第14話 変態のトラ
弱ったな。
キャンデーラ領から8キロほど歩き、水の国ウォーツについた俺は、お目当ての魔法使い、ランセ・アズールのプロフィールを再確認していた。
「よくわからない餓鬼が俺に会いに向かってきている。会うつもりはないから、水兵で追い返してやろう、だってさ」
「マッチングアプリ」は常時最新の情報に更新されているのだった。
ランセが俺に気づいている。
――水兵というのは、ランセさんの水魔法で生成された兵隊のことでしょう。
頭上のウィズが機械的に告げる。
「なんで感づかれたんだろう」
――ランセ・アズールさんは、この世界でも屈指の魔法使いです。おそらく、彼が張り巡らす、魔力の網にひっかかったのでしょう。
「流石は元S級魔法使い『
――お会いするのが楽しみですね。
ウィズにデコピンをする。
――……なぜデコピンを?
「このまま会えるかよ。精神年齢はアラサーだけど、12歳だぞ俺?剣術は習ってるけど大した腕前じゃないし、このままじゃ、会う前にやられちゃう」
――となると?
「……ランセを仲間にするための仲間が必要だな」
――なるほど。あとで仲間にするための仲間を仲間にするための仲間が必要にならないといいですね。
「おまえ馬鹿にしてるな!?」
*********************************
水の国ウォーツから数十キロ、馬車を拾った俺とウィズは、隣接する、古都の国ウォイデアスへ辿り着いた。
――古都の国ウォイデアス。世界創世期に人類が都を築いたと言われ、古の建造物、寺院が立ち並ぶ、文化的遺産を多く抱える国ですね。
ウィズが機械的に解説を始めたので俺は驚いた。相談は乗ってくれないがそういった情報は詳しいんだな。
「ウィズっていうか、ウィキだな」
――すみません。どういう意図かわかりません。
「あ、なんもうまいこと言えてないから気にしないで(笑)物知りだなって褒めようとしただけだから続けて」
――はい。ウォイデアスはそういった文化以外に盛んなのが、色事です。
「色事?っていうと、エロい系?」
――さようでございます。ウォイデアスの中心地にて栄える繁華街『シラヴァマ』は、ジュンさんの前世の記憶データを参照してたとえるなら、ピンサロ、デリヘル、おっパブ、セクキャバ、メンエス、ソープ等のような風俗事業が全て容認されている、なんでもありの風俗街でございます。
エッロォオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!
女性不信とはいえ男なので、エロを否定することは出来なかった。
前世で一回も風俗に行ったことなかったから、余計にエロく感じる。
なんてエロいんだこの町は。
辺りを見回すとピンク色のネオンがギラギラギラギラ、そこかしこと光り輝いている。
父ジョン王から旅費をもらっていた俺は、手元の金貨を見て、深くため息をはいた。
はぁ。俺が12歳じゃなければ。
――そういうことがしたいなら、ぜひ、「マッチングアプリ」をお使いください。
「そういうわけじゃないんだよなぁ!ウィズ!そういうわけじゃないの!」
――全く理解できません。
「エロを売り、エロを買う、そういう、男女が獣のように性欲にまみれる時間が、あそこにはあるんだよ!」
――不倫をする男女と一緒ですね。
ウィズの言葉に、テンションは急降下した。興ざめした顔で俺は言う。
「全然違うだろ。不倫は家族を裏切る最低最悪の不貞行為だ。人を不幸にするだけのな」
――お怒りのようですね。わたしに何か無礼があったのでしょうか。
「いいよ別に。それより、ここにいるんだよな?あの獣人が」
――はい。彼は『シラヴァマ』の常連客です。
ウィズがプロフィールを表示する。
+++++++++++++++++++++++++++++++++
ロッソ・カーマイン(22) 獣人の国ドートン出身
職業:傭兵
186cm
自己紹介文
まいど!ドートン出身の元奴隷獣人やでー!虎の獣人で、生まれたときから奴隷やってん、最初は人間が憎うて仕方なかったわー。せやけど、成長して戦争に駆り出されて、手柄を上げたのがきっかけで、王族に召し抱えられて、士族階級になったんや。ま、素行不良で、1年くらいで解雇されたんやけど(笑)
それからは、獣人のみで結成された傭兵ギルド「牙」に登録して全国各地、傭兵のお仕事させてもろてます。
たまったお金で女を買う、これが俺の日課や。
これは俺なりの・・・
+++++++++++++++++++++++++++++++++
プロフィールを見るのに夢中になっていた俺を現実に引き戻したのは、目の前の風俗店の扉が大破する音だった。
ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!
「なんだ!?」
俺が凝視すると、お店の扉と男性店員3名が吹っ飛ばされたようで、地面に転がっていた。ぞろぞろと野次馬が集まってくる。
お。
風俗店の扉は、見た感じ、鉄製の分厚いものだが、ネコ科の動物の足跡 (俺の顔より大きいサイズで)がボコッとついていた。扉を蹴破ったのか。
きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
野次馬の女性たちが悲鳴をあげる。
どうしたのだろう。気になった俺は、野次馬をかきわける。
「うぉ!?!?」
野次馬を押しのけて目に入ってきた光景は、虎の獣人(全裸)が、人間の風俗嬢(全裸)を後ろから立ち姿勢で攻めている、というものだった!
人前でぇええええええええええ!?
しかも初めて見た!
「あかん!ほんま無理!いやや!痛いしはずいしやめて!!!」
風俗嬢(全裸)は本気で嫌がっているのにも関わらず、虎の獣人の激しい前後の運動は止まらない。ぶるんぶるんぶるんぶるん、風俗嬢のデカメロンがシェイクしている。
「ええやんええやん、おもろいやん!こんだけの人の前で、動物みたいにヤることなんかないやろ?おもろくて気持ちくて、最高やん?」
「最悪やあああ!!!!」
泣き喚いてるのか喘いでいるのかわからない風俗嬢(全裸)と獣人のプレイは、それから1分ほどして、虎の獣人が最後まで達したところで終わった。
獣人がイク時は、ガオー!って吠えるんだな。
俺は素直に感心した。そしてまた虎の獣人を凝視する。獣人のイチモツでけえ!!そしてトゲトゲしている!!!
――ネコ科の雄の陰茎には、「陰茎棘(いんけいきょく)」と呼ばれる無数のトゲ状の突起があって、交尾中にこのトゲでメスの中を刺激し、排卵を誘発するそうですね。
「補足情報ありがとうウィズ」
――ネコ科のメスにはいい刺激かもしれませんが、人間の女性にとっては激痛かもしれませんね。
「ほんとだ、あのお姉さんのお尻が血まみ、……あ!」
俺は、全裸の虎の獣人の色々ですっかり圧倒されていたが、ようやくその獣人こそ、ロッソ・カーマインであることに気づいた。
「こいつ仲間にするのやめとこうかな……」
――しかし、現状マッチング成立確率120%です。もしかしたらこの世界で一番相性がいいかもしれませんね。
「嬉しくないわ!」
俺は全裸の虎獣人に一歩ずつ、おそるおそる近づいていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます