急患の処置依頼

「本部長っ、第三の到着ロビー国内線乗り継ぎチェックインカウンター前で妊婦が破水し、医師の要請をしました」

「直ぐ行く、他のお客様にご迷惑にならないように即対応を」

「はいっ」


 第三ターミナルのマネージャーから電話を受け、財前は酒井と共に駆け足で現場へと向かう。

 一階のエントランスプラザにある(東京白星会医科大学)空港病院から医師と看護師が派遣された。


 ***


「ゆっくり鼻から深呼吸して下さいね~~大丈夫ですからね~」


 出産の為、里帰り帰国をした妊婦のバイタルを測定する医師 たまき 彩葉いろは 二十九歳。

 バイタル確認をしながら、優しい声音で破水した妊婦に声掛けする。

 第三ターミナルは国際線のターミナルという事もあり、騒ぎを聞きつけた外国人の利用客があっというまに周りを取り囲んだ。


 看護師の丸山まるやま 千波ちなみ 三十五歳は、床の上で仰臥位ぎょうがいい(仰向けで横たわっている状態)になっている妊婦のお腹部分に毛布を掛け、頭部や臀部でんぶ(お尻)の下にも大判のバスタオルを敷く。


「GCS、JCS共に異常なし。血圧は……」


 血圧や脈拍数、お腹の張りなどを調べメモをしていると、妊婦が差し出した母子手帳を確認した丸山がメモを取っている環医師の腕を軽く叩いた。


「先生、三十週で多胎児です」

「え?……赤ちゃん、双子なんですね?」

「……はい」

「丸山さん、大至急救急車の手配お願い」

「はいっ!」


 環は、妊婦が差し出した母子手帳で持病ないか、これまでの妊婦経過を確認する。

 血圧等は正常だが、多胎児であれば八カ月でも産気づくことも想定内。

 少量だが、既に破水してしまっている状況下では感染症の恐れが一番心配だ。


「少しチクっとしますよ?」


 すぐさま万が一の時ために、血管を確保するための点滴が施される。

 環が次々と処置を行っていると、


「ASJ(全日本スカイジェット航空の略)の財前です。状況は?」

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