第19話 レンファウ議員に会いに行こう

――なぜ遠回りされているのですか?


12歳の子供と、いびきをかく二人の仲間(虎獣人とドワーフ)を乗せた馬車のなか、ウィズが質問してきた。


「ん?」


――ジュンさんは、マリヤさんへ復讐したいのですよね?なぜ、ヴァイス・ブランコーの復讐の協力をなさろうとしているのですか?


「わからない?お前がくれた情報を基にしているんだけどな」


――「マッチングアプリ」の情報?


俺は、ウィズユーと唱えると、レンファウ・シーワーケルのプロフィールを表示させた。


++++++++++++++++++++++++++++++++++


レンファウ・シーワーケル(41) 法の国ガタチョーナ出身

職業:政治家

159cm

自己紹介文

「ウィズユー」に、貴方様に会いにきました。そしたら、私のプロフィールに会いにきてくれた。まず御礼から申し上げなければいけません。ガタチョーナの、次期政務長官候補、レンファウ・シーワーケルです。ありがとうございます。

ドキドキしながらプロフィールを載せておりますが、ちょっとへこむことがありました。私でもへこむことがあるんです。


それは貴方様が男だと言うことです。


男なんて死ねばいいんです。まじでキモイ死ね絶滅しろ毛深くて臭くていやらしくて見たくもない。男尊女卑のこの世界を変えるためには、ジェンダーバイアス、偏見をなくすか、男か女、どちらかが絶滅するべきなのです。


男でも、女でも、どんな立場の人でも、平等に扱う社会になるわけがない。ならば、殲滅するしかないのです!そう!!!!私は、カリスマ女性尊重主義者フェミニストなのです!

ただ私も馬鹿ではありません。滅ぼしたら子孫が残せない。

そのため、男は子種を精製するだけの棒っきれと認識しております。男主体の世の中を撤廃し、男を、我々女性に隷属する家畜と同等の存在に追いやることが、私の使命である!と、こう思うわけです!(万雷の拍手ありがとうございます!ありがとう!)


その手始めに、私が着手したビジネスが奴隷売買でございます。大手取引先のグチモームス、シャニース、ヨシモルト興業のおかげで、莫大な富を手に入れた私は、そのお金で政治家に成りあがりました!!!


今では奴隷売買にメインではたずさわっておりませんが、大変お世話になったグチモームスさんとは、関連事業を行っているワタヴェ商会に業務委託をし、今でも月に1度、奴隷売買をしております!


性格は思い込んだら周りが見えないタイプでございます!あと、自他ともに認める差別主義者でございます!ここ数年だと、ドワーフが大嫌いです!(5年前、ドワーフに身体を触られたので、罪をでっちあげて逮捕させました!ざまぁ!でございます!www)


好きなものは金と地位と名声、嫌いなものはありすぎます!

固有スキル「2位じゃ駄目なんですか?」(ランク:B)

(相手の任意の能力を大幅に削減、仕分けする)

剣術E 魔法B 知力E 体力E

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「レンファウを使えば、グチモームス領内だけでなく、グチモームス城内にもスムーズに潜入することができる」


――なるほど。そんな考えがおありでしたか。


「ま、あとは最強の仲間の、を勝ち取りたいのもある」


――最強の仲間?


「ブランだよ。こいつは俺が仲間にしたかったSランクの治癒士(ヒーラー)能力持ちだし、引き受けたダメージを敵に押し付けることもできる、チートドワーフだ」


――どのように信頼を勝ち取られるおつもりで?


「”女”だよ」


俺は不敵な笑みを浮かべて、はるか遠く、ガタチョーナにそびえ立つ、政務官塔を仰いだ。


***********************************


「私に会いたい?その子供が?」


レンファウは秘書に声をかけられて首をかしげた。


以前私に助けてもらったことがあるという12歳前後の少年が会いに来たというのだが、私にそんな記憶はない。

しかも男の子だと言う。性別が男の時点で、私が助けるわけがないのだ。


が。


「お礼を言いたいなら言わせてあげましょう」


レンファウはにこやか作り物スマイルで告げた。子供を助けて、お礼に来たその子と握手、何かおもちゃでもプレゼントしてあげれば、見ていた聴衆は美談として広めてくれるだろう。次の選挙も近い。なんでも利用してやる。


「子供の好きそうなものを大至急用意、あと、聴衆も集めておいて」

「はっ!」


秘書に大雑把に指示し、レンファウは鏡を見た。


うん、いい笑顔。


部屋を出て、塔の階段を下りていく。人生最悪の一日が始まろうとしているとも知らずに。



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