第2話

 みさおは自殺だったらしい。

 マンションの屋上からとびおりて死んだんだって。

 あのいつも着ていた真っ黒のローブのまま、まっ逆さまに落ちていった。


(もしかしたらあの流れ星は、垂直落下するみさおだったのかもしれない)


 ……なわけあるか!


(なんで自殺したんだろ? なにか思い悩むことでもあったのかな?)




 みさおのお葬式が終わった一週間後、アイスクリームを食べていたら、みさおのお母さんから電話がかかってきた。


「かるはちゃん、みさおと仲よくしてくれてありがとうね」


「いえ……この度は御愁傷様でした」


「ううん……ほんとうにね。どうして自殺なんかしたのかしら……」


 しばらくお母さんはすすり泣いた……。そして、遺品を整理するから要るものがあればもらってね? といった。


(いらねー!)

「わかりました。では今度の土曜日にお伺いします」


「ごめんね……あの子のお友達といえるような子、かるはちゃんくらいしかしらなくて……」


「いえそんな……みさおは友達多かったですよ」

 がちゃん……

 通話は終わった。


(まぁ本当は皆、奇人変人なみさおのこと、避けていたけど……)


 みさおは自称賢者だった。

 賢者らしい功績は何一つあげられてないけれど。

 そんなみさおのことを皆は遠ざけた。

 そりゃそうだ……。思春期の子供たちにとって、異物と汚物は目に入れたくないもの。消毒対象だもの。


(小学校までは私は、みさおの助手だった。子供心に魔法というものに憧れがあったから、彼女にひかれていた)


 それで土曜日。


 なんだこの熱は……。地球溶けそう。シロクマが太平洋泳ぎ出す未来も近いこれ……。

 ともかく、私はみさおの家にむかった。

「かるはちゃん。よくきてくれたわね」

「おばさん、こんにちは」

 みさおの親に挨拶をして、庭のすみっこにある『研究室』にいく。


 まぁ研究室といっても、使われてない物置小屋なんだけどね……。

 せまーい小屋の中は湿っぽくて、薄暗い。

 よくわからないガラクタや紙束なんかが散らばっている。

 私が一歩の進むごとに、住みこみのネズミたちがキーキーと鳴く。


(そういえばこの『研究室』で小学校の自由研究をやったよね……)


 私の背が延びたのか、なんだか小さくかんじるな……。


 さて、なにか要るものはあるかな?

 お金とかは期待できないけれど……。

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