10000年の古代戦士の滅世旅行
@ton6181
第1話 長い眠りの末、朝が明けてくる。
彼は目を覚ました。
自分に巨大な力を与えてくれた装置から意識を取り戻すと同時に、極大な魔力を放出して空間全体を壊した。
凶暴な赤い光と奇妙な青い光、そして何か分からない騒音でいっぱいだった空間に闇と静寂が訪れた。
その代わり、空間の中央に座っていたその男から、もっと醜く、もっと奇妙な光が噴き出して、光が閉じる場所ごとに腐食、発火、圧力によって空間が壊れていき、まるで鉄粉が磁石に引かれていくようにその破壊を行ったその男に吸収された。
建物を取り込んだ彼に、その建物を制御していたシステムが話しかけてきた。
<<万能言語回路取付け済>>
<<「テッサレク」の残余エネルギー吸収済>>
<< すべての改造が終わりました。 本システムも作動を終了します。 >>
これを最後にもう一度静寂が訪れたここには、男性と強烈な日差しを反射する砂場だけが存在するだけだった。
建物は跡形も残っていない。
建物の周辺を取り囲んでいた鬱蒼とした森は、高温の空気を含んだ砂場に変わった。
彼は不意に自分の顔を殴り始めた。
目を覚ますための軽い頬叩きのようなものではなかった。
自分に対する憎悪と嘆きを込めて、死の意志を込めて殴った。
「い···間抜けな奴···」
確かに彼は強くなりたかった。
いつも自分の限界を恨んでいた。
重過不敵という些細な法則の下でひざまずくしかなかった自分を自責した。
主君と祖国を脅かす敵の前で何度も無力に敗北した自分を憎悪した。
それで強くなりたかった。
自分の努力ではなく、他の誰かの助けを借りてでも強くなろうとしたので、その疑わしい集団に協力することもためらわなかった。
その結果、彼は最悪の醜態をやらかしちゃった。
確かに、今の彼は望んでいた力を持っている。
だが、彼はこの力の代価として、彼が守らなければならなかったすべてのものを、彼の大切なすべてを、歴史の向こうに残してきた。
彼が守らなければならなかった祖国は砂漠になった。
彼が守らなければならなかった主君も、同僚も、王国の臣民たちも皆この砂場の下のどこかに埋まっている。
なぜなら、彼が目覚めた今の時期は、彼が剣を捧げるべき者が生きていた時代から一万年も過ぎたからだ。
その憎たらしい機械に設定されたのだから、おそらく1年の誤差どころか0.1秒の誤差もない正確な1万年の後だろう。
すでに存在意義が1万年前に消えた彼にただ一つ、最後の一生の課題が浮び上がった。
これを完遂しない限り、彼には死ぬ資格も、生きる資格もないだろう。
その課題と彼らの名前を自分の脳細胞一つ一つに数えていた。
「ミレニアムテンプラー···」
彼らに借金を返すための第一歩を熱い砂の上に移すその男、ルメルの瞳が砂漠を照らす太陽のように熱く燃えていた。
*
赤い空に夜の色が混ざり合う時間。
徐々に気温が低くなり、闇が敷かれ、太陽が与える光と熱から逃げた捕食者たちが、その目つきを現し、食事の材料を探し始めた。
そんな彼らの前に無知な鉄の塊の怪物が砂場を切り裂き、魔力を燃やす光を噴き出しながら疾走していた。
挑戦者たちがその怪物の強弱と味を秤にかけながら駆けつけると、怪物の上部から太陽のそれに似た光が噴き出し、挑戦者たちの体を粉々に砕いた。
挑戦を我慢した賢明な者たちには、挑戦者たちの肉片が補償として与えられた。
「ハハハ、これが人間が作った科学の味だ!」
その怪物を運転する男、セルが豪快に笑った。
「そうだね、とっくに出発していたら、銃を撃つこともなかっただろうに。」
そう言った助手席に座った女のラナは、夕食の代わりのエナジーバーを忘れていた。
「それは俺ではなく、後ろにいるあの子供に言って。 あいつが起きなくて遅いんだから。」
すると後部座席に垂れ下がっていた毛布が動き、幽霊が聞こえたように立った。
「お前、私にまた子供だと言ったですよね?」
毛布の中から女の声が聞こえてきた。 タメ口と敬語を混用するその声は眠りにつき、毛布に隠れてよく聞こえなかったが、前の2人はその声との会話に慣れていた。
「違うよ。夢を見たんじゃないの?」
「嘘つくな、全部聞いたぞ! 背が低いとからかったじゃないですか!」
毛布にしては短気なその声に
「自分が一生懸命成長しなかったくせに···」
で応酬するセル。
「運転中に殴ったら私も危ないから後で来て。」
「行かないよ? その毛布から出てきて、お話しなさい、テリア博士?」
「…お前は後で死んだんだ。」
3人の男女の幼稚な討論が続くその鉄の塊は、やがて一つの地点で止まった。
計器盤の緑色のボタンが点灯した。
セルがそのボタンを押すと
<<車両識別コードMHT-00342「コロッサス」、ドライバーセル、助手ラナ、同乗者テリア、搭乗者識別済み。 出入記録の照合済み。 施設内入場を許可します。>>
という機械音声と同時に車両が立っていた床が消え、車両が地面から消えると同時に金属板が出てその上を覆った。 その金属板から砂が出て、周囲の環境と同じ姿にした。
地中に消えたセル一行の目の前には「MINUS」という字句と外から見てはとうてい見当がつかない巨大な空間が現れた。
床に降りてきた車から降りた彼らは、「資源管理ロボット」を呼び出して今日の戦利品を載せた後、散らばろうとしたが…··· 何か変な雰囲気だった。
白いガウンを着た人たちと灰色の軍制服を着た人たちが一つになって、何か深刻な表情で話を交わしていた。
その中の一つ、灰色の軍服に黒い襟の色の組み合わせである他の軍人たちとは異なり、唯一灰色の軍服に赤い襟の色の組み合わせである凶悪な体格をした男、レキシントンがセル一行を発見した後、彼らに近づいてきた。
「ああ、若い博士様たち、こっちに来てくれるかい?」
表とは全く違う、柔らかくて紳士的な声で歌うと、3人も近づいた。
「はい、どうしたんですか?」
「予感が悪いな。」
「うぅ、面倒なことだと思います。」
各自の話をする彼らにもう少し近づいたレキシントンが端末機一つを差し出した。
「MINUS」の基地を偵察するスパイウェア、「Eyeball」と連動する情報収集用タブレットであった。
基地からかなり遠い地域の地形まで見えるそのタブレット上の地図の一箇所に、かなり大きな黒い原があった。
「ほら、ここにいる誰かが私たちのアイボールを見せるたびに撃墜している。」
レキシントンはその黒い原を画面の中央に置いた後、2本の指に拡大した。
「何か強力な魔物があるのでしょうか?」
「こいつの正体が何なのかは分からない。 ただ確かなのは、こいつはアイボールの視野が自分に閉じる前にみんな撃墜した。 きっとアイボールの正体を把握しているんだ。」
「それに隠蔽魔法も無駄だし。」
「帝国軍の偵察兵かもしれませんね。」
「この区域が正確な原を描くことから見て、相手は一つだ。 帝国軍が一人で動くはずがない。」
「探知能力に優れた魔物が犯す可能性が高いですね?」
探知能力に優れた相手である上、長距離攻撃が可能な魔物なら、きっとこちらには厄介な相手になる。
幸い今まで動きがなく、あの黒い原の範囲にこの機知が入ってこなかった。
もし、その原と基地の位置が重なることになれば、攻撃が始まるかもしれない。
隠蔽魔法を探知できる相手に地下施設なんてただ目に見えるはずだから。
「誰かがこいつの正体を判断してこなければならない。」
「今ですか?」
今、空の赤さはすでに消え、光とは魔物が作り出す怪しい光だけだろう。
たとえ「コロッサス」のような高防護車両に乗って通うとしても、その間を通るのは命を差し出すことだ。すべての魔物と獣が軽量の魔力砲一発で破れる弱体であるわけではないからだ。多数が動くこともできないのが、あの生物が万が一「帝国」の監視兵である場合、この非文明地域に人間が作った鉄の怪物が群がるなら、そして帝国の情報局や軍上層部が正常な考え方を持つ者なら、大規模な調査を進めるだろうし、そうなればこの非承認集団「MINUS」の運命も終わりだ。
その時、基地全体に非常灯が鳴った。
「今度はまた何?」
タブレットから赤い光が点滅していた。
「北西から危険等級2級の魔物『砂漠土竜』に接近中!」
砂漠土竜。砂漠の地面と地下を自由に行き来する魔物であり、人間から竜と名付けられたが、進化系統でも、その威厳でも竜とは全く違う。
本来の天性は「傲慢だ」と言われるほど遅く、人間という生物の厄介な点を理解しており、人間を攻撃するよりむしろ他の魔物を攻撃する生物だった。
その上、この基地の戦力で殺すことが難しいわけでもなかった。
レキシントンが数人の軍人を率いてうまく捕まえることができる。
だが、この基地の高くて貴重で再供給できない各種設備とセル一行が採掘したばかりの「ジオストーン」をはじめとする基地に保管された貴重で弱い資源をその怪物の乱動に失うことは痛い。
殺すだけの戦いと守らなければならない戦いの違いなのだ。
普段なら基地の防御兵器を稼動して撃退しただろうが、上述したように帝国の目があるかもしれない状況でこちらの姿を見せるのは望ましくない方法だろう。 あいつの目を隠すより、基地の可動音、すなわち音を隠すのがもっと大変だ。
そのうえ、今現れた砂漠土竜は、個体の特徴なのか想定以上に早く、レキシントン一行が出て戦闘態勢を整えたり、基地が防御態勢に突入する前に基地に到達するものとみられる。
「あれ、あいつ消えたな。」
というラナの声と同時に、ハズレ!と基地が揺れた。
強力な魔物と固い金属がぶつかる衝撃波は想像以上に大きく、基地のすべての人たちが転がっていた。
「みんな、大丈夫かい?」
レキシントンがそれでも衝撃に耐えながら人々を捕まえるために東奔西走した。
遠くから砂漠土竜が壁を突き破って近づいてくるのが見えた。
砂のないところで寝転がずにこつこつと歩くのは砂漠土竜の習性だ。
その光景に対する頭脳の戸惑いが判断時間を食って、やがてその姿が肉眼で細かく見えると···
「うっ、全隊員戦闘準備!」
「基地をしっかり壊しそうですね!」
急いでレキシントンをはじめとする数人の軍人が銃や剣を取り出して戦闘を準備した。
その時。天井に穴が開いて何か巨大なものがまぶしい電撃に包まれて落ちると同時に砂漠土竜の頭が落ちた。 土竜の残りの身体が電撃に押されて剥がれ、燃やされ、すぐに黒い粉だけが残った。
「何…か?」
そこのみんなが事故を止め、今現れた巨大な男を見つめていた。
*
ある空間。
誰でも人間などが近づけない場所であることが分かるここの真ん中に、清浄な空に似た色の優雅で巨大な亭子がある。
その亭子に座っている2人の存在から神秘的な気運と生命体なら、しばらくも耐えられず全身が粉になって散らばる強力なエネルギーが噴き出した。
この亭子の木材一つ一つが人間が届かない領域のエネルギーを噴き出すが、その二つの存在が噴き出すことに比べれば、ただ太陽の前のロウソクに過ぎないように感じられた。
2人の強力な存在は向かい合って座り,真ん中に巨大なチェス盤を置いて馬を殺していた。
普通のチェスより駒もはるかに多く、板も大きく、さらにキングも一つではなかった。
人間なら、この駒をすべて制御することは、脳が破裂するまで転がしても不可能なほどだ。
彼らの間のチェスというのは、1ターンに1回の攻撃というルールさえないようだった。
事実上、人間のチェスとは全く違うゲームだった。
しかも駒がただ胴体頭突きだけで相手を制圧するのではなく、魔法を使って相手を制圧していた。 まるで…···駒に自我があるように。
「君は相変わらず駒を優しく扱っているね。 それでは私に勝てない。」
「完璧」という名前が似合う容貌を誇る、銀髪の美青年が隠すこともできない強力な覇気が込められた声を出すと、それに合わせて雷鳴が鳴り響いた。
半面、
「光で締めつけるのが、真の服従と勝利への近道だよ、友よ。」
それよりもう少し年輪が感じられる外見に、極めて白い肌と黄色と赤色が適切に混ざった髪の毛を長く垂らした美中年の声は極めて優しくて親しかった。
声から日差しが感じられる水準だった。
実際、チェス盤の駒の数は美中年のものである白の方がはるかに多かった。
すると、美青年は自分の駒に電撃を飛ばした。
駒は必死に魔法を使い始めた。
「将棋駒とは、こう扱うこと。」
「そういえば、お父様方の将棋駒、できあがったらしいです。」
確かに足音など聞こえなかったが、いつの間にか傾国のようなやや慎ましやかな女性がくらっと花の香りを漂わせながら美青年のそばに座っていた。
思わずこの女の言葉が正義であることを確信させるほど優しくて甘い声だった。
「まだだ。まだ、熟成してない。」
「そう、彼の焼き入れはまだ終わっていない。」
「私の子供たちが彼の刃を立てるだろう。」
「まったく、将棋駒のくせに、度を過ぎた恩を受けたんじゃないか」
何が面白いのか、二人の神聖な存在の笑い声が響いた。 暖かさと力強さがぶつかり、雷と爆発を作り出した。
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