第7話 京都代表【壬生の狼】沖田総司


カッカッカッカッカッカッカッカッ!!


お~っとぉ!京都府チームの控え室で、まな板の上の京野菜たちを、華麗な包丁さばきで刻んでいる女性がいるぞぉ!!!!あの人は誰だぁ!!!!!?

スクリーンが京都府チーム控え室のカメラに切り替えると、友禅染めの艶やかな超高級生地で作られた特注・最上級割烹着姿で、一人の女性が調理をしている。

この女性は!!戦国乱世の始まりとなった悲劇「応仁の乱」の原因と揶揄される、日本三大悪女の一角!!!!!!足利将軍の嫁!!!政治から何まで、口出しまくりの、強欲女帝!!日野富子(ひのとみこ)さんだぁああああああああ!!!!!!!!


「なんや、どえらい紹介してもろうて。うちが代表な訳ではないんで、撮影は堪忍え」


夫である将軍・義政が銀閣寺(ぎんかくじ)造営で金銭的に苦しい中、一切援助をせず、最終的に資産7万貫(約70億円)溜め込んだと言われる、ドケチ、利己主義者のあなたが、なぜ料理なんて!?


「言いすぎですよ太子!」


ああ、ごめん妹子!でもなぜですか富子さーん!?


「あれやねえ、聞きやすい大きな声で、皆さんに褒められますやろ」


恐縮です!でへへ!


「太子!!皮肉言われてますよ!!!」


まじ!?


「うちは、京都府代表をしてくれはる、沖田はんの大フアンなんですよ、京都のために戦ってくれはるゆう人に、うちもなんや協力させてもらえんかぁゆうて、料理のお手伝いに加わっとるんどす」

「ありがとうございます!富子さん」


お!富子に礼を言ったあの青年は!?


「映像をご覧の皆様、こんにちは。私が、新選組一番隊組長、沖田総司です」


沖田総司だああああ!!!!!カメラにキメ顔で挨拶をかましてきたぞおおお!!!!!


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京都代表【壬生の狼】沖田総司。

江戸・幕末の剣豪。「池田屋事件」で名を馳せた、京都守護職・松平容保預かりの人斬り集団「新選組」の一番隊組長。天然理心流剣術を極め、新選組最強と謳われる。結核を患い、24歳の若さで早逝。


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美味いなぁ、やっぱ京料理が一番だ。


インタビューに答え、ファンサービスを終えた沖田は、京都の郷土料理、「白味噌仕立ての雑煮」を啜っていた。この雑煮、本来正月に食べられるものだが、ゲンを担ごうという富子さんのひと声で出してもらったのだ。丸餅(円満と長寿)と頭芋(子孫繁栄・立身出世)、大根(長寿)、更に金時人参(魔除け)も入った、目で見ても美しい一品である。

白味噌は京都発祥。平安時代は貴族の間で食されていたものだとか。そりゃ美味いよね。


おかずに添えられている「しば漬け」、「すぐき漬け」、「千枚漬け」も順に食す。


ショリ、ショリッショリ、ショリィイイイ。


うんうん、気持ちのいい食感だ。酸味もいいね。


最後に「宇治茶」を飲んで、ご馳走様。ぷはぁ~うま。

あ、デザートに頼んだ「宇治金時」!……かき氷は~。


うん、勝ってから食おっかな。


「緊張感のないやつだな」


沖田が声の主を見ようと振り返る。そこに立っていたのは、新選組隊士たち30名余り。


「あら、近藤さん」


声の主、近藤勇は、あきれ顔で頬をかいた。こんなに緊張感のないくせに、死合いとなると、必殺の人斬りに様変わり。末恐ろしい愛弟子よ。


「近藤さんも、東京代表で出るかと思ってましたよ」

「東京は流石に、家康様だよ」

「まぁ、江戸幕府初代将軍ですもんね。でも、土方さんが北海道から出るとは意外でした。別に思い入れないでしょ?」


沖田の一言で、近藤の隣で、腕を組んでいた土方歳三が笑った。


「馬鹿野郎。函館は俺の第二の故郷だ」



ババンッ!!!!!!


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北海道代表【五稜郭の鬼副長】土方歳三

江戸・幕末の剣豪。人斬り集団「新選組」の副長を務め、厳しい法度で、数々の同志を粛清してきた故に、「鬼の副長」と仇名される。戊辰戦争が勃発すると、旧幕府軍側として、薩摩・長州率いる新政府軍と転戦し続けて北上、「蝦夷共和国」を榎本武揚らと共に創り、最期は函館五稜郭で戦死した。


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「京都じゃないんですか?」

「京都は、……ヤな思い出があまりに多すぎる」

「間違いないですね(笑)」

「総司、必ず勝て。決勝で殺し合おう」

「それは無理じゃないですか?土方さん、あんま強くないもん」

「ふっ、函館あっち土方おれは強えぞ?」

そう言って土方は去っていく。ひらひら手を振る沖田に対し、新選組三番隊組長、斎藤一が声をかける。


「総司。岩手代表は、あの源義経だ。伝説の天才に、勝つつもりか?」

「……ふふふ」


沖田は、控え室モニターに映る、岩手代表チームの様子を見た。


「どうだろうね」


ただ。


私が負ける姿を、私が想像できないんだ。


だから。


多分、また、私が勝つんだ。

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サービス精神凄かったですねぇみなさーん!続いて、岩手県チームです!!


中継先の岩手県チーム控え室が映る。


ええええ!!!!岩手の郷土料理、「まめぶ汁」、「どんこ汁」、「そばかっけ」に「へっちょこ団子」!卓上に並んだ椀物を、岩手は花巻・盛岡を起源とする「わんこそば」のリズムで!!武蔵坊弁慶がお代わりを入れ、ハイスピードでバカ食いしている若者がいるぞおおお!!!!あの男はまさか!


ドンドコドコドコドンドコドコドコドン!!!!!!!!!!!!



太鼓の音と共にカメラがズームして寄っていく!

その男こそ、岩手県代表、源義経であった。


――京都の野良犬は、僕が嬲り殺してやるさ。

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~最強の47都道府県決定戦!~武将・大名・将軍・剣豪・軍人・俳人・陰陽師!?偉人だらけの、全日本国民のための英雄代理戦争(ガチンコファイト) ハチシゲヨシイエ @yosytomo

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