極上のイケメン御曹司

「ご迷惑では?」

「帰る方向が一緒だし、先生がお嫌でなければ」

「全然全然っ!むしろ大助かりですっ!」

「フフッ、では、こちらは破棄処分でいいかな?」

「はいっ!お願いします!!」

「安田、これをシュレッダーに頼む」

「はい」


 財前は彩葉の手元から申請書を手に取り、管理部の安田に処分するよう指示を出した。

第二ターミナルと第三ターミナルにはASJの会社が入っていて、財前はここで毎日業務に追われている。

彩葉は財前に深々と頭を下げ、管理部の安田にも会釈した。


「有難うございますっ!宜しくお願いします!」

「荷物は?」

「院内にあります」

「では荷物を持って、一階の『C』通用口の所に」

「Cですね?分かりました!」


 財前は軽く会釈し、エレベーターとは反対方向へと向かって行った。


 もしかしたら特別に社員用の宿泊施設でも案内して貰えるかな?と淡い期待をしていた彩葉は、財前の思わぬ提案に『家に帰れる!』と飛び上がるほど嬉しくなった。


 ***


「お待たせしてすみませんっ」

「そんなに走らなくても良かったのに」


 財前は、はぁはぁと呼吸が乱しながら駆けて来た彩葉を目にし、くすっと笑った。

 初めて見る財前の柔らかい表情に、彩葉は驚いた。


 ターミナル内を巡回している財前を何度か目にした事がある。今日みたいに緊急で処置が必要な時などにも。けれど、常に険しい表情か澄ました顔しか見たことが無かった。

 院内のスタッフ達が、そのクールさがカッコいいと常々口にしているから、笑わない人だと完全に刷り込まれていたのだ。

 意外な一面を垣間見た彩葉は、間近で見る素の財前を凝視してしまう。

 仕事がオンモードの時はきっと責任という重圧を抱えているのだろうと。


「俺の顔に何か?」

「あ、いえ……。うちのスタッフが『極上のイケメン』だといつも言ってるもので、ついつい美顔に見惚れてました」


 あながち嘘ではない。

 普段は良く見てなかったから、イケメンなのか見る余裕がなかっただけ。

 こうして間近で見ると、相当なイケメンだという事が分かる。


「深夜に、それもこれから密室空間に二人きりになるのに、そんな事言うとどうなっても知りませんよ?」

「え?……あ、平気ですよ~。悪さ出来なくする急所、熟知してますから」


 彩葉は人差し指と中指を立て、その指先を財前の首筋に当てた。

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サイコちっくな本部長の偏愛事情 蓮条 @renjoh0502

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