6また

「ふぅ。しかし今回もあの御二方に断られましたねぇ。」

 河川敷。風が草を撫でて心地よい。

「あ!前の奴!」

 うるさ。面倒な奴が隣に勢いよく座った。その衝撃で前髪がふわっと舞う。

「なんですか。」

「見てこれ!すごいから!」

 何かを手で包んでいる。覗いてみる。

「ぷわっ!」

 水をかけられた。髪と顔が濡れた。

「……。ほんとなんですか。あんたは。」

「ぶはは!引っかかったなぁ?!」

 大袈裟に笑う。使いは冷たく見る。その場を去る。

「待って!待て!ごめんって!ほんとに見せたいのこっち。」

 ぐっと肩をつかれる。

 手の上にはキラキラの石があった。

「……。綺麗ですね。」

「だろ。これ道で拾ったんだ。お前にやるよ。」

 ぐいっと胸元まで石を押される。

「拾った物を私に、ですか。ありがとうございます。」

 取り敢えず受け取った。

 無邪気に笑ってる。何故か鬱陶しい。

「うわ!」

 目が点になっている顔で見つめられる。目の前の奴も顔と髪が濡れていた。

「引っかかりましたね。」

「え……!引っかかったって、なんも。てか!そんな事出来んの。なんも無いとこから水が!」

 使いはもう何処かに歩き始めている。まだ後ろから煩い音がする。

 使いはほのかに笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る