第2話 広島代表【毛利両川の武】吉川元春
ジュウウウウウウ~!!!!!!!!
なんと広島県チームの控え室では、鉄板の上で何かを焼いています!!!あれは何だぁ!!!!!?
スクリーンが広島県チーム控え室のカメラに切り替えると、そこでは全長3mの巨大鉄板で「お好み焼き」が焼かれていた。
お好み焼きを美味しそうに焼いているのはなんと!知る人ぞ知る海軍元帥!
1921年(大正10年)のワシントン会議に出席し!!
その人柄と!!巧みな外交手腕で、当初、大日本帝国をあなどっていた外人どもに「世界の危機を明るく照らす偉大なる蝋燭」!「アドミラル・ステイツマン(政治センス最上級の提督)と称された!
第21代内閣総理大臣の加藤友三郎(かとうともさぶろう)首相ではないですかー!!!!!なんで総理自らお好み焼きを!?
「わしは安芸(あき)の出じゃけえの、吉川のお殿様が、わしら広島の為に戦われるんじゃ、なんもせんわけにはいかんわい」
流石です!え?お好み焼きについての補足情報があるんですか!?今から偉人決戦なんですけど?ちょ、アナウンサーのマイク取らないで!
「かたいこと言いなや。これを見とるおどれらは、広島のお好み焼きが「広島焼き」ぃなんて言われとる理由は知っとるか?
ズバリ!関西のお好み焼きとは、作りが違うからじゃけえ!!!!!!!!
関西が具も生地もごちゃまぜにするのに対し!
広島のお好み焼きは、生地の上に野菜や肉といった具を重ねてひっくり返し、生地をフタにして「蒸し焼き」にする!
生地そのもんを食う関西モンとは違うて、広島の生地はいわば脇役。それゆえに味わいも関西モンとでは一線を画す!!
大量のキャベツやもやしを用いることも、広島のすばらs」
「返してください!料理番組じゃないんですから!」
おおっとぉ~!中継アナウンサーの小野妹子(おののいもこ)が取り返してくれました!サンキュー妹子!あれ、そこのテーブルでお食事されているのはまさか!!!!!
中継カメラが鉄板から離れて、豪勢な料理が色鮮やかに並べられているテーブルを映し出す。
ワニ肉と呼ばれる「サメの刺身」、甘ダレのかかったふわふわの「アナゴ飯」、ブツ切りのタコや魚介がふんだんの「水軍鍋」と、どれも広島の誇る郷土料理たち。
そこで湯気が立ちのぼる「カキの土手鍋」をガツガツ食べているのが、広島県代表・吉川元春(きっかわもとはる)だった。
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広島代表【毛利両川の武】吉川元春
戦国時代の名将。「三本の矢」の逸話で有名な、戦国時代最高峰の知将・毛利元就の三人の息子のうちの次男。
父の遺伝子を色濃く受け継ぎ、武芸に秀でていたこともあり、生涯を通じて≪76戦無敗≫を誇る、圧倒的優勝候補の豪傑である。
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毛利元就(オヤジ)は見に来てくれねえのか。
元々広島県民に選ばれたのはうちの親父、毛利元就(もうりもとなり)だった。
そりゃそうだ。
軍略・謀略・政略、どれをとっても一流。一代で国人領主から、芸備防長雲石の六ヶ国を支配する大大名へと成り上がった、中国地方のゴッドファーザー。
生まれる場所が少し違ったら、きっと天下人は親父だったはず。
知名度も、才能も、親父に勝てる気がしねえ。
だけど親父は俺に出ろと言った。
「元春が出て、広島の心意気を全日本人に魅せてやりなさい」
「親父、なんだそれは?」
「わからなかったら、兄や弟を頼りなさい」
そう告げて以来、親父は俺の前に姿を現してはくれない。
俺は親父と違って、そんな知力高くねえから、はっきり言ってくんねえとわかんねえよ!
だが。
土手鍋をペロリと平らげたが、まだまだ貪欲に飯を食う。タコ飯をかっこむ。
仕方ねえ。
悩んだら、食う。満腹になるまで食う。
俺は頭じゃねえ。俺の本質は「毛利両川の武」と言われたことの強靭な肉体と経験だ。
広島が育てた海の幸が、俺の身体の血となり肉となり、何千と敵をかっ食らってきたんだ。
考えるのは、隆景(おとうと)の仕事だ。
俺は敵を、たいらげるだけだ!!!!!!!!!
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カメラに気づかずにずっとご飯モードでしたねぇ~。見届け人の平清盛さん、広島チームについていかがですか?
「なんで俺?まぁ、吉川元春というのは全然知らねえが、広島の厳島神社(いつくしまじんじゃ)はいいとこだからぜひ観光してほしいもんだ。俺が昔、海の上に社殿建ってたらエモくね?って言って、造営させたんだぜ?あれ」
まさか繋がりあったんですね!知らなかったですー!それじゃあ続いて、新潟県チームの控え室を見てみましょう!!!中継の正岡子規さん!!
「はいはーい!」
中継先の新潟県チーム控え室が映ると、坊主頭横顔でおなじみ、正岡子規が興奮した様子でマイクを持っていた。
「並び立つ 雌雄決する 都道府県 今年ばかりと われ思ひけり」
さらっと歌わないでください子規さん!
「ごめんなさい!個人的にはベースボールの試合並みにわくわくしています!」
子規さん野球好きですもんね(笑)
「そーなんです!で、こちらの陣営も半端ないですよ!ご覧ください!」
正岡子規の言葉に合わせてカメラが控え室の中を移すと、そこには!!!
新潟産コシヒカリでおにぎりを握る!!!軍人の姿が!!
また軍人さんが料理してますねぇ!って!あれはただの軍人じゃない!皇族、華族以外で初めて国葬を実施された!日本国民に愛された帝国軍人の中の帝国軍人!大日本帝国海軍の代名詞!連合艦隊司令長官の山本五十六だぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「あまり騒がんでよろしい」
失礼いたしましたっ!しかしなぜ、司令長官みずからおにぎりを?
「まずはやってみせ、言って聞かせてやらんと、うまい握り飯は作れん」
よく見れば、山本五十六に心酔して目がハートマークになってるおばちゃんたちが、並んでおにぎりを握っている。大量の塩むすびが山盛りに。
「新潟を背負って、謙信公がご出陣なさるのだ。下手なものを食わせて、腹を下されてはいかんからな」
なるほどー!おっと!そんな風に仰っている司令長官の手元にあるのは、塩!上杉謙信が、好敵手・武田信玄の領地の塩不足に援助した故事「敵に塩を送る」で有名な、越後の塩ですね!
「うるさい。謙信公の瞑想の邪魔をいたすな」
ごめんなさーい!あれ、じゃああそこにいるのが。
聖徳太子の発見に合わせて、カメラは、瞑想する黒い法衣のサムライが。
――オン ベイシラ マンダヤ ソワカ オン ベイシラ マンダヤ ソワカ
毘沙門天の真言を唱えるこのサムライこそ、東国最強、≪越後の龍≫上杉謙信である。
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