶかっ!?」

 さすがに、これには相手も驚いたらしい。

 焦ったように、シルファに声をかけてきた。

 だが幸い、泉の深さはそんなにない。

 シルファは、すぐにざばっと立ち上がった。

「すまないな。驚かせたか」

 立ち上がったシルファを見つめているのは、黄金の瞳だった。

 その瞳は、あいもかわらず、シルファを、真っ直ぐに見つめてくる。

 メエエーと、その隣にいるジュジュも、心配そうにシルファを見て鳴いた。

「だいじょうぶだよ、ジュジュ」

 手を伸ばし、ジュジュの頭を撫でながら言った。

「……俺には、なしか」

 だがぼそりと呟かれた言葉に「えっ?」と思って、湖畔の部族の男―セアドを、シルファは見た。

「一応、俺も心配したんだが」

「あ、あ、そうですねっ。すいません!」

 ずぶぬれのまま、シルファはそう言って謝った。

 しかし、彼が急に声をかけてきたから、シルファは驚いて泉に落ちたのだ。

 謝る必要があるのかな、とも思ったのだが、何と言うか謝らないといけないような雰囲気なのだ。

 メエーと、ジュジュがそんなシルファの気持ちを代弁するように鳴いた。

「ジュジュ、お前はもうお行き。狩り人に見つかったらいけないから」

 だがこのシルファの言葉には、嫌そうにメエーと鳴く。

「そうだな、行った方がいい」

 そのジュジュの隣にいたセアドも、そう言った。

 その時、遠くの方から、子山羊ハレイがメエーメエーと鳴く声が聞こえてきたのだ。

「あれは、子が親を呼んでいる時の鳴き声だ。行ってやった方がいいぞ」

 そう言ったセアドを、ジュジュはじっと見つめていたが、「早く行っておあげ」というシルファの言葉を聞いて、決めたようだった。

 メエーと一声鳴くと、子山羊ハレイのいる方へ走り出した。

「もう、子どもではないようだが」

「あ、ケガをしていたのを見つけた時は、子どもだったから……」

 そうして。

 とたんに、シルファは気付いたのだ。

 このセアドと、この場で、二人っきりになってしまったという事実に。

 ジュジュを先に行かせたのは、狩り人でもあるこの男がいるということは、他にも狩り人がいるかもしれない、と思ってのことだった。

 その後のことまでは、自分はまったく考えていなかったのだ。

 正直、ど、どうすればっと、思った。

 どうも、自分とこの男は相性がよろしくないようなのだ。

「早く上がったら、どうだ」

 と、その時だった。あいかわらず表情を変えず、淡々とした口調で、セアドが言った。

「体を冷やすぞ」

「そ、そうですね」

 シルファはセアドの言葉に頷きつつも、固まってしまっていた。

 何をしても、何らかのヘマを、この男の前ではしそうな気がしてならなかったのだ。

 俯いて、泉から出てこないシルファをどう思ったのか、セアドはしばらく黙っていたが、やがて、ざばざばと泉の中に入ってきた。

 そうして、シルファの手を取ると、そのままざばざばと戻って、シルファを泉から引っ張りあげた。

「あ、あのっ……」

 焦ってシルファが声をかけようとすると。

「こっちに洞窟があるだろう?」

 そう、男は答えた。

「あ、はい」

 シルファは驚いて、セアドにわかるように洞窟の方向を指で示す。

「洞窟で脱いで、服を乾かした方が良いだろう。行くぞ」

「あ、あの……」

 セアドの言っていることは、もっともなことで。シルファのことを気遣っているのはわかるのだが、洞窟の中は、あまり見られたくなかった。

「すごいな、これは……」

 けれど。

 洞窟の中に入ったセアドは、感心したように呟いた。

 実は洞窟の中には、シルファが置いた色々な物があるのだ。

 それは、使えそうな木の枝だったり、形の良い石だったり、粘りのある土を水と混ぜて平にして乾かした板に、季節ごとの日の動きや、見つけた植物の絵を描いたりしているのだ。

 これは、覚えるだけでは心もとないこともあるから、粘土板に刻んでいるのだ。

「これは、全部お前が集めたものだな?」

「あ、はい」

 所狭しと置かれた物達を見て、笑顔になった。

「相変わらず、好奇心が強いな」

 そして、嬉しそうにそう言われた。

 その言葉に。シルファは、え?となった。

 セアドは、どうやらこの洞窟のことは知っているようだった。

 でも、この洞窟のことを知っているのは、森の部族でもシルファとシルフィぐらいしかいない。

 それなのに、湖畔の部族のセアドは知っていて。まるで、シルファのことを前から知っているような―。

「これは、何のために集めているんだ?」

 けれど。そこまで考え込んだシルファの思考は、入口の近くに置いた、白い部分がある石を見て、尋ねて来たセアドの言葉に、断ち切られた。

「あ、それは白い部分が舐めると舌がひりひりするんだですが、砕いて肉を漬けると、長持ちするようになるんです」

「なるほど……」

 シルファの説明に、セアドは感心したように頷いた。

「すごいな」

 その後には、当然のように「さすが風の神の巫子だな」という言葉が出てくると思っていた。

 けれど。

「どうして、そんなことが思いつけたんだ」

 と、セアドはそんなふうに言葉を続けた。

 それは。

 今までにない反応だった。

「えっと……」

 だから。

 すぐに言葉を返すことができなかった。

 それでも、言葉を返そうとしたが、くしゃんと、くしゃみをしてしまう。

 それを見たセアドは、シルファに近づいて、いきなりシルファが腰に巻いている草のつるを外したのだ。

「えっ?」

 シルファがはっとした時には、衣の下の部分が手で握られていて、

「手を上げろ」

 と言われてしまった。

「えっ? えっ?」

「いいから、上げろ」

 強い口調でそう言われて、シルファは思わず手を上げてしまった。

 セアドは、手早くシルファが着ていた衣を脱がせてしまった。

 そうして、ばさっばさっと、濡れた衣の水を軽く飛ばすと、そのままそれを洞窟の入口近くの岩肌にの広げて置いた。

 その間、まる裸にされたシルファは、まさにどうしよう、状態だった。

 いや、もちろんセアドに他意がないことはわかっている。自分が女だったのならば問題ありかもしれないが、巫子とは言え、まかりなりにも男なのである。

 だが、しかし。

 そんな至極真っ当なことを頭で考えているにも関わらず、何故か、動けないシルファだった。

「……いつも、そうだな」

 と、その時だった。

 ふいに、セアドがそんなことを言った。

「え……?」

 驚いて顔を上げると、顎を手で取られた。

「何故、俺を見ない?」

 黄金の瞳が、切なげに細められている。

「え?」

 シルファが、そう問い返した瞬間だった。

 自分の体が、洞窟の壁に押し付けられた。

 冷たい岩肌の感触に反して、唇に熱い感触ものがある。

 最初、シルファにはそれが何なのかわからなかった。

 しかし、自分の唇を開いた瞬間、内側に入ってきたものは、自分の舌を絡めとり、逃げることを許さなかった。

 目を開けることもできず、息をするのもままならない。

「ん……ん……」

 息苦しさを感じ始めた頃、ようやく唇が離される。

 だが、それも一瞬のことだった。

 またしても、シルファの唇はセアドのそれに塞がれたのだ。

 その行為の意味するところは、知らないわけではなかった。

 父達が、物陰に隠れてやっていたのを見たこともある。

 わからないのは、その行為の意味ではなく、何故この男が自分にするのか、だ。

 そうして。

 どうしてその行為を、自分は素直に受け入れているのか。

「……逃げないのか?」

 息も絶え絶えになった頃、唇を離し、その低音の声で、セアドは問うようにシルファの耳元に囁いた。

 セアドの言う通りであった。シルファが逃げようと思うのであれば、風と「同化」することも、双子の姉に助けを求めることも、できるのだ。

 否。

 たとえそこまでしなくても、こうやって自分に触れてくる男の手を拒絶することなら、今すぐにでもできる。

 だがそれを、自分はしようとは思わないのだ。それは、何故なのか。

「!?」

 だがその答えを出す前に、シルファの思考は途切れた。

 シルファの体の線をなぞっていた男の手が、片方の胸の飾りに触れたのだ。

 それは最初、ひっかくように触れて来た。

 とたんに、シルファの体が、びくりと動く。

 だんだんと強く押さえられ、もみこまれるように動かされる。

「やっ……やっ……」

 そのうち、その動きも速くなり、シルファの体の震えもじょじょに止まらなくなっていく。

「やっ……な……に……?」

 男の片手に肩を抱かれ、支えられた体の下半身がだんだん熱くなっていくのがわかる。

「あっ…ああっ……!」

 今まで、出したことのないような声が出た。そして、次の瞬間。

「やあんっ」 

 反対側の胸の飾りに、口付けられる。手の動きとは違い、先端をくわえられて、

舌先で軽く触れられた。

 そうして次に、赤子が乳を吸うように、ちゅぱちゅぱと吸われる。

「やあ!? やあ……! なに、これ、な、ああああ!?」

 それは、シルファをさらに混乱させた。感じたことのないが、体中を駆け巡る。

 弄る手と。吸う唇と。

 違う刺激を同時にそれぞれの胸の飾りに与えられ、もう何が何だかわからなくなる。

「あっ……あっ……ああっ!」

 自分が、どんな状態なのか。どんな声を上げているのか。

「やっ……やっ、やっ、あぁ、や、やあああっ……!」

 ただ、体の熱が、一気に自分の体の外へと開放されたことは、確かなことだった。


                 ★

 パチッと、という音が聞こえた。

 うっすらと目を開けると、炎と同じ色をした長い髪が、風で揺らめいているのが見えた。

 火の前に立ったセアドは、何かを手に持っているらしく、それを火に当てているようだった。

 シルファが、ぼんやりとその後ろ姿を見つめていると、視線に気付いたのか、セアドが振り返った。

「目が覚めたのか」

 そうして、そう言いながら、シルファの衣を片手に近寄ってくる。

 無意識のうちに起き上がろうとしたシルファの体に、男はふわりと衣をかけた。

 その時初めて、シルファは自分が一糸まとわぬ姿でいることに気付いた。それと同時に、この男にされたことを思い出す。そして、自分がさらした醜態も。

 上半身を起こしたシルファは、かあっと顔を赤らめて、衣を握りしめたまま俯いてしまった。

「……いつも、ここに来るのか?」

 そんなシルファの髪を、男は一筋掴みながら聞いた。

「ここ……?」

「洞窟に、色々おいてあったからな。火を起こすために、少し木の枝をもらったぞ」

 それは、何かの道具を作ろうと、シルファが少しずつ森から運んだものだった。

 下を見ると、柔らかい草地だった。どうやら洞窟近くのこの草地に、セアドが運んで寝かせてくれたらしい。

「俺に会いたくないのならば、しばらくここには来るな」

 片膝を地面につけ、視線をシルファに合わせたセアドは、そう言った。

「え……?」

「お前に会えば、俺はまた同じことをする」

 一筋取られた髪に、口付けをされた。シルファは大きく目を見開く。

「それが嫌なら、ここにはしばらく来るな」

 そう言うと、セアドは立ち上がり、シルファに背を向けた。

「あっ」

 とっさに呼び止めようとしたが、男は振り返ることはせずに、火の方へと歩いて行ってしまった。そうして、火の始末をして。持っていた弓を持つと、そのまま森の方へと歩いて行った。

 そう。一度も、シルファの方を見ないまま。

                 ★

 それなのに。

 そう、それなのに。

「あっ……あっ……」

 次の日。

 男は、洞窟にいるシルファを見たとたん、その手を伸ばし、求めてきた。

 話す間もなく、唇を塞がれ、洞窟の岩肌に体を押し付けられる。

 舌を執拗に吸われ、絡められて、頭が真っ白になった。

「あっ……ああっ!」

 そうして唇を重ねている間にも、シルファは、知らない刺激を、男から与えられ続けた。

 シルファの両肩に手をかけ、岩肌にその体を押し付けていたセアドは、足を曲げて、膝でシルファの一番弱くて敏感な部分を、刺激していた。

「や、やめ……」

 唇が離れ、シルファは、自分を攻め立てる男の腕に、すがりつきながら言った。 

 だが、その行為は続けられる。

「警告は、した」

 そしてその言葉と共に、強く刺激が与えられた。

「やあっ!」

「それなのに、お前はここに来た―何故だ?」

 問うように、言われる言葉。

 何故、ここに来たのか。

 それは、知りたかったからだ。

 何故この男が、このような行為をするのか。

 そして何故、自分はこの男のされるがまま、その行為を受け入れてしまったのか。

 前の日。

 セアドが自分の方を振り返らずに、森の方に歩いて行ってしまったのを見て、その背中を見送ることしかできなかった自分が、とても哀しかった。

 そして、陽が落ちる前に住居に戻り、自分が戻るのを待っていたシルフィと共に、火を起こして、食事をした。

 それは、父が生きていた頃から、そして父が亡くなった後も、やってきたことだった。

 自分は、一人ではない。

 それは、わかっている。

 共に生まれ、宿命も分かち合った双子の姉も、「人」として接してくれる、家族同然の人達も傍にいる。

 それなのに。

 「寂しい」と、「哀しい」と感じる自分がいるのだ。

 どこかに一人ぼっちで残されたような感覚がある。

 それは、何故なのか。

 行かないで、と。

 そう叫びたい自分がいた。

 だから、シルファはまた来たのだ。

 この男に触れられるかも知れない、と思うことよりも、もう、自分の方に振り向いてくれないのかもしれない、と思う方がつらかった。

 でも、それは何故なのか。

「あああっ!」

 まとまらない考えこたえは、男が連続で与えてくる刺激に乱され、さらに拡散した。

 そうして、またしてもセアドが唇を重ねてくる。

 シルファは、もう、何がなんだかわからなかった。

 ただ、気付いたら、立っていたはずの自分は、岩肌に背を預け、洞窟の地面の上に座り込んでいた。

 そうして、まとっていたはずの衣も、いつの間にか脱がされていた。

 熱くなった体に、ひんやりとした岩肌の感触がある。

 だが、それも男に胸の飾りにしゃぶりつかれた瞬間、吹き飛んだ。

「やっ……あっ……ああ!」

 ちゃぷちゃぷと前の日と同じように、赤子のごとく吸われ、シルファは体を振るわせた。

「どうして欲しい?」

 そしてセアドは、耳元で、そんなことを囁いた。

「な…に……?」

 目を開けると、黄金の瞳を細めて、自分を見ている。

「知らないのか?」

 「なに……」を、と言う言葉は、続かなかった。

 ぐいっと、セアドは座り込んだシルファの両足を持って、大きく広げたのだ。

 そうして、そのまま熱を持ち立ち上がったものを、口に銜えた。

「やあああんっ!」

 それは、とても生温かく、濡れた感触だった。

 今まで感じたこともない強烈な何かが、体中を駆け巡っていく。

「あっ、あっ、ああっ!」

 ぴちゃぴちゃと吸われている音が、はっきりと聞こえる。

 そうして、その音が続けば続くほど、体の熱が、銜えられた部分に集まってくるのだ。

「もうっ……あっ、もう……!」

 何が「もう」なのか、言っているシルファにもわからなかった。

 だが、男が強く唇で刺激を与えた瞬間、シルファの感じていた熱は、放出された。

「あっあっあ!」 

 体が、びくりびくりと反り、動きが止まらない。

 だがそれでも、セアドはシルファのそこから唇を離さない。

 それは、熱の放出が収まってからも、そうだった。

 ちゅぱちゅぱと唇で刺激を与えられ、舌先でなぞられて、またしても体中の熱が、そこに集まってくる。

「あっ……いやっ、いやっ、また……」

 来る。

 きてしまう。

 自分の知らない何かが。

 だけど、とても強烈な何かが。

 だがそれも、もう少しで解放されると思った瞬間。

 今度は、ぐいっと、それは塞き止められた。

「!?」

 そうして、今度は有り得ない場所に、濡れた感触を感じた。

「やっ、やああん!」

 ちゅぱちゅぱと、自分でもめったに触らない場所に、舌が這わされたのだ。

 最初、それは軽く入口を舐めているだけだったが、舌を尖らせて、シルファの内側にも入ってきた。

「あっ、あっ、あああ……!」

 自身を含まれた時とはまた違った感覚が、シルファを刺激する。

 それと同時に、根元を抑えられた部分が、どっくんとなったことがわかった。

「あっ、あ……もう、もう……」

 解放されない熱は、新たなる熱を加えられ、シルファの体を焼いていく。

 止めてくれと言いたいのに、言葉が出ない。

 逆に、さらにそこを強く舌で刺激されてしまった。

「ああぁん!……あっ、あっ、ああっ!」

 その責め方は、容赦がなかった。

 シルファはもう、男のすることを受け入れ、喘ぎ続けるしかない。

「……名前を呼べ」

 どのくらい喘がされたのか。

 もう何もかも真っ白になった頃、耳元にそう囁かれた。

「セアド、と。そうすれば、お前が欲しいモノを与えてやる」

「セ……アド……?」

 考える力がもう残っていないシルファは、ただ、セアドの言った言葉を繰り返した。

「―もう一度だ」

「セ……アド……ああっ!? ああ、あっあああ……!」

 気が付いた時は、またしても、生温かく湿った感触を、敏感な熱を持った部分に感じた。

 根元を握り閉めていた手が離され、唇で強く吸われ、それは解放された。

 そして、その瞬間、またしてもシルファは意識を失った。


                    ★

 チャプンと、水音がした。

 それから、背中にチャプンチャプンと、水がかけられていることを感じた。

 うっすらと目を開けると、泉の水面に浮かぶ、炎と同じ色の髪が、男の肩越しに見えた。

 ぼんやりとした意識のまま、身じろぎすると、

「動くな」

 と、耳元で、低音の声に言われた。

「セア……ド?」

 おずおずと名を呼ぶと、

「何だ?」

 あいもかわらず淡々とした口調で、セアドがそう聞いてきた。

「何を……しているんですか?」

「背中を洗っている」

 そして、あいもかわらずの、短い返事をする男である。

 あのまま、求められて体を開かれたのだ。

 多分、自分の背中は汚れてしまったのだろう。

 体もだるかったので、シルファは男にされるがまま、背中を清められた。

 チャプンという水の音と、男が自分の背を撫でる動きを感じながら、シルファは問うた。

「どうして……あんなことしたんですか?」

「あんなこと?」

 対する男の返事は、淡々としていた。

「……あんなこと、です」

 本来ならば、恋人同士や夫婦となった者同士がする行為だ。

 だが、自分とこの男では、そのどちらも当てはまらない。

「じゃあ、俺も聞くが」

 そう言って、シルファの背をなぞっていた手が止まった。

「お前は、何故、ここに来た?」

「それは……」

 それは、「寂しい」と思ったからだ。

 昨日。セアドが自分から離れていく背中を見送って、心の底から「寂しい」と、シルファは思った。

 だから。ここに来た。

 何をされるかも、わかっていて。

 でも。

 それを、どう言葉にすれば良いのか、シルファにはわからなかった。

「やあっ!?」

 と、その時だった。

 何かが、シルファの内側に入り込んできた。そのまま、内側で動き出す。

「あっ、あっ、あっ」

 細いそれは、シルファの内側を、行ったり来たりしている。

 感じたことのない異物感に、シルファはセアドの肩を、とっさにつかんだ。

「俺に、こんなことをされるのが嫌なら、来るなと言ったのに」

 とたんに、強く刺激されたところがあった。

「やぁああん!」

 その瞬間、濡れた声が出た。

 それは、先ほどまで感じていた異物感を、吹き飛ばす程強烈だった。

「どうして、お前は来たんだ?」

 そうセアドは聞いてきたが、執拗にその部分を刺激されているシルファは、それどころではない。

「あっ、あっ、あああ!」

 男の問いの意味も理解できず、答えることもできず、男の腕の中で、ただ喘ぐしかなかった。

 チャブンチャブンと、シルファの体が動くたびに、泉の水面が揺らめく。

そのうち、その部分を刺激するのとは別に、他にも自分の内側で動くものが入り込んでくる。

 これも、とても細いものだった。

「や、や、な、やあああ!」

 解放したはずの熱が、またしても体の中心に集まってくる。

 水につかっているはずの下半身が、熱くなってくる。

「気持ちいいか?」

 シルファを惑乱させる男が、熱を持った声でそう言った。

「あっ、あっ、ああっ……!」

 だが、何を言われているのか理解できないシルファは、ただ、首を振るしかない。

「俺の、名を呼べ。欲しいモノをやる」

 セアド、だ。耳元で、男は囁いた。

「セ、セ、アド……ああ、セ、セアド……!」

 無意識の内に、シルファは男の名を呼び、その首に手を伸ばし、強くすがりついた。

 セアドはそんなシルファのあごを片手で取り、上を受けさせて、唇を重ねて来た。

「あっ……ん、ん、ん……」

 舌が絡み、強く吸われる。

 その間もシルファの内側に入り込んだ、セアドの二本の指は、シルファが一番敏感に感じる場所を同時に刺激してくる。

「んっ、んっ、んっんっんっ……!」

 上の内側を刺激する舌と。下の内側を刺激する指と。

 前の日よりも、さらに強い快楽が、シルファを惑乱させる。

「あ、あ、あ!」

 唇が離れても、また重ねられて、舌を絡められた。

 その舌も、逃げることは許されなかった。

「んっ、んっ、んん、んんんんん!」

 そして、解放された時のシルファの喘ぎは、男の唇の中にすべて飲み込まれてしまう。

 それでも、セアドは、シルファの内側を蹂躙する指の動きを止めなかった。

「あ、あ、あああ……!」 

 果てのない快楽の波に、シルファはただ、男の腕の中で、喘ぎ続けるしかない。

「―もう、逃げられないのに」

 だから。

 そんなシルファを見つめながら、セアドが呟いたことには、気付かなかった。


               ★★★

 ぐったりとした体は、思った以上に軽かった。

「あの……」

 抱き上げられた本人は、何か言いたげにしていたが、かまいはしなかった。

 持っていた弓を肩にかけ、力が抜けて歩けない体を抱き上げ、歩いた。

 さんざん喘がせたせいか、行為を終えた時、シルファはぐったりとしていた。

 改めて体を清めて、しばらく寝かせていたが、体が乾いた頃になっても、動きが緩慢で歩くのもやっとのようだったので、セアドは彼を抱き上げて、集落の近くまで送ることにしたのだ。

 抱き上げようとした時、シルファは、「いいですからっ」と焦っていたが、セアドにしてみれば、全然良くなかった。

 本人はまったくわかっていないが、今、彼はとても、いや、かなり危うい雰囲気を纏っている。

 それは、セアドが思っていた以上だった。

 幼い頃は、あんなにあどけなかったと言うのに。

 前の日に、セアドにあの行為をしたのは、思い余ってのことだった。

 本当は、山羊ハレイと楽しそうに話しているシルファを、たまたまあのなつかしい場所を通りかかった時に見かけて、声をかけるだけのつもりでいたのだ。

 だが、あまりにもぎこちない態度で接してくるシルファを見て、何とも言えない苛立ちを感じてしまった。

 ヤヌスやシルフィと共にいる時は、あの穏やかな笑顔を見せるくせに、自分を前にすると、とたんにぎこちなくなる。 

 別れていた時間が長く、しかも最後に会った時、シルファもシルフィもまだ幼かったから、自分達のことを覚えていないのは無理もない。

 それに、再会した時、自分のことを覚えていないシルファに苛立ち、彼を傷つけるようなことを言ってしまったから、避けられても、それはある意味仕方がないのかもしれない。

 だが、思い出の場所であのような態度をとられるのは、さすがにつらかった。

 成長したシルファ達を見て、自分はとてもうれしかったのに。……ずっと、待っていたのだ。再び、彼に会うことを。

 だから。

 今までの思いが爆発した。

 どうせ、ヤヌスと体を重ねているだろうから、という思いもあった。

 しかし、前の日に、軽い前戯をしてわかったのは、シルファが恐ろしいほど、この手のことにはうとい、ということだった。

 体の反応は、セアドが驚くほど感じやすかった。

 前の飾りを刺激しただけで、感じていた。

 だが、それが「快感」だと言うことを、シルファはわかっていなかったのだ。

 本当は、あの時にもあれ以上のことはしたかったのだが、意識を失ったシルファにさすがに無理なことはできず、自分の欲望を抑え込んだのだ。

 それに、もうこれでシルファとは会えないだろうという、そんなことを、苦い後悔と共に思っていた。

 だが、シルファはまたしても、あの洞窟に来ていた。

 自分が、あんなことをしたのにもかかわず、である。ルファを見た瞬間、もうセアドは自分を抑えることはできなかった。

 もし、本当にヤヌスと体を重ねているのであれば、その体の記憶を塗り替えるつもりで、シルファを抱いた。

 シルファの体は、おそろしいほど感じやすく、そしておそろしいほど、覚えが良かった。

 前の日にと同じように唇を重ねて、舌を絡ませることで感じた快感を、体はすぐに思い出したのだろう。

 それだけで、シルファの体は感じ始めていた。

 さらに、体の中心を少し刺激しただけで、己をなくすほど、快感に奔走されていた。

 だがそれでも、本人はその快感の解放の仕方も、また、それが「快感」だということも、わかっていなかったのだ。

 そこから考えられることは、一つしかなかった。

 ならば、と。意識を失ったシルファを泉に運びながら、セアドは思ったのだ。

 もう、自分はあの頃の少年ではない。

 共にいたいと思った者と引き裂かれ、大人しく従うしかなかった、あの時とは違う。

 欲しい者は、欲しいと。

 手を伸ばし、逃げられぬようにすることは、できるはずだった。

 それが、どんな卑怯な手段であろうとも。

 シルファが快感に弱い体を持っているのならば、そこから陥落させていけばいいのだ。

 セアドは、部族の女性と、体を重ねたことはあったが、シルファほど感じやすい体を持った人間は、初めてだった。

 だから。

 その手始めに、内側で感じることを、覚えさせた。

 体や体の中心を刺激するよりも、はるかに強い快感を、シルファはこれで覚えたはずだった。

 ならば、次に教えることは。

「あの……もう、歩けますから」

 と、その時だった。

 シルファがおずおずと言った感じで、話しかけてきた。

「しゃべるな」

 それに対し、セアドは短く答える。

「でも……」

 居心地が悪そうに、体が動かされる。

 それ以上何か言いそうな唇を、セアドはシルファを抱き上げたまま、塞いだ。

 そうして、すぐに内側に舌を入れて、逃げようとする舌を絡ませる。

「ん、ん、んんんっ……」

 覚えの良い体は、すぐさま快感を拾い出した。

 さらに舌を使って、内側を刺激すると、シルファは、快感に意識が支配されてくる。その時を見計らって、セアドは唇を離した。

 本音を言えば、これ以上のことをしたいのだが、さすがにそれは止めた。

 シルファの部族の人間が通るかもしれないし、何よりも、シルファの体のことを考えれば、これ以上無理強いはできなかった。

 顔を朱色に染めて、自分の腕の中で喘いでいるシルファを見ながら、己の欲望を我慢するのは、正直つらくはあったが……かなり、己の忍耐力が必要ではあったが、仕方なかった。

 それに、これ以上の快感を与えられなかったシルファの体は、今度は、「飢え」を覚え始めるだろう。

 それこそが、次の自分の狙いでもあるのだから、ちょうどいい。

 そんなことを考えながら、セアドが自分を宥めていると、ちょうどシルファの集落近くの場所に来た。

 木々の間からは、水の流れる音が聞こえてくる。

「着いたぞ」

 唇を自分の手で多い、顔を朱色に染めたままのシルファに、セアドはそう声をかけた。

「歩けるか?」

「だ、だいじょうぶです」

 シルファがあわてて自分の腕から降りようとするので、セアドはそのままシルファを立たせる。そして、彼から手を離すと、

「気をつけて帰れ」

 そう、耳元に囁いた。もちろん、これもわざとだ。

 ゆっくりと離れて歩き出そうとすると、「あ、あのっ」と、シルファが声をかけてきた。

 それこそ、顔を朱色に染めて。こんな表情は、本当にあの頃と変わらない。

「また、な」

 シルファの髪を一筋取り、軽く口付けると、セアドは彼に背を向けた。できることならば、シルファを抱きしめ、己の熱情を彼の内側へと叩き込みたかった。でも、それはまだできないのだ。感じやすい体を持っているとはいえ、シルファの体は、まだ快感に慣れきっていない。

「―たらしだなあ、あんた」

 シルファのもの言いたげな視線を背に感じながらも、自分の集落へと川沿いを歩いていたセアドは、しばらく経ってから、そんなふうに後ろから声をかけられた。

「何時から、いた?」

 炎の色をした髪を翻し、振り向きながらセアドは言った。

「お前さん達が唇を重ねている時からなんだが。気付いていなかったのか?」

 ひょうひょうとした口調で、森の部族の長は言った。

 父親とよく似た顔立ちをしている彼は、瞳と髪の色も、父親と同じだった。

「それで?」

 セアドは、森の部族の長を見つめ返しながら言った。

「それでっ?てなあ……」

 土と同じ色の髪をがしがしと掻きながら、あきれたような顔で、彼は自分を見る。

「そこまで堂々とするってことは、本気ってことか?」

 そして、どこかさぐるように言った。

「何が、言いたい?」

「もし、単なる興味本位ならば、あいつに手を出すのは止めてもらいたい」

 だが、そう告げてくる森の部族の長の土色の瞳は、決して笑っていなかった。

「何を根拠に、その言葉を言う?」

「我が部族の巫子と双子である姉の戦士は、傍にいなくても、会話ができる」

「そうだな」

 頷いたセアドに、森の部族の長は、意外そうな顔をした。

 そんな彼に、「それで?」と先を視線で促す。

「その戦士が言った。呼びかけても、返事がなかったと」

「……なるほど」

 それが前の日のことか、さきほどのことかはわからないが、どちらにしろ、自分と体を重ねていた時のシルファには、シルフィの呼びかけは聞こえなかっただろう。

 それぐらい、快感に翻弄されていた。

 「今まで、こんなことはなかったらしいからな。それで一応、俺が様子を見ることにしたんだ」

「ずっと付けていたのか?」

「集落の近くで張っていただけだ。何もなければ、それで良かったからな」

 しかし、自分とシルファは共に現れて、口付けを重ねているのを見て。

「あいつは、確かに俺達の部族の巫子でもあるが、その前に、俺の弟みたいなもんなんだ。あいつの容姿や生まれの言われで、興味本位で手を出すならば、止めてもらいたい」

 その瞬間、セアドが感じたのは、純然たる怒りだった。

 この男が、その言葉を自分に言うのか、と。

「俺達から、あいつらを奪った男の息子に、そんな言葉は言われたくないな」

「何!?」

「あいつらの父親が……シーファがお前の父親を選んだから、俺達はあいつらに会えなくなったんだ」

 セアドの言葉に、森の部族の長は、大きく目を見張った。













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