第4話 「マッチングアプリ」with you

「お坊ちゃま!!!大丈夫ですか!?」


ヤリ〇ン女ことウェハーラが、突然奇声を発した、雇い主の息子である俺を気遣う。


「あ……あ……」


なんだこのスキルは……!!


ウェハーラを無視してもう一度確認する。


名前、年齢、出身地、職業、身長、バストサイズ。

更に自己紹介文の文言が気になる。

ヤリ〇ン女。過去に2回不倫。男に依存する性格。休日人身売買で性行為。

おそらく本人の本質的な部分や秘密が描かれているのだろう。

更に固有スキル名、固有スキルの現状のランク。固有スキルの詳細な説明。

剣術。魔法。知力。体力。



ん?スクロールすると、最後にマッチング度というのが書かれていた。


+++++++++++++++++++++++++++++++


現状マッチング成立確率82%(ウェハーラさんは若い男の子が大好きです。おそらくうまくいくでしょう)


+++++++++++++++++++++++++++++++


ああ~ここはすっごくマッチングアプリっぽい。

いや、そんなことより。

これは「鑑定士」のスキルの上位互換なんじゃないか?アイテムの鑑定は出来ないけど、それ以外は全部俺の固有スキルでもできる。相手の隠している秘密もわかる。

凄いスキルを手に入れた。


「お坊、ちゃま?」


おそるおそる声をかけてきたヤリマン女。


――自己紹介文の内容が真実なのか確かめたい。


「おいクソビッチ」

「え?」

「ウェハーラさんさ、休みの日に奴隷の男の子を買って散々エロいことやっているらしいね」

「え、ちょ、何をおっしゃっているのですか?」

「しらばっくれる気?」


ウェハーラが、下品な言葉をレディーに言うものではありませんよ、と諭した。その顔は、今となってはヤ〇マンの作り笑顔にしか見えない。


「ネタはあがっているんだよ。リューキウってウェハーラさんの地元だよね?そこの商人が先日うちの領内に来て色々教えてくれたんだ」

「リューキウの商人……?って、まさかシマブ!?うそでしょ!?」

「え、ああそう。シマブさん。貴女が有名なヤリマン女だって言ってたな。それに」

「……何よ?」

「不倫も2回しているらしいね。高潔な父は、不貞を最も嫌う。この情報を耳に入れたら即解雇だろうね」

「そんな!!お坊ちゃま!それだけはおやめください!どうか!」


――100%信頼できる情報ということか、OK。


「じゃあ、今後俺の命令に逆らわないこと。いいね?」

「はい!」

「そしたら、庭師のデブマンと付き合ってあげてください」

「え?」


庭師のデブマンは、40過ぎで恋人のいない、チビでハゲでデブだ。ウェハーラが大好きなことを屋敷中の人間が知っている。


「嫌よ!あんなチビでハゲでデブ!」

「は?今俺の命令に従うって言ったばかりだよな?」

「うっ……!」

「わかってるか?そもそも奴隷の人身売買は、うちの領内では禁止されているよな?お前は、解雇どころか、俺次第で牢獄行きなんだよ」

「……!!」

「もう一度だけ言う。チビでハゲでデブのデブマンと付き合え」

「……わかりました」

「うん。いっていいよ」


泣きながらウェハーラは部屋から退出した。


「なぁウィズ」


俺の声に反応して、ハート形スライムのウィズユーが俺の方に向く。


――ウィズとは?


「正式名称を呼んだら、ビジョンがついたり消えたりするだろ?だから、お前と会話をしたいときはウィズと呼ぼうかなって。どうだろ?」


――ジュンさんのお好きなように。それで、「マッチングアプリ」はいかがでしたか?


「凄いと思うよ」


素直な感想を告げると、ウィズはキラキラとハートの小さなかたまりを身体から発した。


――ありがたいお言葉です。では、「マッチングアプリ」で運命の女性を見つけましょう。


「はぁ?」


――この能力は、理想の女性を探すスキルになりますので。


「その必要はないんだよ」


――はて?


?マークを浮かび上がらせるウィズに、俺は、婚約者であるマリヤの話を告げた。


――さようでございますか。では、私は無用の長物でございますね。


ウィズの体色が真っ青に変色した。落ち込んでいるのか。


「いや。この「マッチングアプリ」のスキルは、別の使い道がある気がするんだ」


――別の?


「このスキル、男にも使えるのか?」


――なるほど、そっちの趣味もお持ちでしたか。


「いや違うわ!!!」


***********************************


俺は小一時間、固有スキル「マッチングアプリ」の使い方についてウィズに質問をした。その結果わかったこと。


・性別問わず理想の相手を探すことができる。

・検索ワードを伝えるとマッチする人間が複数表示される。(例. 20歳 女 彼氏なし)

・名前だけでの検索も可能。

・条件を満たすとマッチングをサポートする機能が付与される。

・このスキルのランクはこれ以上上がらない、ということ。


「スキルランクが上がらない?この世界の固有スキルは、経験値を積むことで、ランクアップしていくはずなんだけど?」


――「マッチングアプリ」のランクは、すでにSランク中のSランク、SUPER・EXCELLENT(スーパーエクセレント)ランクとなっております。


「スーパー……エクセレント?」


――はい。あえて表記するなら、S-EXランクです。


ああSEX。鑑定士が言っていたのはそういうことだったのか。

固有スキル「マッチングアプリ」

この能力は戦闘向けではないけど、ある分野においては最強だ。

そう、≪人材登用≫においては。

探し求める人間を探し、その人間の能力だけでなく、深層心理まで覗くことができるスキル。


「最高の誕生日になりそうだ。早速町に行こう!」


――誰を探しに行くのですか?


「殺しのプロ、かな」


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