第6話 柊吹雪

 やっと二人は南都なんとにあるアベノ橋特区に到着した。


 南都とは旧大阪市を南北に二分割した大抗争、大阪二都抗争で出来てしまった大阪の行政区、大阪北都と大阪南都の南にあたる地域。

簡単に言えば旧大阪市を中央で北と南に切り分けた南の地域にあたる。


 特区とは、通常の行政制度とは、ことなる行政機関が設置され、独自の法律が適用される自治権を持つ地域。

簡単に言えば無法地帯。


 アベノ橋特区は、特別な霊気が満ちる陰陽師おんみょうじとして名高い安倍晴明あべのせいめい生誕地。その広大な土地を個人が買い上げて作られた特区。


 しかし、その広い土地は、ひどく背の高い防音壁でぐるっと囲われ『建設中』としか書かれていないものだった。その横にべったりとくっつくように、鰻の寝床うなぎのねどこの様な細長いビルが建っていた。


 一階は店鋪になっている。看板には『スナック・ゴン』と書いてある。扉には『準備中』と表示板が掛けてあった。


 「たのもおー!」その小さい体で、どうやれば出るのかと不思議に思うほどの大声を師匠は発っした。


 「は〜〜い」と鈴をころがす様な、女性の良い声で返事が返ってくる。「今、行きま〜す」


 ガチャ、扉を開いて出てきたのは、身長160cmほどの美しい女性だった。おそらく万有と年齢は近い。

 

 美しくつややかで光り輝く黒髪の長髪。顔も日本女性の理想形。体型もスラリと引き締まっている。まさしく、これが日本美人だと誰にでも胸を張って紹介できる。


 エプロン姿のこの女性が「こちらは引立万有さん。」「こちらは雪洞牡丹さんですね。」と言いながら一人づつにお辞儀をした。


 「私はひいらぎ 吹雪ふぶきと申します。マスターが事務所で待っております。残っている事務手続きが終わりしだい対応するとのことなので、店内でお待ちください。ご案内します。」

 

 招き入れるように、ドアを大きく開き、空いている片手を店内へ向けた。

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