第2話 人類が築いた壁と出会う

誰もがその巨大な肉体の男を見つめていた。

各自自分の脳に今の状況を直ちに説明するよう促した。

そして、その電撃に包まれた巨体の男もこちらをゆっくりと振り返った。

その瞬間、彼が噴き出す強烈なエネルギーに瞳孔が燃える感じがした。

強力な高密度の魔力の気運だった。

彼を見つめる自分の魂が、血筋が燃え上がる感じをそこの皆が感じていた。

しかし、次の瞬間、明るい部屋の電気が突然消えるように、彼の強力な気運も消えた。

彼と向き合うことで熱くなった魂と肉体にあっという間に寒気がみなぎった。

そして、魂が冷たくなると頭脳の能力も戻ってきて、彼を調べ始めた。

巨大な肉体のあちこちに意味の分からない文様が刻まれていた。

強烈な昼と凍りつくような夜に耐えるにはあまりにも粗雑で軽い服装。

まるで衣類技術が発達していない時代から来たようなその服装のあちこちに風化の跡が現れていた。 あちこちが裂けて彼の皮膚がむき出しになっていた。

「あなた、いったい何をしている人なの?」

ラナの声とともに意識と空間の静寂が崩れ、軍人たちは再び戦闘態勢に入った。

この程度の身体能力と魔力。 明らかに、この惑星に属する者ではない。

レキシントンをはじめとする帝国本土の軍人出身に思い浮かぶのは、帝国軍と政府上層部に多数布陣していた強者たち。 多数の人間が集めた力を一身に軽く押さえる不快な奴らだった。

色あせていく記憶にあるものなので正確な比較は不可能だったが、この者の強さが彼らと最小同級、あるいはそれ以上のものであると考えられた。

魔力が消えたように見えるが、そんなはずはない。 隠しているのだ。

この惑星では魔力を保有する個人も珍しいが、これを隠せる者はなおさら珍しい。

彼の魔力制御能力もまた高いという証拠。

どう考えても帝国本土から派遣された強者と考えた方が妥当だろう。

だが、相手はこちらへの攻撃意思が全くないように見えた。

自分たちと同じように向こうも未知の相手を観察しているようだった。

人間は武力だけで相手を識別しない。

対話を試みるしかない。


数時間前から自分に飛び回る目玉を送る者がいることを知っていた。監視されることにトラウマがある彼が、破壊結界を広げて入ってくるたびに無くしてしまったが…。

がいることは知っていた。

何か大きな獣の気配を追ってきた地下には未知の巨大空間に多数の人間がいた。

「あいつら」に似た服装をした者が多数、端正な灰色の服を着て比較的充実した武装をした者も多数。 彼らは武器を狙っていた。

一瞬、自分を攻撃しようとするのかと思って怒りを燃やしたが、すぐに落ち着いて判断能力が戻ってきた。

彼らは確かにそのトカゲと戦うために集まっているものであり、突然の自分の登場によって当惑と警戒心を抱いているということまで推測した。

「あいつら」なら自分の存在を知っているだけでなく、この地域でこの時代に目覚めることを知っているだろう。 他の誰でもなく、身体強化装置の時間を1万年に設定した本人たちだから。

彼らの反応から見て、自分の存在に初めて接するのだ。 明らかに「あいつら」と職業が同じであるだけで無関係な者たちだろう。

その時、この群れの中で一番高く見える、自分ほどではないがかなり体格が立派な男が歩いてきた。

「失礼、あなたのことを聞いてもいいか?」

まるで猛獣に対するように警戒を緩めずに最大限丁寧な言葉遣いを使おうとするのが見えた。

「俺はルメルだ。」

「名前以外に教えてくれることはないか?」

「ええ、私たちはあなたの名前なんかが気になることではないのよ!」

この女、さっきまで凍りついていたくせに唐突だと思った。

目が合うとぎくりとしたが。

しかし、彼らにどこまで話すべきか?

秘密を隠すのは得意ではないが、自分のことを本当のことを全部言ったら疲れそうだった。 その上、彼らが自分をだまして実験ネズミにした人たちと無関係であることが明確に明らかになったわけでもなかった。

「その前に、君たちに聞きたいんだけど、その目玉を送り続けたのは貴公たちか?」

「なるほど、その未知の生き物はあなただったのか。」

未知の生物か。 未知の生き物に自分の物が攻撃されたことが気になったのか。

「そう、俺は監視されるのが嫌いだからね。」

「あなた、帝国のスパじゃないか!」

「帝国って? どんな帝国のことを言っているの?」

ルメルが知っている帝国は多数あるが、すべてこの時代には自分の王国と同じように存在しないはずだ。

「何言ってるの、帝国は一つだけじゃないの? 「バルハラ」だ。」

なるほど。それがこの時代の覇権国というのか。


まるで一生洞窟で暮らして初めて出てきた者と交わすようなおかしな対話が交わされた。

「その人は誰ですか?」

テリアがさっきの衝撃波に倒れた後、そのまま横になって寝て目を覚ましたかのように、いつものようにだるい声で話した。

いつものように、セルが最初から説明しなければならなかった。

「そうですか?でも、何かおかしいです。 人間···なのに人間じゃないような···」

「それは失礼じゃないか?」

人ではないなんて侮辱ではないかというレキシントンの問いに

「卑下の意図ではなく、生物学的に私たちとは違って見えるんです。」

と答えるテリア。

他の人とは違って、寝起きで初めて見ながらも、怖がる気配もない平然とした話し方だった。

「あの入れ墨、古代人の文字じゃないですか。」

「そういえば。 そうか?」

「私は古代語の授業は受けないからね!」

「俺は教養の授業に出たし···そして寝た。」

ため息をつくテリア。

「歴史を忘れた者へ···」

「分かった、分かった。」

「よし, 反省するからやめてくれ。」

再び説教モードが始まるテリアを制止する二人の男女。

「とにかく、もしかして、古代人ではないでしょうか?」

それと同時に、謎めいた男を除いたその空間の人々が皆、呆然とした表情で彼女を眺めた。

「いやいや、冗談面白くない。」

「そんなはずないじゃないか。」

「夢を見てきたの?」

圧倒的な反対世論にも屈しないテリア。

「古代人たちは、現帝国本土の人たちのように一人一人が魔力を持っていたそうです。 現代文明に門外漢であることもそうだし、人間なのに妙に同じ種のようでない点もそう。 」


周りの人間たちはその言葉を冗談や果敢な仮説程度に思っているようだったが、いざルメルは大いに驚いた。

この女、ものすごく賢い。 正解に近づいた。

「ねえ, 私たちを攻撃しに来たわけじゃないでしょう?」

彼女は尋ねた。

「お前たちが誰なのかも分からないのに、なんで攻撃するんだ。」

「見たところ、そこにたき火をしていたようだが。」

その女は機械の画面を見ながら話した。

「たき火なんかをどうしてそんなに必死に隠したの?」

別の女がぶっきらぼうにつぶやいた。 おそらくルメルがいた地域を再び偵察しているようだ。

「行くところもないんですよね? 私たちと一緒にしませんか?」

「テリア、お前なんで勝手に?」

金髪の男が呆れたように聞いた。 周りの反応もそれと変わらないようだった、

この女はなかなかマイウェイらしい。

「私の勝手なんだけど?」

「俺を閉じ込めるのか?」

「私たちがあなたをどうやって閉じ込めるのですか。 あなたを怒らせたら基地を壊しそうです。 出入りも勝手にしてください。」

「なぜ? 私がいてお前の利益になる部分を聞きたい。」

「あなたのように面白い人を観察することができますから。 探求者にとって興味深い探求の街ほど良いものはありますか?」

「怪しいところがないわけではないけど、強そうだから戦力になると思うし。」

「そうか、帝国軍を相手にするには貴公のような強者が必要ではある。」

他の女と体格の大きい男も、それぞれの理由で納得しているようだった。

「こちらを攻撃するつもりだったら、俺たちはとっくに死んでいると思う。」

「そうだね、いくら帝国でも、こんな強者を偵察兵などとして使うことはないだろう。」

「では、まずは。」

「あなたが壊したものから復旧して。土竜が壊したのもね。 受け取る対価としてこれくらいはいいだろう?」

施設の復旧はルメルとレキシントンという男が率いる軍人たちによって思ったより早い復旧がなされた。


プライベートスペースを割り当てられた後、テリアから施設での生活についていろいろ説明を受けた。

MINUS。

陰地を志向する科学者たちの集まりであり、帝国が定めた法律と宗教が制限する道徳から脱し、自由な学問活動を通じて人類の進歩を追求するという理念を持っている。

科学者のほかに、その科学を技術に適用してみようとする一流技術者と、彼らの理念に同化されたり、帝国の現実に不満を抱いた一部の軍人たちも参加した。

彼らの行動原則は「自由に行動すること」。

統制が行われない環境でこそ学問の発展が存在すると信じていた彼らは、各自の活動を全く制限せず、必要ならば協力し、興味があれば参加した。

ただ一つの原則、セキュリティは念頭に置くこと。

帝国の制限も宗教の教えも道徳の統制も受けない彼らの集団は、明らかに反逆であり異端だ。

外部に存在が晒されると、きっと弾圧しようとするので、外部との接触を止揚し、情報の秘匿を重視している..というのがテリア一行の説明だった。



翌日の午前。

車は砂漠地帯を通り、舗装された道に入った。

整備がうまくできた道ではなく、あちこちに割れた隙間が見えるが、自然状態の道路に比べれば天地の差だった。

遠くから見える巨大な壁。 その長さの終わりが見えないそれはまさに···

「 <人類の壁>だ。 この惑星のお偉いさんたちが下等な者たちをを守ってあげると建てた要塞だ。」

昨夜,テリア,ラナ,セルという3人の若い科学者が現代生活に必要な大まかな知識を教えてくれた。

「ほんとに、じれったいと思ったんだから。」

ラナはおやつをかじりながらつぶやいた。

最初はテリアの言葉を否定していた彼らも話にならないように時代状況に無知な姿を見て、ルメルの正体が「古代人」なのかどうかはさておき、今の時代と大きくかけ離れた生活をしていた者であることは受け入れるしかなかった。

事実、彼らの説明が不十分なのか、それともルメルの脳が1万年の睡眠によってバカになったのか、完全にすっきりと疑問が全て解決されたわけではなかったが、忍耐心テストをするような彼らの表情を見て、いくら無敵の古代戦士でもこれ以上質問をする勇気はなかった。

たった一人、テリアだけはいつもゆったりとした声とそれに対する好奇心に満ちた顔で熱意を持って教えてくれた。

ただ、内向的なうえに興味のない分野には関心も与えない者なので、自身も外の世界のことをよく知らないとし、自身が知っている限りで教えてくれたが、その「知っている限り」というのが非常に制限的だった。 利点はテリアだけでなく、残りの2人の科学者の友人たちも同じで、これがこの職業の特性かと思われるほどだった。

特に世の中の権力構図だとか、経済に対する知識だとか、そういう分野に対して知識がほとんど皆無だった。

だが、そのような彼らさえ常識水準で知っている単語があったので、まさに「人類の壁」だった。

「そりゃ、人類居住区域にいる者たちと働くには、この鉄の構造物に向き合わざるを得ないからね」

この惑星には「惑星政府」という超法規的な権力を持つ強力な政府があるが、これらはこの惑星に存在するすべての国家の上位にあり「内地」と呼ばれる直轄領を保有している。

内地は惑星政府の保護および支配を受ける国家だちに囲まれており、内地とその国家だちの領域を合わせて「人類居住区域」と呼ぶのだ。 そしてその人類居住区域の最外殻を巻いている盾がまさに「人類の壁」だ。

「それで, 俺はなぜここに来たのか?」

「その有様で一生いるつもりなの? あなたが使う生活必需品も手に入れるために、長い間眠っていたあなたにこの世の姿を見せてあげないと、いつか大変なことになりそうだから」

「内地政府のやつらにコロッサスを見せたかったのにね。」

内地政府とは「惑星政府」の別の言葉だと言った。

そういえば、出発前にそんな言い争いがあったようだ。

「違法武装集団だと宣伝しているわけでもないしね。 この中型SUVくらいなら十分だって。 昨日のように夜遅く歩き回るつもりでなければ」

「訳もなくフラグ立てないで。」

あれこれ話をしてみると、要塞の姿が肉眼ではっきりと見えた。

首を最大限に立てないと見えない最上部。 そこに並んでいる無知に見える砲塔、要塞の大きさに比べてあまりにも小さく点のように見える窓。 よく見ると、所々赤い線で層が分かれていて、その赤い線ごとに小さな武器に見えるものが数えきれないほど置かれていた。 もちろん、この遠いところから見ると小さいだけで、むしろこの距離で肉眼で見えるということ自体がその大きさが途方もないという反証であるだろう。

そして少し小さい金属でできたドアが多数あったが、全て閉まっていた。

今、セルの車が向かう大きなところが正門に見えるので、その鉄門の用途が気になった。

ルメルの時代にこのような構造物はなかった。

何の金属かはわからないが、石材や木材を一つも使っていない巨大な通金属構造物。

その上、人工的な色で丸ごと覆った姿が彼の時代にあった要塞の姿とは大きく違った。

「……すごいね。」

「そうでしょ?でも、高さと長さだけで感心するには早い。 この要塞の本当の真価は厚さにあるから。」

セルは興奮した表情をしていた。

昨日聞いた話では、あの要塞はMINUSに潜在的な敵勢力の構造物に当たるはずなのに。

そうしているうちに車は要塞にもう少し近づき、そこに立っていた人々の姿が見えていた。 制服に見える服を着ているのが、軍人のようだった。 おそらくこの要塞を守る者たちだろう。 ところがその服装が非常に不良なのが、なかなか素敵な制服なのにしわくちゃになってズボンの中に無造作に入れられ、実に不格好な姿だった。

それに魚の目になったまま遠くの山を眺める表情が、実に一言言いたくなるような顔だった。

君主を守っていた軍人だったルメルは、その衛兵たちに自分たちの姿が国家の顔であることを認知しているかを尋ねたくなった。

「あなた、顔に考えが読めるタイプなのね。」

ラナは初めて笑いながら言った。

「…そうか?」

訳もなく顔をいじくり回した。

「恥ずかしがらなくてもいい。 ここを通る者なら皆同じ考えをしているはずだから。」

「あの案山子みたいなやつらのことだよね? しかし、むしろそれが今の俺たちには楽だと思う。」

「どういう意味か?」

「すぐわかる。」

やがて、車が衛兵を通り過ぎて正門に入ろうとした。

馬車時代の常識から考えると、この辺で衛兵がこの中に乗った者たちの身元と怪しさを確認しなければならないだろう。 ルメルは自動車というものを初めて見たが、交通手段が変わったからといって規則が変わったとは考えなかった。 人間は自分の領域の中に自分の知らない何かが出回るのを嫌う生き物だから。 それに国民の保護という国家の義務は外部存在に対する警戒から始まるものであり、これは時代が変わったからといって変わるものではない。

そう思っていたのだが、なぜか、その衛兵という作者たちはただ横目で運転手のセル、補助席のラナと目を合わせた後、再びその魚の目に戻っただけで、それ以上のことは起きなかった。

「これは一体…」

「クククク。言ったじゃないか。 楽だって。」

「あなた、身分証明書も何もないじゃないか。 身元検査を徹底的に受ければ、絶対に入れなかったかもしれないって? こっちの方が楽なんだよ。」

「そりゃそうだけど…」

「この人たちの考え方だそうです。」

上述したように、人類の壁という構造物は、この向こうに存在する王国の管理下にあるのではなく、その上にある上位政府である惑星政府の所有。したがって、この構造物に勤める者たちも、「内地」の住民たちである。

彼らの考え方では、人類の壁は惑星政府が守るものだが、王国内での騒動は当該王国政府が自ら行うもの。

これが最大限業務をしたくない公務員的な思考と合わさって「私たち人類の壁の中で騒動が起きなかったので私たちの管轄ではない」という奇跡の論理が誕生するのだ。

そんな呆れた話とは別に、セルの言うとおり、その人類の壁の厚さは本当に想像を絶するものだった。

この巨大な要塞内部には、ここに勤務する軍人、公務員、そして彼らを相手にする商人などが居住する都市が存在するという。 それも小さな町並みじゃなくて、よほどの大都市に匹敵する規模だという話があると。

人類の壁を突破する間、様々なタイプの軍人たちに出くわした。

ルメルが知っている姿とはかなり違うが、剣や長銃を着けている者が最も多く、まれに鉄甲を巻いている者がいて、それよりもまれに何も持っていない代わりに、手首のような関節部に厚い輪をつけている軍人がいた。

彼らは他の軍人に比べて制服が良く、貴族たちが着そうなネクタイをきちんと締めており、その上に龍のようなブローチをつけているのが、明らかに上位階級の軍人に見えた。 それに体格も格別なようだった。

将校なら軽い服装でいるのもわかるが、その輪の正体が気になった。

人によって手首にだけつけている人、手首と肘につけている人、腰につけている人など多様に存在した。

「あ、それですか?」

ルメルの好奇心に気づいたテリアは声をかけてきた。

「その軍人たちは<軍団兵(Legionnaire)>です。 帝国の精鋭兵です。」

「そのリングたちは<固有装備>の呼び出し機だ。 軍団兵になると、支給される各自の身体特性と好みの戦闘スタイルによってそれぞれ異なる<固有装備>が支給される。」

「人間の力では到底制御できない巨大で強力な重火器と重装甲をべたべた塗るのだ。 鎧の形でね。」

「欲しくないですか?」

「欲しい?」

「欲しいでしょ?」

何だかみんな熱を出した。

「どんなものか、目で見ていないから、よくわからない。」

「実はうちのMINUSも彼らを模倣して固有装備を作っている。」

「内地のあいつらが作ったものを、俺らが作れないわけがない。」

「お金がなかったんですけどね。」

「完成したら一番最初にあなたにあげたいものだよ。」

「少し前まではレキシントンさんをユーザーと思って開発していたのですが、もっと強力な方がいらっしゃいましたから。」

「そうだね。ルメルさんが使う武具なら、もっと強力なものがいいね。」

言われてみれば、その固有装備という武器は皮肉にも強い体力を要求するという。

既存の体力が強いほど強い固有装備を使用できる方式だ。

「工学者の魂が燃えるものだ。」

車内は突然の熱気でいっぱいになった。



騒がしかった大口径の魔力機関砲の銃声が止まった。

「バッテリーが切れです!」

「なんてこった、いったいあの怪物は何だ、とめどもなく押し寄せてくるんだ!」

砂漠の真ん中、双頭の鷲が描かれた大きな車数台が何かに追われていた。

すべての反撃力量を消耗するまで追撃者たちを殺したが、殺した数よりさらに多い数が彼らを追いかけていた。

数時間前、惑星政府軍第52師団所属の機甲兵力が定期的な巡察のためにこの地域に派遣された。

彼らの任務は一つ。 その砂漠の上で動くすべてのことを報告すること。

しかし、そのような任務が与えられたその地域には、報告することが一つもなかった。

ただ砂、石、そして砂が濃く混ざった風だけだった。

人類がずいぶん前にここを捨てた理由があることに改めて気づいた刹那、遠くから何か立っている姿が見えた。

望遠鏡を通じて眺めた姿はまるで女性の姿だが、よく見ると人間ではなく砂が固まったのだ。

絶対に自然現象ではないと思って指揮部に報告を終えたその時、その砂の塊が首を回してこちらを眺めた。

それは、いや、彼女と呼ぶべきか。 彼女は突然怒りをあらわにして、地中で砂でできた騎士たちが真っ黒な目を開けて飛びかかり始めた。

もちろん、銃弾を受けるとまるで人間が死を迎えるように崩れて消えた。

必ずしも急所部を狙わなくても、下段部が崩れるとそのままバランスを崩して倒れ、二度と立ち上がれなかった。

個体だけを見ると、非常に弱い存在だった。

外見に威圧された軍人たちは、自分たちが早合点して怯えたことに悔しがって相手をあざ笑い、射撃を楽しみ始めた。 弾薬と魔力バッテリーの消耗を考えずに記録対決をしながら戦闘に楽しさを感じ始めて間もなく、その楽しさは弾薬、魔力と共に消耗して恐怖に変わっていった。

いくら殺しても攻勢は終わらないのだ。

遅れた判断で撤収を始めたが、時はすでに遅く結局すべての弾薬と魔力を消耗し、次第に将兵の命が消耗し始めた。

「こんな砂の中で死にたくない…」

自分たちの愚かさと不運に惑星政府の直属軍という自負心なんて投げ捨てた涙が各車両をいっぱい満たしたその時、

「バンッ!」という轟音が聞こえ、各種武器の攻撃音と爆発音が引き続き溢れでた。

戸惑いながら眺めた窓の外には太陽の光にまぶしく輝く金属の戦士たちが凶悪で巨大な武器を撃ち、振り回しながら怪物たちを砂にしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る