第12話 君の名は女
「ゆ、ゆゆ赦して、おお、お、お願い、ジュン様」
ひざまずき、地を這って許しを請う全裸の婚約者に、俺は淡々と告げた。
「許すわけないだろ。クソビッチが」
マリヤ・グチモームス、彼女もまた、
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時計の針は、≪奴隷売買≫と「マッチングアプリ」
「マリヤに仕えるアンジェロ・ジャッシュ。あいつが奴隷商人で、奴隷売買を生業にするワタヴェ商会の、次期会長」
――さようでございます。「マッチングアプリ」は、間違いなく、真実を記載しております。
俺は目を疑いながら、アンジェロ、通称アンジーのプロフィールをもう一度確認した。
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アンジェロ・ジャッシュ(20) 美食の国エンタ出身
職業:執事、次期会長
175cm
自己紹介文
やっほ!グチモームス家に仕える若きイケメン執事、アンジーとは俺のことです。(キラッ
そんな俺には秘密があって、親父が奴隷売買を生業にする『ワタヴェ商会』の会長なんだ。グチモームス家に奴隷を毎年多数献上していたコネで、幼い頃からグチモームスの令嬢の執事として雇ってもらってます!親父がニ年前くらいから、商会会長の座を譲りたいと言ってきたから、親父を手伝って奴隷を売りさばいてます。今年くらいには会長かな?笑
基本的に他人を見下してます。下等種族というか、低能というか。
この世の中、どう考えても俺が一番。だから、奴隷ビジネスは俺には天職。人の心があったら出来ないよね(当たり前か笑
「見かけによらないな、あんな若いのに、こんな」
非道なビジネスに手を染めているなんて。
マリヤはこのことを知っているのか?グチモームス家に奴隷を献上というのも気になる。グチモームス家について詳しく調べておく必要があるな。
ん。
俺はアンジェロのプロフィールをスクロールして、ある一文を見つけてしまった。
え?
「え?」
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で、もう一つの秘密が、マリヤお嬢様と、肉体的にも精神的にも相思相愛な、主従を超えたズッLOVEな関係にあるってこと!(いえーい!ジュン王子みてるぅー!?)
2年前に俺から迫ったけど、速攻股開いたよね(笑)お嬢様尻軽すぎぃ~!!!!最近は興奮するっていうから、多目的に作られたトイレや、クローゼットの中でチョメチョメするのが俺たちのブームでぇ~す!(いえーい!ジュン王子みてるぅー!?)
単純に婚約者がいる女とヤるのに興奮してたけど、金持ちだし、俺にベタ惚れしてくれてるし、いずれは婚約破棄させて結婚してもいいかなって思ってる (もちろん不倫はするけどね(爆))
好きなものはアブノーマルプレイと美味しい料理 (隠れた名店探しが趣味かな)
嫌いなものは頭を下げること一択。
固有スキル「混沌仕掛けの
(ランダムで、相手の五感のいずれかを奪うか、または、状態異常を付与する。ランクがあがる度に制御できるようになる)
剣術A 魔法A 知力A 体力C
現状マッチング成立確率0% (アンジェロさんはあなたを必ず裏切ります。彼と信頼関係を結ぶより、オークと親友になる方がカンタンでしょう)
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――ジュンさん?
俺が一分あまり沈黙するものだから、ウィズは心配して話しかけてきた。
「……確認させてくれ」
――はい。
「『マッチングアプリ』は、間違いなく、事実を記載しているんだよな?」
――はい。『マッチングアプリ』の情報は100%絶対です。
「そうだよな」
急に前世で死んだ日のことが蘇る。
新婚ほやほやの俺の妻・アスカが、妻子持ちの課長と不倫関係であることが発覚したあのLINE。身体から力が抜けて、めまいがして、俺は死んだ。
公衆便女のリサ、3P泥酔彼女ヒトミ、新歓お持ち帰られのマリカ、出会い系で出会った会社員のをinしていたシホ、不倫クソ裏切りアバズレ妻のアスカ。
みんな憎むべき女だった。
マリヤ。
君だけは違うと思っていたのに。
いつもそうだ。
君だけは違うと思っていたのに。
みんなそうなんだ。
女はみんな、俺を裏切り、何回も、何十回も、何百回も、何千回も、俺の心を殺すんだ。
「はははははははははははははは」
――ジュンさん?いかがいたしましたか?
俺は笑いが込み上げてきた。何やってんだよ、柴田弘嗣。何やってんだよ、ジュン・キャンデーラ。生まれ変わっても女を信じちゃって、このザマかよ。学習しろよ俺。
女は信じちゃいけない。
前世で散々学んだことだろう?
俺は泣きながら、声が枯れるまで笑った。
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「旅に出る?」
病床の父さんが思わず起き上がる。
「はい。父上のお身体を治す薬を探し求めてこようと思います」
「嬉しいことを言ってくれるな。だが、お前がいなくなると、いよいよ、俺は独りになってしまう」
そう寂しげにぼやく父さんの顔を俺はじっと見つめる。
「父上、嘘をつきました。そんな殊勝な息子ではありません」
「ん?」
「あと4か月もすれば、マリヤの誕生日。国々を回って、彼女に相応しいプレゼントを探し求めたいと思っております」
一瞬間が空いたあと、父であるジョン王は、ぷっと吹き出した。
「はははははは、彼女のプレゼント探しか。12歳になって、随分ませたなジュン」
「お恥ずかしい限りで」
「いや、相手を大切に思う気持ちがそうさせるのだろう。良い心がけだ。人を大切に。キャンデーラ家の人間として、ゆめゆめ忘れるな」
父さんの言葉がとても重くのしかかった。俺と父さんを裏切ったあの母親の冷たくなった顔が脳裏に浮かんだ。きっと父さんも一緒だろう。
しんみりしたところで、王の口から、行ってこい、という言葉が飛び出し、俺は旅立つことになった。
「お供の者を手配しよう」
「それには及びません、当てがあります」
そう言って、俺は父の寝室を退出し、自室に戻った。
――ジュンさん。旅に出るんですか。
ウィズが服の中からひょこっと顔を出した。
「ああ、淫乱
さ、最高の旅の、仲間を探さなくちゃ。
そして俺は、ウィズユー、とつぶやいた。
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